索引 / 001 JA
An Introduction to the Philosophy of Psychology(心理学の哲学入門) cover

心理学

心理学

An Introduction to the Philosophy of Psychology(心理学の哲学入門)

Daniel A. Weiskopf; Fred Adams

英語原題: An Introduction to the Philosophy of Psychology

Cambridge Introductions to Philosophyシリーズの一冊で、科学としての心理学の概念的基礎を検討する教科書。心理学的説明とは何か、心理学は神経科学とどう関係するのか、心はモジュールからなるのか、概念や心的表象とは何か、身体化・拡張された認知のアプローチが標準的な認知科学にどのような問いを投げかけるのかを論じる。

前提知識: 心理学の入門科目。心の哲学や認知科学を少し読んでいると役立つが、必須ではない。

難易度レベル
上級
学術レベル
上級
philosophy of psychologypsychological explanationmental representationcognitive architectureconceptual issues教科書

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Weiskopf, D. A., & Adams, F. (2015). An Introduction to the Philosophy of Psychology. Cambridge University Press.

章の要約

本書は九章から成り、各章は約30ページで、「ケンブリッジ哲学入門」(Cambridge Introductions to Philosophy)シリーズの一冊である。序文で著者らは中心的立場を述べる。心理学は背後にある過程・システム・機構を記述することで心的現象を説明し、その心理学的説明は神経機構による説明とは別であり、それに対して自律的である。神経科学と心理学は補い合う営みとされ、本書は独自の心の科学の範囲、方法、内容、展望を説明することを目指す。哲学、心理学、認知寄りの神経科学の学生向けに書かれ、重要な科学的予備知識は前提としない。

第1章:What Psychology Is(心理学とは何か)

冒頭の章は、日常的な心の理解、いわゆる素朴心理学から始める。これは信念・欲求・意図を用いて行動を説明し予測する実践であり、これを足がかりに、科学的な心理学とは何か、常識とどう違うのかという問いを導く。

第2章:Autonomy and Reduction in Psychology(心理学における自律性と還元)

この章は心身関係を取り上げる。二元論者と一元論者の分かれ目と物理主義の台頭を概観し、心理状態を物理的・生物学的・神経生理学的な状態とどう関係づけて理解すべきかを問う。心理学的説明は神経科学から自律的であるという序文の主張は、この章で扱われる。

第3章:Modularity and Cognitive Architecture(モジュール性と認知アーキテクチャ)

ここでは、デカルト的な不可分の心の像に対して、心が内的な設計図をもつ複雑なシステムとして扱われる。章は、構成要素への分解とモジュール的アーキテクチャという考え方を、計算機器や生物有機体とのアナロジーを用いて導入する。

第4章:Nativism, Development, and Change(生得論、発達、変化)

この章は発達心理学に向かい、心が初期状態からどのように成熟した状態に至るのかを問う。生物学の初期の前成説との比較を通じて、隠れた生得的構造に訴えることを慎重に検討すべき理由を説明する。

第5章:Beyond the Brain and Body(脳と身体を超えて)

この章は、近年の認知科学の「四つのE」、すなわち埋め込み、身体化、エナクティブ、拡張認知を紹介する。これらは認知が頭の中で起こるという従来の見方への挑戦とされ、何をもってあるものが認知システムになるのかという問い、つまり「認知の標識」が提起される。

第6章:Perception and Action(知覚と行為)

章はまず感覚をどう定義し区別するかを問い、そのうえで最も詳しく研究されている視覚を中心に論じる。知覚についてのエナクティブな見方は、章の後半の節で扱われる。

第7章:Attention and Consciousness(注意と意識)

注意と意識は、定義の難しい心の二つの側面として導入される。章は注意をモデル化する現代の方法を概観し、注意と意識の結びつきが深い理論的関連を反映しているのかを探る。

第8章:The Social Mind(社会的な心)

この章は素朴心理学に戻り、今度は科学的研究の対象として扱う。他者の行動を読み取り、予測し、説明する能力である。こうした能力がどのような種類の能力か、どのような知識に依拠するか、他の認知システムの中でどこに位置づくかを問う。

