01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Johnson, M. (2019). Archaeological Theory: An Introduction (3rd ed.). Wiley-Blackwell.
章の要約
第3版は全14章、約400ページで、巻頭に「理論の矛盾」(The Contradictions of Theory)と題した序文があり、巻末には精選用語集、文献案内、参考文献、索引が付く。出版社は本書の進め方を、考古学理論の諸学派への道案内と説明している。各学派の基盤、学派どうしの関係、それぞれを分ける点が取り上げられる。サンプル章を見ると、本書は歴史順に進み、1960年代から始めて、そこで始まった運動への反応へと移っていく。
第1章:Common Sense is Not Enough(常識では足りない)
考古学者は理論なしではやっていけない、という議論の章。理論をひとまず「事実を並べる秩序」と定義し、「なぜ」の問い(理論)と「どのように」の問い(方法)を区別しつつ、両者の境界があいまいであることも認める。そのうえで四つの理由を挙げる。考古学者は自分たちの営みを正当化しなければならない。解釈どうしを比べて優劣を判断できなければならない(ここでは「レイライン」論争が事例となる)。自分の前提を明示しなければならない。そして、発掘報告書が中立を装っていても、実際にはすでに理論を使っている。理論を味気ないと感じる懐疑的な学部生との対話が何度も挿入され、よくある反論を代弁する。章末では全体の構成が示される。まず新考古学、次にそれが提起した科学と人類学をめぐる問い、最後にそれへの反応である。
第2–5章:The “New Archaeology”(「新考古学」);Archaeology as a Science(科学としての考古学);Middle-range Theory, Ethnoarchaeology and Material Culture Studies(中範囲理論、民族考古学、物質文化研究);Culture and Process(文化とプロセス)
最初のまとまりは、新考古学と、第1章によればそれが残した「科学」と「人類学」をめぐる問いを扱う。第1章は、理論と方法の関係が第4章で再び論じられると予告しており、その章では中範囲理論(個々の事実と一般理論をつなぐもの)が民族考古学や物質文化研究と並んで登場する。第5章は文化とプロセスを組み合わせて扱う。
第6–7章:Thoughts and Ideologies(思考とイデオロギー);Postprocessual and Interpretative Archaeologies(ポストプロセス考古学と解釈考古学)
この2章は新考古学への反動に目を向ける。題名から、まず観念とイデオロギーが研究対象として取り上げられ、次にポストプロセス的・解釈的アプローチが論じられることがわかる。出版社は、新考古学と「ポストプロセス」考古学の起源を、本書が説明する話題の一つに挙げている。
第8章:The Material Turn(物質的転回)
出版社によれば第3版で新しく加わった章で、物質性についての記述も拡充されたとしている。
第9–11章:Archaeology, Gender, and Identity(考古学、ジェンダー、アイデンティティ);Archaeology and Cultural Evolution(考古学と文化進化);Archaeology and Darwinian Evolution(考古学とダーウィン進化論)
ジェンダーとアイデンティティの章に続き、進化論的アプローチを扱う2章が置かれ、一つは文化進化、もう一つはダーウィン進化を論じる。出版社は、進化理論や、多様な背景・専門をもつ研究者の仕事についての記述が拡充されたと述べている。サンプル章は、第9章で考古学の実践そのものがジェンダー化された価値観と結びついていることが示されると予告している。
第12–14章:Archaeology and History(考古学と歴史);Archaeology, Politics, and Culture(考古学、政治、文化);Conclusion: The Future of Theory(結論:理論の未来)
最後のまとまりは、考古学を歴史と並べ、続いて政治と文化(出版社が新規または改訂の章として挙げている)を論じ、理論の未来についての結論で終わる。第1章は、理論の定義がこの最終章で再び取り上げられると約束している。
主要概念
第1–5章
- 「事実を並べる秩序」としての理論:第1章の作業定義で、どの考古学的主張も理論から自由ではないという議論に使われる。
