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The Education Debate(教育論争:イングランドの教育政策) cover

教育学

教育学

The Education Debate(教育論争:イングランドの教育政策)

Stephen J. Ball

英語原題: The Education Debate

社会学者 Stephen Ball によるイングランドの教育政策の批判的入門書である。政策分析の主要概念を説明し、歴代政府が学校教育をどのように作り変えてきたかをたどり、イングランドを市場化、新しいガバナンスの形態、教育における企業や慈善団体の役割の拡大といった世界的な潮流の実験場として捉えている。

前提知識: 教育政策の予備知識は不要だが、社会階級などの基本的な社会学の概念になじみがあると役立つ。

難易度レベル
中級
学術レベル
学部
education policysociology of educationmarketisationsocial classengland教科書

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Ball, S. J. (2021). The Education Debate (4th ed.). Policy Press (Policy and Politics in the Twenty-First Century).

章の要約

第4版は約270ページのコンパクトな本で、序文、序論、5つの章からなり、その後に注、2つの参考文献リスト(書籍・論文のリストと、報告書・演説・文書のリスト)、索引が続く。巻頭には略語一覧もある。出版社は本書を、イングランド、より広くは英国を、グローバルな教育政策の「社会的実験室」として扱う本と説明している。まず主要概念を示し、そのうえで、グローバルな政策の移動、政策の担い手としてのエデュ・ビジネスと慈善活動、市場化、拡大する成績格差、貧困と緊縮財政、新しい統治の形態、そして COVID-19 が学校と政策に与えた影響といった展開を検討する。

序論:教育大論争(1976–2021年)

序論(1–14ページ)は、1976年から刊行年までの期間で本書の枠組みを示す。第3版も同じ枠組みを用いていたが、終点は2016年だった。この題は、本書が1976年以降の政策を、個別の改革の連続ではなく、一つの続いている公的な論争として扱っていることを示している。

第1章:主要概念:教育政策、グローバル化、教育改革

この章(15–62ページ)は、以後の章で使う分析の語彙を提供する。教育政策とは何を意味するのか、グローバル化が国の政策にどう関わるのか、教育改革をどう理解するのかである。第3版ではこの章の題は教育政策を「経済的必要性」と結びつけていたが、第4版ではその位置にグローバル化が置かれ、出版社がグローバルな政策の移動を強調していることと呼応している。

第2章:階級、総合制学校、連続性:イングランド教育政策小史

最も長い章で、約50ページ(63–114ページ)の歴史である。題は3つの筋を示している。イングランドの学校教育における社会階級の位置、総合制学校(コンプリヘンシブ・スクール)、そして相次ぐ改革の下で持続する連続性である。続く章で論じられるより最近の政策を読むための歴史的背景を与える。

第3章:政策テクノロジーと英国政府の公共サービス改革へのアプローチ

この章(115–160ページ)は、教育改革を、公共サービス改革に対する政府のより広いアプローチの一部として扱い、「政策テクノロジー」、すなわち改革を実行に移す手段という考え方を通して分析する。

第4章:政策、不平等、優位

この章(161–208ページ)は、教育政策によって誰が得をし、誰が損をするのかに向かう。第3版では「不公正(inequity)」とされていた題が、不平等と優位を中心に据えている。

第5章:教育政策の社会学:過去、現在、未来

短い結論の章(209–220ページ)で、一歩引いて、教育政策を社会学的にどう研究できるか、政策がどこへ向かいうるかを考察する。

主要概念

序論と第1–2章:概念と歴史

  • 教育政策:研究の対象。第1章がその意味を示したうえで、本書全体で適用される。
  • グローバル化:国際的な考え方や圧力が国内の教育改革を形づくる過程。
  • 政策の移動:政策の考え方やモデルが国から国へ移っていくこと。出版社が挙げるテーマの一つ。
  • 階級と総合制学校:第2章がたどるイングランド教育政策の歴史的な軸。

第3–5章:改革、不平等、分析

  • 政策テクノロジー:政府が学校を含む公共サービスを改革する際の手段。
  • 市場化:教育への市場の形態の導入。出版社が本書のテーマの一つに挙げている。
  • エデュ・ビジネスと慈善活動:政策の参加者として行動する民間企業と慈善財団。
  • 不平等と優位:政策が社会集団の間に利益を不均等に配分するあり方。
  • 教育政策の社会学:政策を社会的・政治的な過程として研究すること。第5章の主題。

