01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Pomerantz, A. M. (2023). Clinical Psychology: Science, Practice, and Diversity (6th ed.). SAGE Publications.
章の要約
第6版は4部19章に、用語集と参考文献が付き、752ページである。SAGE は本書を、臨床心理学を包摂的で文化的に適切な視点から学生に示すものと説明しており、臨床的アセスメント、心理療法、倫理・専門職上の問題を扱い、現在の論争や専門的なトピックも取り上げる。SAGE が公開しているサンプル章によれば、各章は番号付きの学習目標で始まり、ページ参照付きのキーワードと批判的思考の問いで終わる。
第1部 第1–2章:Clinical Psychology(臨床心理学)/Evolution of Clinical Psychology(臨床心理学の発展)
第1章は臨床心理学とは何かを問い、教育と訓練、大学院が学生をどう選ぶか、免許制度の仕組み、臨床心理士の専門活動と職場、関連職種との違いを扱う。第2章はこの分野の歴史を、起源と初期の先駆者から Lightner Witmer による臨床心理学の創設までたどり、その歴史における人種主義と偏見、アセスメントと心理療法の歴史、専門職の発展についての節がある。
第1部 第3–6章:Current Controversies and Directions in Clinical Psychology(現在の論争と方向性)/Diversity and Cultural Issues(多様性と文化の問題)/Ethical and Professional Issues(倫理・専門職の問題)/Conducting Research(研究の実施)
第3章は現在の論争を扱う。COVID 前後のテクノロジーと遠隔心理学、処方権、エビデンスに基づく実践とマニュアル化された療法、精神障害の過剰な拡大、第三者支払いと自己負担である。第4章は多文化主義の台頭、文化的コンピテンス、文化とは何か、多様性に関する訓練を扱う。第5章はアメリカ心理学会の倫理綱領を、守秘義務、インフォームド・コンセント、境界と多重関係、能力、アセスメントと研究における倫理を含めて検討する。第6章は、臨床心理学者がなぜ、どのように研究を行うかを、テクノロジーの利用や研究倫理を含めて説明する。
第2部 第7–10章:Diagnosis and Classification Issues(診断と分類の問題)/The Clinical Interview(臨床面接)/Intellectual and Neuropsychological Assessment(知能・神経心理学的アセスメント)/Personality Assessment and Behavioral Assessment(パーソナリティ・アセスメントと行動アセスメント)
第7章は精神病理を定義し、診断の簡潔な歴史を述べ、DSM への批判を論じ、次元的アプローチ、HiTOP、RDoC という代替の方向を示す。第8章は面接者、面接の構成要素と種類、文化的要素を扱う。第9章は知能検査、学力検査、神経心理学的検査を扱う。第10章はパーソナリティ・アセスメントを、多方法・エビデンスに基づく・文化的に適切な実践への配慮とともに、客観的検査と遂行ベースの検査、行動アセスメントを含めて扱う。
第3部 第11–16章:Psychotherapy(心理療法)
第11章は、心理療法は効くのか、有効性(efficacy)と効果(effectiveness)、どの種類が最良か、臨床心理学者はどの種類を実践しているかという一般的な問いで部を始める。複数の視点から考察するための架空のクライエント Denise が登場する。第12–15章は、精神力動的、人間性、行動、認知の各療法を扱い、最後はマインドフルネスに基づく療法と併せて扱う。第16章は集団療法と家族療法を、実際上および倫理上の問題を含めて扱う。
第4部 第17–19章:Special Topics(特別なトピック)
専門分野を扱う3章で、臨床児童・青年心理学(若年者へのアセスメントと心理療法を含む)、健康心理学(行動医学との違い、ストレス、ソーシャルサポート、多様性の要因を含む)、司法心理学(定義と歴史、アセスメント、治療その他の司法関連活動)である。
主要概念
第1–6章:専門職
- 訓練モデル:科学者−実践家(ボルダー)、実践家−学者(ベイル)、臨床科学者という大学院訓練のモデル。