- 理論と方法:「なぜ」と「どのように」の問いの境界をめぐる争点で、第4章で再び現れるとされる。
- 新考古学:1960年代の運動で、本書の歴史的叙述の出発点となり、最初のまとまりの章を貫く。
- 中範囲理論、民族考古学、物質文化研究:第4章の題名に挙がっている話題。
第6–11章
- ポストプロセス考古学と解釈考古学:第7章で扱われる、新考古学への反動。
- 物質的転回:第8章の主題。出版社は、物質性、行為主体性、認識論も扱う課題として挙げている。
- 文化進化とダーウィン進化:第10章と第11章で1章ずつ扱われる二つの進化論的アプローチ。
第12–14章
- 考古学と歴史:二つの学問分野の関係(第12章)。
- 考古学における政治と文化:第13章の焦点。
批判的分析
長所
- 理論の初心者向けに作られている。 出版社はくだけた文体、例、漫画、対話を強調しており、サンプル章もそのとおりである。理論は味気ないと感じる架空の学生に、平易な言葉で答えが返される。想定読者は理論を「敬遠しがち」な人たちである。
- 理論が実践で働いていることを示す。 第1章は学派の紹介を急がず、一見中立な遺跡記述の一節や「レイライン」論争のなかに理論的前提があることを示す。そのため、残りの部分を読む動機がつかみやすい。
- 論争を説明する歴史的枠組み。 出版社の約束どおり、またサンプル章が主張するとおり、各学派をそれが生まれた文化的・政治的文脈に置くことで、読者はラベルを暗記するのではなく、立場がなぜ生まれ、何に反発しているのかを理解できる。
- 新しい内容。 第3版では物質的転回と政治に関する章が新設・改訂され、用語集と参考文献が拡充されて、読書案内も更新された。
短所
- 考古学の予備知識が要る。 サンプル章は層位学、ハリス・マトリクス、型式配列法に説明なしで触れており、これらを知らない読者は、先に一般的な入門書を読んだほうがよい。
- 立場をもつ著者。 サンプルははっきりと論争的で(「私は論じたい」)、新考古学をその後のすべての土台とみなす見方はJohnson自身のものである。他の学史と照らし合わせて確かめたい。
- 一部の話題には遠回りになる。 著者は、隣接分野についての長い記述が現役の考古学者には無関係に見えるかもしれないと断っている。現在の論争だけを知りたい読者には、最初の5章は回り道に感じられるだろう。
コースにおける位置づけ
考古学の書目のなかで、Johnsonは一般的な入門書のあと、より専門的な著作の前に読む本である。Colin RenfrewとPaul BahnのArchaeology: Theories, Methods and Practice、およびNadia DurraniとBrian FaganのIn the Beginningは、方法と理論をあわせて扱う。Paul BahnのArchaeology: A Very Short Introductionは短い最初の一冊である。これらはいずれも、Johnsonのように解釈をめぐる思想史に集中してはいない。
Johnsonのあとでさらに深めるなら、Bruce TriggerのA History of Archaeological Thoughtは中世の好古趣味から現代までを扱う世界規模の通史であり、Ian HodderとScott HutsonのReading the Pastは物質的遺物を意味あるものとして読み解く方法を論じた理論書で、文脈的・解釈的考古学を一貫して主張している。Johnsonの第6–8章は、これらの本が詳しく検討する領域の見取り図を与えてくれる。
本書の使い方
Johnsonは、初めて理論の授業を受ける2、3年次の考古学・人類学の学生や、入門的な案内を必要とする隣接分野の大学院生に向く。考古学の基礎が少しあると読みやすい。
実際的な進め方は次のとおり。
- 中心: 第1章、続けて第2–5章を順に読む。サンプル章は、この部分が現在の諸立場の由来を理解する土台であり、新考古学が提起した問いが今も実践の中心にあると強調している。
- 以後はコースに合わせる: 第6–7章は新考古学への反動、第8章は物質性。第9–11章は、授業がジェンダーとアイデンティティを重視するか進化論的アプローチを重視するかに応じて選んで読む。授業が歴史、政治、遺産に移ったら第12–13章を読む。
- 第14章で締めくくり、 そのあと第1章の理論の定義を読み直して、どう変わったかを確かめる。
- 並行して: 各立場を、授業や発掘報告書にある実際の解釈に当てはめて試す。概観がつかめたら、読書案内を使って原典を拾い読みする。用語集は精選版なので、自分用の用語リストも作っておくとよい。
