01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Carlin, W., & Soskice, D. (2024). Macroeconomics: Institutions, Instability, and Inequality (2nd ed.). Oxford University Press.
章の要約
第2版は大部の本で、序論、六つの部に分かれた18章、参考文献、索引から成る。ページ数はGoogle Booksでは982ページ、出版社の掲載では1,024ページとされている。各部の長さは大きく異なる。第2部、第3部、第5部はそれぞれ約120~160ページ、開放経済の第4部は約215ページ、第1部は約190ページで、第6部は約70ページの1章のみである。オックスフォード大学出版局は、全体の組織原理を、需要側、供給側、政策担当者の3本の式から成るモデルと説明し、本書はそれを金融システム、開放経済、不平等へと拡張している。初版の副題は Institutions, Instability, and the Financial System であったが、新しい副題はその位置に不平等を置いている。出版社によれば不平等はモデル化と応用の全体に組み込まれており、金融システムは独立した一つの部を保っている。
序論
第1部の前にある、約10ページの短い導入部分。
第1部 第1~4章:需要側;供給側;3本の式のモデルとマクロ経済政策;期待と金融政策
第1部は4章で中核的な枠組みを組み立てる。まず需要側と供給側、次にそれらを政策担当者と合わせた3本の式のモデルが来る。第4章は金融政策に期待を加える。
第2部 第5~7章:貨幣、銀行、マクロ経済;金融政策;財政政策
貨幣、銀行、二つの政策手段を扱う三つの章。金融政策の扱いは包括的で、潤沢な準備の制度(ample reserves regime)を含むと説明されており、財政の章は財政政策と債務動学を扱う。
第3部 第8~10章:金融部門の不安定性の源泉;金融部門のリスクと世界金融危機――モデルの応用;金融安定化政策
金融不安定性の部は、モデルを銀行業と2008~2009年の危機へと持ち込む。各章は不安定性の源泉から、世界金融危機へのモデルの応用、そして金融安定化政策へと進む。出版社は、金融循環と景気循環の統合、および大不況(Great Recession)を背景としたヒステリシスの検討を強調している。
第4部 第11~14章:開放経済における3本の式のモデル;開放経済――需要側と供給側;開放経済の拡張I――石油ショック、不均衡、相互依存;開放経済の拡張II――固定為替レートとユーロ圏
4章で中核モデルを、同じ土台の上に、変動為替レートと固定為替レートの下の開放経済へ拡張する。拡張の内容は、石油ショック、対外不均衡、相互依存、固定為替レート、ユーロ圏であり、出版社は応用の例に気候ショックとユーロ圏危機も加えている。
第5部 第15~17章:供給側の制度、政策、パフォーマンス;成長とイノベーション;ICT革命、生産性パズル、不均等な成長の政治経済学
第5部は長期に目を向ける。供給側の制度、成長とイノベーション、そして情報通信技術が生産性、仕事の将来、不平等に及ぼす影響である。出版社は、外生的成長モデルと内生的成長モデルを統一的に扱い、資本の収穫逓減を相殺するさまざまなメカニズムを軸に据えていると説明している。
第6部 第18章:異質な主体のマクロ経済学――起源、進展、課題
最後の章は、異質な主体を含む新ケインジアン(HANK)モデルを含む、現代の定量的マクロ経済学を紹介し、これらの手法の利点と限界の両方に目を向ける。
主要概念
第1~3部:中核モデル、政策、金融
- 3本の式のモデル:需要側、供給側、政策担当者を組み合わせ、景気循環と安定化政策を分析する。
- 不完備契約:出版社によれば、労働市場と信用市場の特徴で、非自発的失業と信用制約の土台となる。
- 潤沢な準備の制度:金融政策の章で扱われる金融政策の枠組み。
- 金融循環と景気循環:両者の統合と、2008~2009年以降の金融安定化政策。
第4~6部:開放経済、成長、不平等
- 開放経済における3本の式のモデル:変動為替レートと固定為替レートの下の中核モデルで、ユーロ圏が応用例となる。
- 外生的成長と内生的成長:資本の収穫逓減を相殺するメカニズムを通じて、一緒に扱われる。