- 文化的コンピテンス:文化を超えて働くために必要な技能と気づき。
- エビデンスに基づく実践とマニュアル化された療法:この分野の論争の一つ。
- APA 倫理綱領:守秘義務、インフォームド・コンセント、境界、能力。
第7–10章:アセスメント
- DSM の分類とその代替:次元的アプローチ、HiTOP、RDoC。
- 臨床面接:その構成要素と種類。
- 知能・神経心理・パーソナリティの検査:客観的検査と遂行ベースの検査。
- 行動アセスメント:行動を直接観察すること。
第11–19章:療法と特別なトピック
- 有効性と効果:療法が研究条件と実際の現場でそれぞれ効くか。
- 療法のアプローチ:精神力動的、人間性、行動、認知とマインドフルネスに基づく療法、集団療法と家族療法。
- 専門分野:児童・青年、健康、司法の各心理学。
批判的分析
長所
- 専門職の全体像。 4つの部は臨床心理学者の仕事の流れ、すなわち分野の理解、アセスメント、治療、専門化に沿っている。各章が実践とどう関わるかが見えやすい構成である。
- 複数の箇所での多様性。 文化の問題には独立した章があり、目次には、面接における文化的要素、文化的に適切なパーソナリティ・アセスメント、この分野の歴史における人種主義と偏見、健康心理学における多様性の要因も挙がっている。
- 論争への目配り。 現在の論争を扱う章が丸ごと1つあり、DSM への批判などの節もあるため、暗記だけでなく議論のための材料が得られる。
- キャリア設計への支援。 サンプル章の第1章は、大学院が学生をどう選ぶか、インターンシップと免許がどう機能するかを説明し、博士課程プログラムの標準的なディレクトリを紹介する「大学院を目指して」の節で終わる。SAGE は新版にキャリアに焦点を当てた特徴があると述べている。
短所
- 個別の障害を扱う章がない。 アセスメントの部は診断と分類を一般的に扱うが、個々の障害を扱う章はないので、異常心理学のテキストを併用することになるだろう。
- 主にアメリカの枠組み。 目次は、APA の倫理綱領、DSM、アメリカの免許・訓練の経路に言及している。他地域向けにインターナショナル学生版があるが、掲載されている目次は同じである。
- 分量。 752ページ19章であり、1つの授業では一部を選んで使うことになる。
コースにおける位置づけ
Pomerantz は、専門職としての臨床心理学への教科書規模の入門である。Llewelyn と Aafjes-van Doorn の Clinical Psychology: A Very Short Introduction は同じ主題をコンパクトに扱い、最初の概観や簡単な復習に役立つ。また、専門職のあり方が国によって異なる点にも触れている。Burns の Psychiatry: A Very Short Introduction は医学側の対応物を示し、臨床心理学者と精神科医はどう違うかという第1章の問いを補う。
障害そのものについては、Comer と Comer の Psychopathology: Science and Practice が主要な障害のカテゴリーと治療のエビデンスを概観しており、Pomerantz のアセスメントと療法の部と組み合わせられる。Maddux と Winstead の Psychopathology: Foundations for a Contemporary Understanding は、診断への批判的な視点が強い大学院向けの編著である。Barlow の Clinical Handbook of Psychological Disorders は、事例をアセスメントから介入までたどる治療マニュアルであり、Pomerantz の心理療法の章のあとに進む上級の学生に自然な次の一歩となる。
本書の使い方
臨床心理学の最初の授業を取る学部生や、臨床心理学またはカウンセリング心理学の大学院進学を考える学生に向く。出版社は前提条件を示していない。
まず第1部を読む。この部は、分野と、後の部が繰り返し参照する倫理的・文化的な枠組みを定義するからである。第2部は順に読んでも、異常心理学の授業と並行して読んでもよく、診断を扱う第7章がその要になる。第3部は療法を一つずつ取り上げて読める。第11章のクライエント Denise は、同じ事例で各アプローチを比較する手がかりになる。第4部は関心に応じて選べる。
各章を終えたら学習目標で理解を確かめ、キーワードで復習し、批判的思考の問いを議論や短い小論文に使う。大学院進学が目標なら、入学選考、インターンシップ、免許に関する第1章の内容を丁寧に読むこと。
