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Psychiatry: A Very Short Introduction(精神医学:ベリー・ショート・イントロダクション) cover

心理学

心理学

Psychiatry: A Very Short Introduction(精神医学:ベリー・ショート・イントロダクション)

Tom Burns

英語原題: Psychiatry: A Very Short Introduction

オックスフォードの社会精神医学教授による、精神医学についての短くバランスのとれた解説。精神科医が何をどのように治療するかを説明し、精神病院の時代から地域ケア、現代の薬物療法と対話による治療までの歩みをたどり、精神疾患に対する社会の見方を形づくってきた批判、濫用、論争を論じる。

前提知識: 不要。医学や心理学の素養は前提としない。

難易度レベル
初級
学術レベル
学部
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01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Burns, T. (2018). Psychiatry: A Very Short Introduction (2nd ed.). Oxford University Press.

章の要約

オックスフォード大学出版局の「Very Short Introduction」の一冊で、7章(本文約124ページ)。出版社は、精神医学にできること・できないこと、その歴史が強調点と治療の劇的な転換に彩られてきた理由、心理学や心理療法との違いと重なり、過去の誤りや袋小路を探り、そのうえで高齢化社会の課題や人工知能・仮想現実がもたらしうる変化を見通す本だと説明している。以下は出版社の章ごとの要旨に基づく。

第1章:精神医学とは何か(What is psychiatry?)

精神医学を、精神疾患を扱う医学の一分野と定義し、その定義が心理学や精神分析のような理論ではなく実践に基づくと強調する。面接は精神科医の仕事の特徴で、診断は人が何をしているかだけでなく、なぜそうしているかについての判断に依拠する。器質性・機能性を含む最も一般的な精神疾患が説明される。

第2章:収容施設と精神医学の起源(Asylums and the origins of psychiatry)

家族による世話から私立の精神病院や救貧院まで、精神疾患のある人々のケアの歴史を概観し、1820年代に本格化し、静かな田園環境で道徳療法を行おうとした収容施設運動を述べる。過密により状況は悪化した。19世紀の研究は主にドイツ語圏で進み、クレペリン、ブロイラー、フロイトが最も影響力のある三人として挙げられ、有効な特異的治療が現れるのは1920年代になってからだとされる。

第3章:地域社会への移行(The move into the community)

脱施設化を検討する。英国の大規模精神病院のほぼすべて、米国と西欧のほとんどが閉鎖された。背景には抗精神病薬と抗うつ薬、社会の態度の変化、精神医学内部の根本的な見直し、財政上の考慮がある。地域ケアの最初の20年は比較的成功したが、閉鎖が代替サービスの整備より先行し、スティグマ、リスクの過大視、家族の崩壊、高い移動性、薬物・アルコール使用の増加がケアを難しくした。

第4章:精神分析と心理療法(Psychoanalysis and psychotherapy)

精神分析と心理療法が精神医学とどう関わるかを検討する。フロイトの自由連想とイド・自我・超自我、ユングの「影」、さらに実存療法、精神力動療法、行動療法、集団療法、カウンセリング、家族療法、危機介入、セルフヘルプ、認知行動療法といった多様な療法が扱われる。

第5章:内と外から攻撃される精神医学(Psychiatry under attack—inside and out)

精神医学に内在する矛盾、とりわけ心と脳の関係を論じる。多くの精神疾患は脳の障害を伴うが、すべての脳疾患が精神疾患なのではない。遺伝的な弱さとする見方から、フロイトとその追随者による養育重視への転換をたどり、1960~70年代にサズ、フーコー、レインが主導した反精神医学運動が、精神医学を良くて混乱、悪ければ社会的抑圧の道具と非難したことを述べる。

第6章:濫用されやすい(Open to abuse)

精神科診療の性質がなぜ濫用を招きやすいかを説明する。依存的で弱い立場の患者との不平等な力関係、血液検査のような具体的指標のない主観的な診断である。政治的濫用、愚かな理論、危険な治療を振り返り、可視性、情報を得た市民、誤りを認める姿勢、エビデンスに基づく医療を歯止めとして挙げる。

第7章:21世紀へ(Into the 21st century)

将来を展望する。脳だけでなく身体が精神の健康にどう影響するかへの関心が高まり、人工知能や仮想現実を含むコンピュータ技術が新しい治療の可能性を開き、画像法、遺伝学、エピジェネティクスが新たな道具を与える。精神医学の中心的な難題は小さくなっておらず、分野は消えるのではなく変化しつつある、と章は述べる。

主要概念

第1~4章

  • 実践に基づく精神医学の定義:精神疾患に対して精神科医が行うことで分野を定義し、面接を主要な道具とする。
  • 道徳療法と収容施設:精神疾患への19世紀の対応と、その衰退。
  • 脱施設化:大規模精神病院の閉鎖と地域ケアへの移行。
  • 心理療法:精神分析、精神力動、行動、認知行動療法など。

第5~7章

  • 心脳問題:精神医学が単なる脳医学の一分野ではない理由。
  • 反精神医学:サズ、フーコー、レインによる1960~70年代の批判。
  • 濫用と歯止め:不平等な力関係、主観的診断、エビデンスに基づく実践の役割。
  • 新しい技術:人工知能、仮想現実、画像法、遺伝学、エピジェネティクス。

批判的分析

長所

  • 論争についてバランスが取れている。 二つの章が精神医学への攻撃とその濫用の可能性に充てられ、出版社の説明も過ちと袋小路に触れている。第6章は政治的濫用や危険な治療を正面から振り返る。
  • 歴史の流れが明快。 第2~5章は収容施設から地域ケア、心理療法、反精神医学運動へと進み、現在の実践と世間の態度を理解しやすくする。
  • 先を見ている。 最終章は脳だけでなく身体、人工知能、仮想現実、エピジェネティクスを考察する。

短所

  • 個々の疾患と治療の扱いは少ない。 一般的な疾患は第1章で説明されるが、薬物治療に特化した章はなく、歴史の章の中に現れる。
  • 短い。 約124ページのため各論点は紹介にとどまり、掘り下げた分析ではない。児童・青年期精神医学や司法精神医学の章もない。

コースにおける位置づけ

異常心理学・臨床心理学のコースにある二冊の Very Short Introduction のうちの一冊で、精神保健の医学の側への穏やかな入門である。Llewelyn と Aafjes-van Doorn の Clinical Psychology: A Very Short Introduction は隣接する職業の物語を語るため、自然な併読書になる。Pomerantz の Clinical Psychology: Science, Practice, and Diversity は、その職業についてのより詳しい学部向けテキストである。

疾患そのものについては、Comer 父子の Psychopathology: Science and Practice が疾患区分、モデル、治療を概観する学部向けの教科書、Maddux と Winstead の Psychopathology は編著の大学院向け教科書、Barlow の Clinical Handbook of Psychological Disorders はセッションごとの治療マニュアルを提供する。Burns の本は、疾患を取り巻く制度や論争を理解するために、これらより先に読むのがよい。

本書の使い方

医学や心理学の予備知識は不要。心理学や保健関連の1年生、精神疾患をめぐる社会的議論を理解したい読者、異常心理学の授業の準備をする人に向く。

実践的な進め方としては、第1章で分野の定義を、第2~4章で治療の歴史を、第5・6章で批判的な議論を、第7章で展望を読む。各章はかなり独立して読めるため、論争に関心がある読者は第5章から始めてもよい。特定の疾患を学ぶ段階では、疾患別の教科書に進む。