批判的分析

長所

  • 第一線の政策社会学者による著作。 著者紹介によれば、Ball はユニバーシティ・カレッジ・ロンドン教育研究所の教育社会学の教授で、英国学士院フェローであり、Journal of Education Policy の共同創刊者・編集長である。研究の中心は政策分析と、教育と社会階級の関係であり、これが本書の2本の軸となっている。
  • 概念、歴史、現在の政策を一冊で。 構成は概念の章から歴史の章へ、さらに改革と不平等の分析へと進むため、読者は道具を手にしてからそれを適用することになる。
  • 新しい時期に向けた改訂。 第4版は枠組みを2021年まで延ばし、概念の章の重点を経済的必要性からグローバル化へと移し、出版社によれば、エデュ・ビジネス、慈善活動、緊縮財政、COVID-19 についての記述を加えている。
  • 文献が充実している。 学術文献と、公式の報告書・演説・文書とで参考文献リストが分かれているため、研究文献だけでなく一次的な政策文書への手引きにもなる。

短所

  • イングランド中心。 グローバルな枠組みにもかかわらず、第2章の歴史ははっきりとイングランドのものであり、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの読者、ましてや他国の読者は、自国の制度について別の資料を必要とする。
  • 短く密度が高い。 本文約220ページに5章という構成のため、多くの政策が簡潔に扱われ、結論の章はわずか12ページである。
  • 中立的な概説ではなく批判的な視点。 階級、不平等、市場化を軸とする本書の枠組みは、著者の社会学的立場を反映している。本書が分析する改革を擁護する議論を知りたい読者は、政府や推進派の資料もあわせて読むべきである。
  • 時期に縛られる。 イングランドの教育政策は変化が速い。版の間で終点が2016年から2021年に移ったことが示すように、2021年以降の展開は扱われていない。

コースにおける位置づけ

教育の政策と社会学を扱うこのコースで、Ball の本はイングランドの事例研究にあたる。Diane Reay の Miseducation は、イングランドの学校教育が労働者階級の子どもをどう扱うかを、面接と政策史をもとに描いた短く読みやすい本で、階級と不平等を政策の側から扱う Ball の第2章と第4章の前に読むのに適している。Bourdieu と Passeron の Reproduction in Education, Society and Culture は、学校教育が階級関係を再生産する仕組みについての古典的な理論を与える難解な本で、Ball によって政策の文脈が具体的になってから読むのがよい。

Rizvi と Lingard の Globalizing Education Policy は、グローバルな力が国の政策をどう形づくるかを分析するための学術的な枠組みであり、Ball の第1章が導入するグローバル化のテーマを詳しく展開する。Diane Ravitch の The Death and Life of the Great American School System は、米国におけるテストに基づく説明責任と学校選択への批判で、イングランドの改革と比較するのに役立つ。Ballantine、Stuber、Everitt の The Sociology of Education は、政策を学校教育の社会学全体のなかに位置づける幅広い概説教科書である。

本書の使い方

本書は、教育学、社会学、社会政策を学ぶ学部生、イングランドの学校の政策環境を理解したい教員志望者、そしてイングランドの教育をめぐる議論を追うすべての人に向いている。政策研究の予備知識は不要だが、社会階級のような社会学の基本的な考え方を知っていると読みやすい。

実践的な読書計画:

  • まず、全体で使われる期間の枠組みと概念を示す序論と第1章を読む。略語一覧を手元に置いておくこと。
  • 次に第2章で歴史的背景を読む。読みながら、出てくる主な法律と改革の簡単な年表を作るとよい。
  • 続いて第3章と第4章、分析の中核である。政府が公共サービスをどう改革するか、政策がどのように不平等と優位を生み出すか。第4章は Reay の Miseducation と組み合わせると効果的である。
  • 最後に第5章を読み、政策の行方についてのレポートやゼミの問いを立てる枠組みとして使う。

2つ目の参考文献リストを使って、元の報告書や演説にあたること。Ball の分析と並べて一次文書を一つ読むのが、政策分析を練習するよい方法である。本書は2021年で終わっているので、その後何が変わったかを確かめ、Ball の概念がそれをなお説明できるかを問うとよい。