01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Miller, P. H. (2016). Theories of Developmental Psychology (6th ed.). Worth Publishers.
章の要約
第6版は約512ページ、全9章である。全般的な序章のあと、7つの章がそれぞれ一つの理論の系統にあてられ、最終章が諸理論をまとめる。出版社による版の説明は、理論の各章の大半に「最近の研究」の節があり、ヴィゴツキーの章には「応用」の節があることを示している。
第1章:Introduction
冒頭の章は本書とその主題を導入する。新版の説明では、親子関係が後の青年期・成人期の人間関係に及ぼす影響である「発達カスケード」と、言語発達における経験が脳に及ぼす影響についての扱いが加わったとされる。
第2章:Piaget's Cognitive-Stage Theory and the Neo-Piagetians
ピアジェの段階理論と、それに続く新ピアジェ派のアプローチを提示する章である。第6版では、現在の研究に照らしたピアジェの記憶、乳児の認知能力、社会性・情動の発達に関する見解、Kurt Fischerの動的構造主義、発達認知神経科学と神経画像についての議論が加わっている。
第3章:Freud's and Erikson's Psychoanalytic Theories
フロイトとエリクソンの理論が一つの章を共有する。新しい内容として、愛着理論と精神分析的アプローチを結びつける最近の理論的研究、幼少期の社会的・情動的経験が後の発達に及ぼす影響の予測モデル、アイデンティティ発達および人種的・経済的階層化の影響に関する研究が挙げられている。
第4章:Vygotsky and the Sociocultural Approach
ヴィゴツキーの理論と、それに続く社会文化的研究を扱う。版には、文化が知的機能に及ぼす影響(通信技術の影響を含む)、私的発話の研究、知能観の文化差、応用の節での問題基盤型学習についての内容が加わった。社会変化、移民家族、現在の文化心理学研究の動向という3つの新しい小節も挙げられている。
第5章:Biological Approaches: Ethology, Evolution, Neuroscience, Genetics
第6版では生物学的アプローチに焦点を当てて全面的に改訂された章である。発達神経科学、遺伝学、統合的な多層の生物学的視点の節が加わり、エピジェネティックなモデル、神経画像、神経遺伝学が論じられる。
第6章:Social Learning Theory
社会的学習理論を、集団的効力感、ネットいじめにおける道徳的不関与、強圧的な養育者と子どもの相互作用と後の学校での問題行動についての更新された議論とともに提示する。最近の研究の節は、模倣、行為の鏡映とミラーニューロン系、信頼するモデルに基づく就学前児の選択的学習を扱う。
第7章:Information-Processing Theory
情報処理アプローチを提示する章である。新しい内容には、虐待などの否定的な出来事の記憶や、マルチタスクが記憶に及ぼす影響がある。最近の研究の節は、実行機能、認知神経科学、身体化された認知、ベイズモデル、統計的学習、発達ロボティクスを扱う。
第8章:Gibson's Ecological Theory of Perceptual Development
ギブソンの知覚発達の生態学的理論を提示する章。最近の研究の節は、乳児の運動発達と神経画像が可能にした研究の進展を含むように改訂された。
第9章:Theories Today: Themes and Reflections
最終章は諸理論を横断して見渡す。心の理論の研究、力動システム理論、中核知識理論の扱いが加わり、生物学的理論と最近の研究成果にもより多くの注意が向けられる。
主要概念
第1〜4章
- 発達カスケード:子どもと親との関係が後の関係に及ぼす影響。冒頭の章で導入される。
- 段階理論と新ピアジェ派:ピアジェの認知段階の説明と、それを改めた研究(Fischerの動的構造主義を含む)。
- 精神分析理論と愛着:フロイトとエリクソンの説明、およびそれらを愛着理論と結びつける最近の試み。
- 社会文化的アプローチ:文化と知的機能の社会的文脈を重視するヴィゴツキーの立場(私的発話を含む)。
第5〜9章
- 生物学的アプローチ:行動学、進化、神経科学、遺伝学。エピジェネティックなモデルを含む。
- 社会的学習:観察と模倣による発達。集団的効力感や道徳的不関与が話題となる。
- 情報処理:実行機能、記憶、統計的学習を分析の単位とする。
- 知覚発達:知覚がどう変わるかについてのギブソンの生態学的説明。
- 力動システムと中核知識:心の理論とともに、最終章が現在の姿に加える二つの視点。
批判的分析
長所
- 一理論一章。 目次は主要な枠組みにそれぞれ一章を与えているので、ピアジェ理論、精神分析、社会文化、生物学、社会的学習、情報処理、知覚の各理論を同じ条件で比較でき、最終章は諸理論を横断する主題にあてられている。
- 各理論が現在の研究まで追われている。 版の説明は、理論の章の大半に最近の研究の節があることを示しており、神経画像、実行機能、ネットいじめなどの話題を通じて、古典的理論と近年の研究がつながる。
- 強化された生物学的重点。 第5章はこの版で神経科学と遺伝学を含むように書き直され、最終章も生物学的理論により注意を向けているので、認知的・社会文化的な説明だけに頼らない本になっている。
短所
- 最近の研究については古い。 版は2016年のもので、その後の研究は反映されていない。
- 範囲に選択がある。 9つの章には、精神分析の章の中に含まれる愛着理論の独立した章も、文脈を扱う生態系理論の章もない。
コースにおける位置づけ
発達心理学のコースでは、主な知見をすでに知っていて、それを説明する枠組みを比較する段階の読者に向く本である。Usha Goswamiの Child Psychology: A Very Short Introduction とOpenStaxの Lifespan Development はやさしい最初の概観であり、ShafferとKippの Developmental Psychology: Childhood and Adolescence とSiegler、Saffran、Gershoffの How Children Develop は、主題やテーマに沿って構成された本格的な教科書である。経験的な内容に慣れてからのほうが理論を評価しやすいので、Millerはこれらのいずれかのあとが読みやすい。
本書は、このコースの一次文献への案内にもなる。ピアジェの The Origin of Intelligence in the Child は第2章の背後にある原典であり、エリクソンの Childhood and Society は精神分析の章の背後にある原典である。先にMillerの章を読み、次に原典を読むと、各著者自身の声の特色が見えてくる。
本書の使い方
本書は、発達心理学入門の授業を終えており、理論を比較する枠組みがほしい学生に向く。たとえば発達理論を扱う上級の学部ゼミや大学院ゼミである。
実際の読み方は次のとおり。
- 第1章と第9章をあわせて読む。 序章が問いを立て、最終章がそこに戻るので、この2章が間の理論の章を枠づける。
- 第2〜8章は授業に必要な順に取り上げる。 各章は一つの枠組みにあてられているので独立に読める。第2章のピアジェが最初に置かれ、ほかの章の参照点にもなる。
- 比較しながら進める。 各理論が発達をどう捉えるか、変化の主な原因を何とみなすか、どんな研究を生んだかを短い表にし、章ごとに埋めていく。
- 最近の研究の節を使う。 各理論が現在どう応用されているかを見るとともに、このコースで一次文献が利用できる章はそれと組み合わせる。
