01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Virgil. (1990). The Aeneid (R. Fitzgerald, Trans.). Vintage.
章の要約
作品と版の概観
『アエネーイス』は、ウェルギリウスが未完のまま遺したラテン語叙事詩で、全12巻からなる。アウグストゥスの時代に晩年の10年ほどをかけて書かれ、詩人は前19年に没した。このヴィンテージ版ペーパーバックは、1983年にランダムハウスから出たロバート・フィッツジェラルドの韻文訳を再刊したもので、約460ページある。目次によれば、第3巻は63ページ、第5巻は123ページ、第7巻は193ページから始まり、後半のほうが前半より紙幅が大きい。訳者の「あとがき」(Postscript)は本文のあとに置かれている。詩は自然に二つに分かれる。第1〜6巻は海をさまよう旅人を追うため『オデュッセイア』に、第7〜12巻は戦争を描くため『イリアス』に、しばしばなぞらえられる。
第1〜2巻:嵐、カルタゴ、トロイア陥落
第1巻はユノーの怒りで始まる。嵐がトロイア人の船団を散らし、アエネーアースはアフリカの海岸に着く。そこでウェヌスが彼の前に現れ、彼はカルタゴの女王ディードーに迎えられる。第2巻でアエネーアースは、トロイアがどのように陥落したかをディードーに語る。木馬、シノンの裏切り、市の略奪、そして老父アンキーセースを背負い、息子アスカニウスを連れて逃れる場面。妻クレウーサは後ろではぐれてしまう。
第3巻:放浪
アエネーアースは、トロイア後の7年間の語りを続ける。船団は寄港地を次々に試み、神託を取り違え、ハルピュイアに遭い、ブトロトゥムでトロイアの生き残りと出会い、キュクロープスの地を通り過ぎ、最後にシチリアでアンキーセースが死ぬ。この版の目次では、この巻に「Sea Wanderings and Strange Meetings」(海のさすらいと不思議な出会い)という見出しがついている。
第4巻:ディードー
ディードーとアエネーアースの恋、使命を思い出させるメルクリウスの介入、そしてディードーの激しい悲嘆と火葬の薪の上での自死。詩の中でもっとも単独で読まれることの多い部分であり、公的な運命が私的な生にどんな犠牲を強いるかをいちばん明瞭に示している。
第5〜6巻:葬送競技と冥界
第5巻は、アエネーアースが亡き父のためにシチリアで催す競技、船の一部の炎上、舵取りパリヌールスの喪失を描く。第6巻では、クーマエの巫女の案内でアエネーアースが冥界をめぐり、ディードーの亡霊に会い、さらにアンキーセースに会う。アンキーセースは、将来のローマの英雄たちの系譜を彼に示す。巻の終わりで、アエネーアースは象牙の門から冥界を出る。これはよく知られた謎めいた細部である。
第7〜8巻:ラティウムとローマの地
第7巻では、ラティーヌス王がトロイア人を迎え、娘ラウィーニアを与えようとする。ユノーは復讐女神アレークトーを使って戦いをあおり、イタリア側の軍勢が列挙される。第8巻でアエネーアースは、のちのローマの地にあるエウァンドロスの集落を訪れる。そこでヘルクレスとカークスの物語を聞き、同盟と、エウァンドロスの息子パラースを得、母ウェヌスからローマ史の場面を刻んだ盾を含む武具を贈られる。
第9〜10巻:戦闘
第9巻には、友人同士のニーススとエウリュアルスの夜襲と、包囲されたトロイア人の陣営が描かれる。第10巻は神々の会議で始まり、そのあとパラースがトゥルヌスの手にかかって死に、アエネーアースは神々を軽んじる王メゼンティウスとその息子ラウススを討つ。
第11〜12巻:埋葬、カミラ、一騎討ち
第11巻は、パラースの埋葬、休戦と割れたラティウム側の会議、そして女戦士カミラの死を扱う。第12巻では、アエネーアースとトゥルヌスの一騎討ちで詩が終わる。敗れたトゥルヌスは慈悲を乞うが、アエネーアースは彼が死んだパラースの帯を身につけているのを見て、彼を殺す。詩はその瞬間に終わる。
主要概念
第1〜6巻
- ピエタース(敬虔):家族、神々、民への義務の感覚で、アエネーアースを特徴づける。彼は繰り返し「敬虔な」と呼ばれ、同時にそれは、使命を守るために彼が犠牲にするものでもある。
