01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Mankiw, N. G. (2027). Macroeconomics (12th ed.). Worth Publishers / Macmillan Learning.
章の要約
第12版は22章とエピローグからなり、時間軸に沿って五つの部に分かれる。長期、超長期、短期、そして理論と政策の発展的話題である。第11版と比べると、国民所得の内容は2章に、貨幣制度も2章に分かれたため、第2章以降の章番号は以前の版と異なる。
第I部、第1–2章:マクロ経済学の科学/マクロ経済学のデータ
導入では、マクロ経済学が何を扱うか、経済学者がどのようにモデルを作るかを述べ、続いて経済を描写するためのデータを扱う。この2章が全体で使う語彙を与える。
第II部、第3–8章:国民所得:その稼ぎ方/国民所得:その使い方/貨幣制度への最初の視点/インフレーション:原因、影響、社会的費用/開放経済/失業と労働市場
古典派の長期の部。前の版では国民所得が1章だったが、第12版では所得がどのように稼がれるかと、どのように使われるかを分けている。貨幣は第5章で早めに登場し、その後にインフレ、開放経済、失業が続く。出版社によれば、自然失業率を説明するための労働力の動学モデルが改善されている。
第III部、第9–11章:成長の源泉としての資本蓄積/人口増加と技術進歩/成長の実証分析と政策
成長理論の部で、出版社は超長期の経済と説明している。資本蓄積から人口増加・技術進歩へと進み、実証的証拠と政策で終わる。
第IV部、第12–16章:経済変動入門/総需要I:IS–LMモデルの構築/総需要II:IS–LMモデルの応用/開放経済再論:マンデル=フレミング・モデルと為替レート制度/総供給とインフレ・失業の短期的トレードオフ
短期の景気循環理論。経済変動の概観から出発し、IS–LMモデルを2章で扱い、マンデル=フレミング・モデルで開放経済に拡張し、最後に総供給とインフレ・失業のトレードオフを論じる。
第V部、第17–22章とエピローグ:経済変動の動学モデル/安定化政策をめぐる別の見方/政府債務と財政赤字/銀行と金融政策/金融システム:機会と危険/消費と投資のミクロ的基礎/私たちが知っていること、知らないこと
最終部は、経済変動の動学モデル、安定化政策と財政赤字をめぐる議論、銀行と金融政策の章での貨幣制度の二度目の本格的な扱い、金融システム、そして消費と投資の行動的基礎をまとめる。エピローグ「私たちが知っていること、知らないこと」が本書を締めくくる。
主要概念
第I–II部:データと長期
- 国民所得:所得として稼がれる産出(第3章)と、支出される産出(第4章)。
- 貨幣制度とインフレ:第5章での貨幣への最初の視点と、第6章でのインフレの原因と社会的費用。
- 自然失業率:失業率が落ち着く水準で、第8章で労働力の動学を通じて説明される。
第III部:成長
- 資本蓄積:貯蓄と投資が労働者一人当たりの産出をどう高めるか。
- 技術進歩と人口増加:第10章で扱う長期成長の他の源泉。
第IV部:短期の変動
- IS–LMモデル:総需要の分析枠組みで、第13章で構築し第14章で応用する。
- マンデル=フレミング・モデル:開放経済版で、為替レート制度の選択も扱う。
- 総供給と短期のトレードオフ:第16章で扱うインフレと失業の関係。
第V部:政策と基礎
- 経済変動の動学モデル:産出とインフレが時間とともにどう動くかのモデル(第17章)。
- 銀行と金融政策、金融システム:銀行、中央銀行、金融市場が経済をどう形づくるか(第20–21章)。
- ミクロ的基礎:消費と投資の背後にある家計と企業の行動(第22章)。
批判的分析
長所
- 時間軸による構成。 各部が異なる問いに答える。長期の産出は何で決まるか、成長は何に駆動されるか、短期の変動は何が起こすか。どのモデルがどの問題に対応するかが見える。
- 貨幣と金融の充実した扱い。 貨幣制度は前半で最初に触れられ、後に銀行と金融政策の章で深められ、さらに金融システムとその危険の章が続くため、貨幣が1章に閉じ込められない。
- 明快でモジュール的な構造。 章題は内容を示し、部にまとめられているので、動学モデルやミクロ的基礎などのまとまりを省いたり並べ替えたりしても主線は損なわれない。
- 出版社が強調する明快さ。 Macmillan Learningは、本書を中級マクロ経済学コースの主要教科書とし、複雑な概念を際立った明快さで説明すると紹介している。これは出版社自身の記述であり、独立した評価ではない。
短所
- 版の表記。 出版社のページは「Macroeconomics Digital Update」と題し、著作権年を2027年としているが、図書館の記録には第12版を2025年とするものもある。章番号も第11版と異なるため、授業の文献表が指す版に照らして確認する必要がある。
- 基礎が最後に来る。 需要の二つの構成要素である消費と投資は、それらが関わる短期モデルの後、最終章で扱われる。
- 一冊で多くの主題。 22章で成長、変動、政策、金融を概観するため、研究を目指す学生には大学院レベルの教科書が別に必要になる。
コースにおける位置づけ
マンキューのMacroeconomicsは、長期、成長、短期、そして政策という、中級コースの標準的な順序をとる。Krugman and WellsのMacroeconomicsは物語と実際の出来事で考え方を説明する入門レベルの教科書であり、COREのThe Economy 2.0: Macroeconomicsは抽象的なモデルではなくデータと歴史的事例から出発する。マンキューの前に背景を補いたい学生は、どちらかを使うとよい。Carlin and SoskiceのMacroeconomics: Institutions, Instability, and Inequalityは産出・インフレ・中央銀行のルールを扱う三方程式モデルを軸に、金融、制度、不平等へ広げており、同じレベルの二冊目としてよい組み合わせになる。
RomerのAdvanced Macroeconomicsは大学院1年次への続編であり、Ljungqvist and SargentのRecursive Macroeconomic Theoryは現代の動学マクロ経済学の再帰的手法を教える。どちらも中級マクロ経済学を前提とする。
本書の使い方
対象は、原理のコースを終え、基本的な代数とグラフに慣れた学部生である。第II部の長期モデルが成長や短期の各章の基礎になるため、順番に読むのが前提である。
進め方の例:まず第I部で語彙とデータを押さえ、次に第II部で貨幣と開放経済を含む長期モデルを学ぶ。第III部は成長理論を加えるもので、短期を中心とするコースでは短縮できる。第IV部では経済変動入門を道しるべとして、IS–LMの2章を丁寧に読み、続いて開放経済と総供給の章に進む。第V部は選択的に使う。第19章と第21章は政策や金融を扱うコース向き、第17章は動学モデルを求めるコース向き、第22章はより高度な学習に進む学生向きである。各モデルは自分で問題を解いて練習し、文献表の章番号は本版と照合する。
