01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Eysenck, M. W., & Keane, M. T. (2020). Cognitive Psychology: A Student's Handbook (8th ed.). Psychology Press (Routledge).
章の要約
第8版は980ページ、5部・16章からなり、巻末に用語集、参考文献、索引が付く。出版社によれば、どの章にも重要語の定義、現実生活への応用、章のまとめ、推薦図書があり、新版では神経科学がより重視されている。
第1章:Approaches to human cognition(人間の認知へのアプローチ)
認知心理学、認知神経心理学、認知神経科学(作動中の脳)、計算論的認知科学の四つのアプローチを紹介する。続いて主要なアプローチを比較し、再現性の危機があるのかを問い、本書の残りの構成を示す。
第I部 第2–5章:Visual perception and attention(視知覚と注意)
「視知覚の基本過程」は、視覚と脳、二つの視覚系、色、奥行き、閾下知覚を扱う。「物体と顔の認識」は、パターン認識、知覚的体制化、トップダウン過程、顔、視覚的イメージを扱う。「運動知覚と行為」は、直接知覚、視覚誘導運動、人間の動きの知覚、変化盲を扱う。「注意と遂行」は、焦点的な聴覚・視覚的注意、視覚的注意の障害、視覚探索、クロスモーダル効果、二重課題遂行、自動的処理を扱う。
第II部 第6–8章:Memory(記憶)
「学習、記憶、忘却」は、短期記憶と長期記憶、ワーキングメモリ(バドリーとヒッチ、個人差と実行機能)、処理水準、検索による学習、潜在学習、忘却を扱う。「長期記憶システム」は、宣言的記憶、エピソード記憶、意味記憶、非宣言的記憶を扱う。「日常の記憶」は、自伝的記憶、目撃証言、展望的記憶を扱う。
第III部 第9–11章:Language(言語)
「音声知覚と読み」は、音声(と音楽)の知覚、文脈効果、音声知覚の理論、単語認識、音読、眼球運動研究を扱う。「言語理解」は、構文解析、語用論、ワーキングメモリ容量、談話の推論とその理論を扱う。「言語産出」は、発話の計画、言い誤り、産出の理論、認知神経心理学、書字と綴りを扱う。
第IV部 第12–14章:Thinking and reasoning(思考と推論)
「問題解決とエキスパティーズ」は、洞察、方略、類推、チェスと医療におけるエキスパティーズを扱い、脳の可塑性と熟達のための練習にも触れる。「判断と意思決定」は、判断の研究と理論、リスク下の意思決定、感情的・社会的要因、応用的な意思決定を扱う。「推論と仮説検証」は、仮説検証、演繹推論とその理論、脳のシステム、非形式的推論、人間は合理的かという問いを扱う。
第V部 第15–16章:Broadening horizons(視野の拡大)
「認知と感情」は、評価理論、感情制御、感情が注意・記憶・判断・意思決定に及ぼす影響、不安・抑うつと認知バイアス、認知バイアス修正を扱う。「意識」は、意識の機能、意識的経験の評価、グローバルワークスペース理論、意識は単一かという問いを扱う。
主要概念
第1章:認知へのアプローチ
- 認知神経心理学:四つのアプローチの一つで、脳損傷の影響を通して認知を研究する。
- 計算論的認知科学:認知を計算によってモデル化する。
- 再現性の危機:研究結果の信頼性について冒頭の章で提起される問い。
第2–8章:知覚、注意、記憶
- 二つの視覚系(知覚-行為モデル):第2章で示される視覚の説明。
- ワーキングメモリ(バドリーとヒッチ):第6章の中心的モデル。
- 宣言的記憶と非宣言的記憶:第7章を構成する区分。
第9–16章:言語、思考、感情、意識
- 構文解析:第10章で扱われる文構造の分析。
- 熟達のための練習:第12章のエキスパティーズに関する話題。
- 認知バイアス修正:第15章の、感情と認知に関する話題。
- グローバルワークスペース理論:第16章の意識の理論。
批判的分析
長所
- **包括的な範囲。**16章が、視覚と注意から記憶、言語、思考を経て感情と意識へと読者を導き、各章には多くの節がある(たとえば音声知覚と読みの章には八つの節がある)。出版社は、この分野の主要領域をすべて扱っていると位置づけている。
- **複数のアプローチを一冊で。**第1章は実験認知心理学、認知神経心理学、認知神経科学、計算モデルを並べて示し、以降の章は複数の水準で話題を扱う。
- **評者の評価。**出版社が引用する評者には、ロバート・ロジー(エディンバラ大学)がおり、本書を、持ち前の網羅性と読みやすさを保った高い水準の基準と評している。フィリップ・ジョンソン=レアード(プリンストン大学)は、低次の視覚から高次の意識まですべてを説明し、入門テキストとしても使えると述べる。ローダ・ショー(チャールズ・スタート大学)は最新の現実的な例の使い方を、リン・エイグラー(南ミシシッピ大学ガルフコースト校)は簡潔で読みやすい文章を挙げている。
- **学習の補助。**出版社は、シミュレーション実験、多肢選択問題、Primal Pictures の対話的な3D脳アトラスへのアクセスを含むコンパニオンサイトを挙げている。
短所
- **分量。**980ページの本は、通常の一つの授業で使う範囲をはるかに超えるので、読む部分を選ぶ必要がある。
- **出版年。**この版は2020年に出たため、扱われる話題についてその後の研究は含まれていない。
コースにおける位置づけ
本書はこのコースの包括的な参考テキストである。Reisberg の Cognition: Exploring the Science of the Mind は5部構成の中程度の分量の代替書で、980ページは多すぎると感じる読者の最初の一冊に向く。Eysenck と Brysbaert の Fundamentals of Cognition と Taylor と Workman の Cognitive Psychology: The Basics はこの分野に初めて触れる読者向けの入門書で、どちらも本書の前に読める。
特定の方向に深めたい場合、Cognitive Neuroscience: The Biology of the Mind は同じ過程のより詳しい生物学的説明を与え、Griffiths、Chater、Tenenbaum の Bayesian Models of Cognition は確率論的アプローチを扱う大学院レベルの本である。
本書の使い方
入門心理学の授業を履修した学部生に向き、学位課程を通じて参考書としても役立つ。実際的な進め方は、まず第1章で四つのアプローチの用語を押さえ、そのあと第I部と第II部を順に読むことである。知覚、注意、記憶が後の部の土台になっているからだ。
一学期の授業では、通読するよりも各部から一、二章を選ぶとよい。たとえば第I部から第2、3、5章、第II部から第6–8章、第III部から第10章または第11章、第IV部から第12–13章である。章のまとめと推薦図書は理解の確認や一次資料探しに使い、コンパニオンサイトの多肢選択問題とシミュレーションは練習に使う。