- 運命と神々の介入:ユピテルのローマ計画は決まっているが、ユノーは一貫してそれに抵抗し、神々は航海のあらゆる段階に手を出す。
- ローマの起源としての建国物語:第6巻でアンキーセースがローマの英雄たちを見せる場面は、神話を都市の歴史とアウグストゥスに結びつける。
第7〜12巻
- フロル(狂暴な怒り):後半で戦士たちを襲う憤怒。最後の数行ではアエネーアース自身も例外ではない。
- 同盟とローマの未来:エウァンドロスの集落と第8巻の盾は、イタリアでの戦争を後のローマの歴史に結びつける。
- 慈悲と復讐:結末の場面は、アエネーアースがトゥルヌスを許すかどうかにかかっており、死んだパラースの帯がそれを決める。
批判的分析
長所
- 読みやすい完訳。 出版社のページが引く書評(『ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス』『ボストン・グローブ』『ニュー・リパブリック』『ボストン・レビュー』)は、この訳を、読みやすく、かつウェルギリウスに忠実なものと評している。『ボストン・グローブ』は、わずかに古風な語彙とリズムへの耳の良さを特に挙げている。
- 訳者自身の説明。 巻末の「あとがき」により、詩人でもある訳者がどのような選択をしたかを学生が確かめられる。複数の訳を比べる授業に向いている。
- 全詩を一冊のペーパーバックで。 全12巻が一冊に収まるので、持ち歩き、書き込み、読み返しがしやすい。
短所
- やや古い訳。 訳は1983年のものである。その後、英語の韻文訳が複数出ており、ウェルギリウスの言葉遣いについての最新の研究を知りたい授業では補う必要がある。
- ラテン語原典と行番号が異なる。 フィッツジェラルドは自分の訳に独自の行番号を振っており、この訳を引用する際の第12巻は1290行を超えるが、ラテン語では952行である。ラテン語原典に基づく注釈書の引用とは、ページ上で合致しない。
- 詩は未完である。 ウェルギリウスは推敲を終える前に死んだため、唐突な終わりをめぐる議論が長く続いている。きれいな結末を期待する読者は、あらかじめそのことを知っておくべきである。
- 詩以外の支えについて。 この版が提供する助けの一つは訳者の「あとがき」である。ローマの政治、ギリシア側の下敷き、航海の地理について行ごとの注が必要な読者は、注釈書か入門的な歴史書を併用するとよい。
コースにおける位置づけ
古典文学のコースで、『アエネーイス』は、リストにある二つのホメロス叙事詩に答えるラテン語叙事詩である。『イリアス』はエミリー・ウィルソンの韻文訳、『オデュッセイア』はE. V. リューの改訂ペンギン訳による。ウェルギリウスは絶えず両者を響かせている(前半は旅人の航海、後半は戦争)ので、この詩は両方を読んだ後に読むのがよい。見取り図としては、ラザフォード『Classical Literature: A Concise History』とアラン『Classical Literature: A Very Short Introduction』の短い概説がウェルギリウスをギリシア・ローマの作家のなかに位置づけ、コンテ『Latin Literature: A History』とレスキー『A History of Greek Literature』は、さらに読み進めたい人のために時代順の叙述を与えてくれる。
本書の使い方
ラテン語の知識も叙事詩の予備知識も不要である。ただし第1巻と第2巻はトロイア戦争の概略を前提としているので、あらかじめ知っておくこと。落ち着いて読めば、1週間ほどで通読できる。時間が限られた授業では、第1、2、4、6、8、12巻が主な論点を担う。トロイアの陥落、ディードー、冥界とローマの盾、トゥルヌスの死である。そのうえで、航海、競技、戦争を扱う第3、5、9〜11巻を後から読めばよい。
読みながら、三点を追うとよい。アエネーアースが義務から動くのはどこで、怒りから動くのはどこか。ローマの未来の代償を払うのは誰か(ディードー、パラース、トゥルヌス、カミラ)。神々はどのように出来事を押し進めるか。「あとがき」は詩の前ではなく後で読み、第6巻と第12巻の最後の部分は二度読むこと。引用する際は、この訳のページと行番号がラテン語原典のものと異なることに注意する。
