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The Iliad(イリアス) cover

文学

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The Iliad(イリアス)

Homer; Emily Wilson (translator)

英語原題: The Iliad

トロイア戦争を歌うホメロスの叙事詩を、エミリー・ウィルソンが弱強五歩格の韻文で訳した完訳です。詩の成立、世界観、主題を論じる充実した序論のほか、訳者注記、地図、系図、注釈、人名用語集を収録しています。

前提知識: ギリシア語の知識は不要です。ギリシア神話に多少親しんでいると役立ちますが、序論と用語集が必要事項を補います。

難易度レベル
中級
学術レベル
学部
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01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Homer. (2023). The Iliad (E. Wilson, Trans.). W. W. Norton & Company.

章の要約

版と作品

エミリー・ウィルソンの『イリアス』は、ホメロスの叙事詩全24巻の英語韻文完訳で、ノートン社から2023年にハードカバー、2024年にペーパーバックで出版され、約850ページとされている。『オデュッセイア』(2017年)に続く、彼女の2作目のホメロス訳である。書評が述べるところでは、詩本体のほかに、序論、地図、家系図、用語集(人名集)、本文への注が収められている。この詩はトロイア戦争の全体ではない。戦争の後半に、ギリシア軍の総大将アガメムノンと最強の戦士アキレウスのあいだの争いで始まり、トロイア軍随一の戦士ヘクトルの葬儀で終わる。

第1巻:争い

疫病のためにアポロンの神官クリュセースの娘クリューセーイスを手放さざるをえなくなったアガメムノンは、アキレウスから捕虜ブリーセーイスを取り上げ、アキレウスは戦いから身を引く。母テティスはゼウスにトロイア側を助けるよう頼み、巻はオリュンポスの神々の不和の場面で終わる。

第2〜4巻:軍勢、挑戦、破られた誓い

ゼウスの送った偽りの夢に導かれて、アガメムノンは軍の意気を試し、軍勢は船へ駆け出す。そのあとにギリシア・トロイア両軍の長い軍勢表が続く。第3巻では、パリスが戦争に決着をつけるためメネラオスに一騎討ちを挑み、ヘレネーとプリアモスが城壁からギリシアの将たちを眺める。パリスが負けかけたところをアプロディテが救い出す。第4巻では、トロイア人パンダロスの放った矢が休戦を破り、戦闘が始まる。

第5〜7巻:ディオメデス、ヘクトルとアンドロマケー、一騎討ち

第5巻はディオメデスの武勲で、彼は神々にさえ傷を負わせる。第6巻には、グラウコスとディオメデスの対話、そしてヘクトルが妻アンドロマケーと幼い息子に別れを告げる場面がある。第7巻では、ヘクトルとアイアスが引き分けに終わるまで戦い、死者は焼かれ、ギリシア軍は船の周りに防壁を築く。

第8〜10巻:ゼウスの転換、使節団、夜襲

ゼウスは神々の介入を禁じ、トロイア側に有利に傾き始め、トロイア軍はギリシア軍を防壁の内側に追い込む。第9巻はアキレウスへの使節団で、使者は贈り物を差し出すが、アキレウスは拒む。第10巻は、オデュッセウスとディオメデスの夜の偵察行で、トロイアの斥候ドローンを捕らえて殺す。

第11〜15巻:船のかたわらの戦い

ギリシアの将が何人も負傷し、第12巻でトロイア軍が防壁を破り、第13巻ではポセイドンがギリシア軍を助ける。第14巻でヘーラーがゼウスを欺き、第15巻でゼウスが目覚め、トロイア側の優勢を取り戻させる。

第16〜17巻:パトロクロス

火が船に及ぶと、パトロクロスはアキレウスの武具をまとって戦場に出てトロイア軍を押し戻すが、エウポルボスとヘクトルに殺される。第17巻は、その遺体をめぐる争いである。

第18〜20巻:悲嘆、新しい武具、復帰

アキレウスは友の死を知る。テティスはヘパイストスから、盾を含む新しい武具を手に入れる。第19巻でアキレウスはアガメムノンと和解し、第20巻では神々が観戦に集まるなか、アキレウスが出陣して多くのトロイア人を討つ。

