01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Romer, D. (2019). Advanced Macroeconomics (5th ed.). McGraw-Hill Education.
章の要約
第5版は13章からなる。出版社は、本書を大学院のマクロ経済学の標準的な教科書であり出発点と位置づけ、この分野の中心的な問いに関する主要な理論を形式モデルで示し、理論を適用し検証する実証研究の例で補っていると説明する。また、この版は新しいテーマと研究を加え、不要な内容を除くよう大幅に改訂されたという。章は四つのまとまりとして読める。成長(第1〜4章)、短期の変動(第5〜7章)、家計・企業の行動と金融市場(第8〜10章)、失業と政策(第11〜13章)である。
第1〜2章:ソローの成長モデル、無限期間モデルと世代重複モデル
本書はソローの成長モデルから始まる。成長を扱う章の出発点である。第2章は無限期間モデルと世代重複モデルに進む。
第3〜4章:内生的成長、国ごとの所得格差
第3章は、長期の成長をモデルの内部で説明する内生的成長理論を扱う。第4章は、なぜ国によって所得が異なるのかという問いに向かう。
第5〜7章:実物的景気循環理論、名目の硬直性、変動の動学的確率的一般均衡モデル
第5章は、実物的なショックで変動を説明する実物的景気循環理論を示す。第6章は、価格が伸縮的であるという前提からの逸脱である名目の硬直性を導入する。これは短期のマクロ経済学の多くが拠って立つものである。第7章は変動の動学的確率的一般均衡モデルを示す。
第8〜9章:消費、投資
この二つの章は家計の消費と企業の投資を、それぞれ部分均衡で研究する。家計は資産収益を所与として所得を消費と貯蓄に配分し(第8章)、企業は将来の利潤の評価を所与として投資量を決める(第9章)。
第10章:金融市場と金融危機
第10章は、貯蓄と投資を金融市場で結びつける。第10.1節は、完全に機能する金融市場の一般均衡モデルを示す。第10.2〜10.3節はエージェンシーコストと金融アクセラレータを展開し、キャッシュフローと投資に関する実証的応用を添える。第10.4〜10.5節は価格の誤り(ミスプライシング)と過剰変動、およびそれに関する証拠を扱う。第10.6〜10.8節は金融危機を扱い、自己実現的な取り付け騒ぎのダイアモンド=ディビッグモデル、伝染、危機の影響に関するミクロの証拠を述べる。章は演習問題で終わる。金融市場の社会的価値というより広い問題には、明示的に立ち入らない。
第11〜13章:失業、金融政策、財政赤字と財政政策
第11章は失業を扱う。第12章は金融政策を扱い、第13章は財政赤字と財政政策で本書を閉じる。
主要概念
第1〜4章:成長
- ソローモデル:貯蓄と技術が外生の新古典派成長モデル。
- 世代重複:寿命が有限の家計をもつ動学モデル。
- 内生的成長:成長がモデル内部の意思決定から生じる理論。
第5〜7章:変動
- 実物的景気循環:価格が伸縮的な経済で、実物的なショックが引き起こす変動。
- 名目の硬直性:価格や賃金の粘着性により、名目の変化が実質的な影響をもつこと。
- DSGEモデル:変動の動学的確率的一般均衡モデル。
第8〜10章:消費、投資、金融
- 金融アクセラレータ:経済が弱いときに、エージェンシーコストがショックの影響をどう増幅するか。
- 過剰変動:資産価格がファンダメンタルズの正当化する以上に動くこと。
- ダイアモンド=ディビッグモデル:支払能力のある金融機関に対する自己実現的な取り付け。
第11〜13章:失業と政策
- 失業、金融政策、財政政策:最後の三章の主題。
批判的分析
長所
- 理論と実証的応用の組み合わせ。 出版社は形式モデルと実証研究の組み合わせを強調しており、見本の章もその型を示す。三つの節が「実証的応用」と題され、それぞれモデルの後に置かれている。
- 明快な道しるべ。 見本の章は冒頭で第8章・第9章との関係を述べ、マクロ経済学にとって重要な金融市場の四つの論点を挙げ、各論点を扱う節を示す。
- 新しさ。 出版社は、この版が新しいテーマと研究のために大幅に改訂されたと述べており、金融危機の章は2008年のリーマン・ブラザーズの破綻とその後を論じる。
- 演習と正誤表。 各章は演習問題で終わり、著者は第5版の正誤表を維持している(最新は2021年4月付)。
短所
- 前提の要求が高い。 本書は大学院の出発点となる教科書で、見本の章からわかるようにモデルは形式的であるため、読者には確かな数学力が必要である。
- 範囲は選択的。 13章で成長、変動、金融、失業、政策を扱い、金融市場の章は金融市場の社会的価値のような問いをあえて脇に置いている。他の主題は別の書籍に頼る必要がある。
- 刷による既知の誤り。 著者の正誤表は、本文や式の誤りを訂正している(たとえば105、358、492、494、518、689、690ページ)。手元の刷を確認する必要がある。
コースにおける位置づけ
このコースの他の書籍の多くは、より短いか、より初歩的である。KrugmanとWells、およびCOREチームの The Economy 2.0 は、物語とデータから理解を築く入門書である。Mankiwの Macroeconomics は国民所得、成長、失業、インフレ、変動を扱う基礎的な学部向けの教科書で、CarlinとSoskiceの Macroeconomics は、産出、インフレ、政策ルールの3本の式のモデルを軸に学部レベルの議論を組み立てる。
Romerは、これらの上にある大学院の段階で、同じ領域を形式モデルで扱う。LjungqvistとSargentの Recursive Macroeconomic Theory はこの一覧にあるもう一冊の大学院向けの教科書で、再帰的方法と動的計画法に集中しており、動学モデルの技術的な面の相棒になる。通常の順序は、学部向けの教科書、Romer、LjungqvistとSargentである。
本書の使い方
本書は、最新の研究を読めるようになりたい経済学の博士課程1年生と修士課程の上級生を対象とする。想定される背景は、中級マクロ経済学、多変数の微積分、基礎的な微分方程式である。
実践的な進め方は次のとおり。
- 中核: 第1〜2章(成長と動学モデル)、第5〜7章(景気循環と名目の硬直性)、第8〜9章(消費と投資)。
- 次に: 第3〜4章(成長の理論と実証)、第10章(金融と危機)、第11〜13章(失業、金融政策、財政政策)。
各章末の演習問題を解き、実証的応用を理論がどう検証されるかの手本として読み、手元の刷については著者の正誤表で確認する。