第9章:Thought and Language(思考と言語)

最終章は、思考と言語のどちらが先かを問う。言葉をもたない動物は思考しないというデカルトの見方から出発し、思考と言語をより古い認知過程から進化したものと見る進化的な見方へと進む。

主要概念

第1~2章

  • 素朴心理学:信念・欲求・意図で行動を説明する日常の実践。
  • 自律性と還元:心理学的説明が独立に成り立つのか、神経的説明に還元されるのか。
  • 物理主義と二元論:心身関係についての大きな立場。

第3~4章

  • モジュール性:心を、内的設計図をもつ、構成要素に分解可能なシステムとみる見方。
  • 生得論:心の初期状態には何が含まれるかという問題。

第5~7章

  • 四つのE:埋め込み、身体化、エナクティブ、拡張認知。
  • 認知の標識:認知的な過程と非認知的な過程を分ける特徴。
  • 注意と意識:結びついているがとらえにくい二つの現象。

第8~9章

  • 心の読み取り:他者に心的状態を帰属させる能力。その欠如は「心盲」と呼ばれる。
  • 思考と言語の関係:思考は言語をもつことに依存するか。

批判的分析

長所

  • 立場が明確。 序文が自律性テーゼと神経科学との関係を述べているので、読者は各章を貫く議論の筋を把握できる。
  • 多様な読者を想定。 著者らは、論じる諸科学についての重要な予備知識を前提とせず、学部生、大学院生、研究者のすべてを念頭に置くと述べる。出版社も、心理学や神経科学の知識がほとんどない読者にも読みやすいとしている。
  • 事例と最新の研究。 出版社は、明快で詳細な事例研究と最新の実証研究を用い、心のアーキテクチャの大部分を統合的に概観すると説明している。
  • 簡潔で整理されている。 長さの近い九つの章が、科学としての心理学の位置づけから、アーキテクチャと発達を経て、知覚、注意、社会的認知、言語といった個別領域へと進む。

短所

  • 中立的な概説ではなく、主張をもつ本。 著者らが独自の見方を軸に本書を組み立てているため、立場の全体像を求める読者は別の資料で補う必要がある。著者自身、心身関係についての立場はあまりに多く概観しきれないと述べている。
  • 選択的な範囲。 知覚の章は主に視覚に限られる。感情、記憶、精神病理といった領域は章題に現れない。
  • 心理学の入門書ではない。 本書は心理学の背後にある概念を扱い、心理学者が何を研究しているかは既知であることを前提とする。

コースにおける位置づけ

心理学の幅広い概説を終えたあとに読む本である。Gleitman、Fridlund、ReisbergのPsychology、MyersとDeWallのPsychology、オープンライセンスのPsychology 2eがこの分野の内容を扱い、ButlerとMcManusのPsychology: A Very Short Introductionが簡潔な概観を与える。WeiskopfとAdamsはその後で一歩下がり、それらの本の説明が何を意味するのかを問う。

最も近い仲間は、BrysbaertとRastleのHistorical and Conceptual Issues in Psychologyである。これは分野の歴史と科学哲学、長く続く概念上の論争を組み合わせた上級の教科書だ。BrysbaertとRastleは歴史に重きを置き、WeiskopfとAdamsはより哲学的で、心のアーキテクチャに集中する。両方を読めば、心理学がどのような科学なのかがよく見えてくる。

本書の使い方

入門課程を終えた哲学、心理学、認知科学、神経科学の2、3年生に向き、真剣な関心をもつ大学院生や一般読者にも使える。哲学の素養は要らない。

進め方の例:まず第1~3章を読む。説明、還元、アーキテクチャをめぐる議論の土台となる。発達の問題には第4章が続く。第5~9章はおおむね独立しているので、関心に応じた順で読める。身体化と拡張認知は第5章、知覚・注意・意識は第6~7章、社会的認知は第8章、言語と思考は第9章である。各章を読み終えたら、主な主張を一文で述べ、それが依拠する心理学的知見を書き留め、一般的な心理学の教科書で確かめるとよい。