- ICT革命と生産性パズル:技術変化と、それが仕事と不平等に及ぼす影響。
- HANKモデル:最終章で扱う異質な主体のマクロ経済学。
批判的分析
長所
- 一つのモデルが全編を貫く。 同じ3本の式の枠組みが、閉鎖経済、金融、開放経済、ユーロ圏に繰り返し現れるので、学生は別々のモデルをいくつも学ぶのではなく、一つの方法を再利用することになる。
- 不平等と金融が中核の内側にある。 出版社が引用する評者たちはこの点を強調する。リーラ・デイヴィス(Leila Davis、マサチューセッツ大学ボストン校)は、不平等が中核モデルに織り込まれ、金融が同じ枠組みに組み込まれていて、拡張として扱われていないと指摘する。ベンジャミン・モル(Benjamin Moll)は、異質な主体のマクロ経済学とHANKモデルの成果を統合した最初の教科書だと呼んでいる。
- 最前線の研究を学部水準で。 オリヴィエ・ブランシャール(Olivier Blanchard)は、本書が最前線の研究を学部水準にもたらすと述べ、モーリス・オブストフェルド(Maurice Obstfeld)は上級の学部生にとって親しみやすいと評し、エレーヌ・レ(Hélène Rey)はそのデータと歴史的事例を称賛している。この三つの評言はいずれも出版社が引用したものである。
- 練習とデジタルツール。 各章の終わりには Checklist questions と Problems があり、ウェブ付録が第1、4、7、18章を補足し、電子書籍ではマクロ経済シミュレーター(Macroeconomic Simulator)とアニメーション付きの分析図が使える。
短所
- 非常に長い。 本文は11ページから924ページまでで、18章の平均は1章あたり約50ページである。一学期では扱いきれず、授業は部分を選ばなければならない。
- 難度の高い最終章。 第6部のHANKの内容は、研究者が現在使っている道具に学生を触れさせるものと説明されている。学部のマクロ経済学の縁にあり、任意の読み物として扱うのがよい。
- 一部の資料はオンライン。 ウェブ付録やシミュレーターなどの補助資料は、印刷された本文の外にある。
コースにおける位置づけ
中級マクロ経済学の書目の中で、本書は、政策志向の単一のモデルを軸に組み立てられ、金融と不平等へ拡張されたものである。マンキュー(Mankiw)の Macroeconomics は、国民所得、成長、失業、インフレーション、金融政策、経済変動についての基礎的な教科書である。クルーグマンとウェルズ(Krugman and Wells)の Macroeconomics と CORE の The Economy 2.0: Macroeconomics は入門書で、前者は物語で説明することに長け、後者はデータと歴史的な出来事から出発する。どちらもカーリンとソスキスの前に読める。ウェンディ・カーリン(Wendy Carlin)は CORE Econ プロジェクトを主宰しており、出版社が引用する評者の一人は本書が CORE Econ とつながっていると述べているので、CORE の入門書の次に自然に読める。
ローマー(Romer)の Advanced Macroeconomics とリュングクヴィストとサージェント(Ljungqvist and Sargent)の Recursive Macroeconomic Theory は、大学院レベルへの続きである。これらは3本の式のアプローチをはるかに超える形式的で動学的なモデルを提示しており、カーリンとソスキスの異質な主体についての最終章は、そこへの自然な橋渡しとなる。
本書の使い方
本書は、マクロ経済学の入門を終え、代数と図表に慣れた学部生向けで、最前線の話題は最後に置かれている。
一学期の授業での実用的な読み方としては、まず第1部を全部読む。3本の式のモデルが他のあらゆる箇所で使われるからである。次に第5~7章(貨幣と政策)と、2008年以降の金融の内容を扱う第3部を読む。第4部で開放経済が加わり、第15~16章が長期の成長の面を補う。第17章と第18章は、最初の授業では任意の発展である。各節のあとに Checklist questions で理解を確かめ、Problems で応用を練習し、授業でアクセスが提供されるならマクロ経済シミュレーターを使うとよい。金融危機を扱う授業では、第2部と第3部を、ユーロ圏についての開放経済の拡張の章と組み合わせて読む。
