01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Berk, J., & DeMarzo, P. (2023). Corporate Finance (6th ed.). Pearson.
章の要約
出版社の目次は10の部と31の章題を挙げている。ピアソンは本書を「一物一価の法則」に基づく評価の枠組みとして説明しており、各部の順序も明快な流れをたどる。企業と市場、時間と金利、プロジェクトと企業の評価、リスク、資金調達、発展的な評価、オプション、長期・短期の資金調達、そして特別なテーマである。
第1部 序論:企業と金融市場/財務諸表分析入門/財務意思決定と一物一価の法則
冒頭の部では、企業とその市場、財務諸表分析を扱い、続いて本書全体で用いる評価の原則を示す。一物一価の法則が第3章に置かれているので、計算に入る前にその土台が整えられる。
第2部 時間、貨幣、金利:貨幣の時間価値/金利/債券の評価
3つの章で、割引と複利、金利の表示と決まり方、債券の評価を扱う。この部は、後の評価の章が前提とする道具を提供する。
第3部 プロジェクトと企業の評価:投資決定ルール/資本予算の基礎/株式の評価
投資を選ぶためのルールから、資本予算におけるプロジェクトのキャッシュフローの組み立てへ進み、株式の評価に至る。
第4部 リスクとリターン:資本市場とリスクの価格付け/最適ポートフォリオ選択と資本資産価格モデル/資本コストの推定/投資家行動と資本市場の効率性
4つの章で、市場がリスクをどう価格付けするか、ポートフォリオ選択と CAPM、資本コストの推定、投資家行動と市場の効率性の問題を扱う。
第5部 資本構成:完全市場における資本構成/負債と税/財務的困難、経営者のインセンティブ、情報/配当政策
資本構成の流れは完全市場から始まり、税、困難のコスト、インセンティブ、情報を加え、その後に配当政策へ移る。
第6部 発展的な評価:レバレッジを考慮した資本予算と評価/評価と財務モデリング:ケーススタディ
2つの章で、レバレッジを資本予算に再び取り込み、評価と財務モデリングのケーススタディで締めくくる。
第7部 オプション:金融オプション/オプションの評価/リアル・オプション
この部では、金融オプション、その評価、リアル・オプションを導入する。
第8部 長期資金調達:株式資本の調達/負債による資金調達/リース
第8部は、企業が株式、負債、リースによって長期資金を得る方法に移る。
第9部 短期資金調達:運転資本管理/短期財務計画
2つの章で、運転資本と短期の計画を扱う。
第10部 特別なテーマ:M&A/コーポレート・ガバナンス/リスク管理/国際コーポレート・ファイナンス
最終部は、M&A、コーポレート・ガバナンス、リスク管理、国際コーポレート・ファイナンスをまとめている。
主要概念
第1〜3部:評価の基礎
- 一物一価の法則:出版社の説明と第3章の題名で示されている評価の原則。
- 貨幣の時間価値と金利:第2部の最初の2章の主題。
- 投資決定ルールと資本予算:キャッシュフローに基づくプロジェクトの選択。
第4〜6部:リスクと資金調達の選択
- 資本資産価格モデルと資本コスト:リスクがどう価格付けされ、割引率に変換されるか。
- 完全市場における資本構成:税、困難、情報を加える前の基準となるケース。
- 配当政策:企業が投資家に現金を還元する方法。
第7〜10部:オプション、資金調達、特別なテーマ
- 金融オプションとリアル・オプション:固定的なキャッシュフローだけでなく選択権の評価。
- 運転資本管理:短期の資金調達の意思決定。
- M&A、ガバナンス、リスク管理:巻末にまとめられたテーマ。
批判的分析
長所
- ひとつの組織原理。 第3章の題名と出版社の説明はいずれも一物一価の法則を本書の枠組みとしており、各テーマは別々のルールの寄せ集めではなく、ひとつの原則の応用として提示される。
- 幅広さと論理的な順序。 10部31章で貨幣の時間価値からガバナンスまでを網羅し、部の題名が議論の筋道を示している。まず価値、次にリスク、そして資金調達である。
- オプションを独立した部に。 金融オプション、オプションの評価、リアル・オプションが専用の部に置かれており、この主題が巻末の1章に押し込められていない。
- ケースの存在。 「評価と財務モデリング:ケーススタディ」という章が、それまでの評価の内容をまとめる役割を果たす。
短所
- 分量。 31章あり、1学期の授業で全体を扱うことはできないため、第6〜10部から選ぶ必要がある。
- 公開されている目次では前提知識が示されていない。 目次は企業と財務諸表から始まるが、出版社のページは必要な代数や会計の知識を明記していない。
- 特色は出版社の資料に頼るしかない。 「実践して学ぶファイナンス」といった演習の特徴はピアソンの紹介文によるもので、目次だけでは章末問題の質は判断できない。
コースにおける位置づけ
コーポレート・ファイナンスのリストの中で、本書は基礎をすでに学んだ読者向けの本格的な教科書である。Ross、Westerfield、Jordan の Fundamentals of Corporate Finance は、貨幣の時間価値、リスクとリターン、価値創造を軸にした入門書で、段階的な例が豊富であり、穏やかな最初の一冊になる。Dahlquist と Knight の Principles of Finance 2e は OpenStax の無料の入門書で、財務諸表、時間価値、評価、リスク、資本予算をビジネスのケースを通して扱う。
Brealey、Myers、Allen、Edmans の Principles of Corporate Finance は範囲の上で最も近く、企業や市場がなぜそのように振る舞うのかを考えることを重視した包括的な教科書である。Atrill の Financial Management for Decision Makers は、基礎理論と、分析・計画・意思決定のための実用的な道具を組み合わせたもので、管理者が財務を使う場面に目を向けている。
本書の使い方
本書は、中級のコーポレート・ファイナンスの授業を受ける学生、MBA の学生、評価から資金調達まで体系的に学びたい独学者に向いている。貨幣の時間価値が最初の技術的な関門なので、第3部に入る前に第1部・第2部をしっかり固めておくとよい。
実践的な読み方は次のとおり。
- 中核: 第1〜5部を順に。一物一価の法則から資本構成、配当政策まで。
- 次に: レバレッジを考慮した評価やオプションが必要な読者は第6部・第7部へ。これらは中核の内容の上に築かれている。
- 必要に応じて: 第8〜10部。資金調達の仕組み、運転資本、M&A、ガバナンス、リスク管理、国際金融。
- 併用: 本書の数値例をスプレッドシートで自分で再現し、各章を初期の章の財務諸表と割引の道具に照らして確認する。