第21〜22巻:河とヘクトル

アキレウスは河スカマンドロスと戦い、神々同士も争うが、彼はトロイア軍を城内に追い込む。第22巻はヘクトルの死である。

第23〜24巻:葬礼と身代金

パトロクロスは葬競技とともに葬られる。第24巻でプリアモスがアキレウスの陣小屋を訪ねてヘクトルの遺体を請け出し、詩はヘクトルの葬儀で終わる。

主要概念

第1〜9巻

  • アキレウスの怒り:冒頭の数行で告げられる主題で、争いを動かし、のちに全体の筋を形づくる。
  • 名誉と贈り物:争いは、誰に戦利品が与えられるべきかをめぐって起こり、第9巻の使節団はそれに贈り物で応えるが、アキレウスは拒む。
  • 筋の中の神々:ゼウス、ヘーラー、アテナなどが公然と行動して肩入れするので、人間の出来事には神々の側の対応物がある。

第10〜24巻

  • 悲嘆と代理:パトロクロスがアキレウスの武具で戦い、その死がアキレウスの怒りの向きをアガメムノンからヘクトルへ変える。
  • 運命と死すべき定め:詩は命の短さ、アキレウス自身の命の短さも含めて、何度も立ち返る。
  • 身代金と嘆願:最終巻は、戦利品をめぐる争いを、父が息子の遺体を乞う嘆願に置き換える。

批判的分析

長所

  • 耳で聞くための規則的な行。 訳は脚韻のない弱強五歩格で、批評家は速くて明快だと評している。シャーロット・ヒギンズ(『ガーディアン』)は「血まみれの川のように速く流れる」と述べ、ローワン・ウィリアムズ(『ニュー・ステイツマン』)はこの韻律が生彩に乏しい箇所でも目立たず読者を引きつけると言い、ナタリー・ヘインズ(『ニューヨーク・タイムズ』)は声に出して読まれることを意図した訳だとしている。
  • 短い行。 『Kirkus Reviews』は、ウィルソンの行が他の訳者より短く、目に楽だと指摘している。
  • 初学者のための補助。 序論、地図、家系図、用語集は、初めて読む人が多くの名前を追うための道具になる。
  • 戦争の人間的な代償への注意。 ナオイズ・マク・スウィーニー(『ワシントン・ポスト』)は、ウィルソンが暴力の美化と退屈の両方を避け、詩の人間関係を浮かび上がらせていると書いている。

短所

  • 行ごとの対応ではない。 ウィルソンの『オデュッセイア』はギリシア語と同じ行数に収めたが、『イリアス』では、固定された名前や地名が多いため、彼女はヒギンズに語ったように、その目標を断念した。この訳の行がギリシア語の行番号と対応すると期待することはできない。
  • ところどころの文体上の不一致。 ヘインズは、語の調子が少し場違いに思える箇所があると指摘している。
  • 新しい訳。 本書は2023年に出たばかりで、古い訳に比べて授業での実績が少なく、公表されている評価の大半は最初の1年のものである。

コースにおける位置づけ

古典文学のコースで、『イリアス』は最初に読む叙事詩としてふさわしい。物語は伝統の中で最も古く、ウェルギリウスの『アエネーイス』も後半でこれを振り返る。多くの登場人物を共有し、トロイアという場面を前提とするE. V. リューの『オデュッセイア』より先に、そしてフィッツジェラルド訳の『アエネーイス』より先に読むこと。ウィルソンは『オデュッセイア』も訳しているので、両作品を同じ訳者で通したい読者はそちらを選べるが、このコースの書目にはリュー版が挙がっている。背景を知るには、ラザフォードの『Classical Literature: A Concise History』とアランの『Classical Literature: A Very Short Introduction』が短い概説で、レスキーの『A History of Greek Literature』はホメロスをめぐる学問上の問題をより詳しく扱っている。

本書の使い方

ギリシア語の知識は不要である。まず序論を読み、地図を見てから、詩を順に読む。時間が限られているなら、核となるのは第1、6、9、16、18、22、24巻で、順に争い、ヘクトルとアンドロマケー、使節団、パトロクロス、盾と新しい武具、ヘクトルの死、身代金である。第2巻の軍勢表と長い戦闘の連続は、初読では速く読んでもよい。

最初の数巻では、家系図と用語集を手元に置く。いくつかの箇所を声に出して読むと韻律が生きる。ゼミでは、第6巻の別れや第24巻の対面のような一場面を、ほかの訳と比べて、名前、形容辞、行の長さの選び方が効果をどう変えるかを見るとよい。