01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Reisberg, D. (2025). Cognition: Exploring the Science of the Mind (9th ed.). W. W. Norton & Company.
章の要約
第9版は5部・15章からなり、ペーパーバックで736ページである。出版社は、応用を重視した単独著者(リード大学の Daniel Reisberg)による教科書とし、認知心理学が教室の外でなぜ重要かを示すことを目的に、明快で簡潔、わかりやすい文章で書かれていると説明している。本版には、Norton Illumine Ebook、InQuizitive、ZAPS、オンライン読本「Applying Cognitive Psychology」が付属する。
出版社が挙げる本版の変更点は次のとおりである。第9章の新しい「Cognition Outside the Lab」コラム「Computer Intelligence」は、AIやChatGPTのような大規模言語モデルを扱う。第12章には、1950年代の陰謀論者の集団 Seekers のケーススタディが加わり、誤情報がどのようにして事実として受け入れられるかを検討する。第1章から始まり全体に広がる「Are Our Results W.E.I.R.D.?」コラムは、西洋・高学歴・工業化・富裕・民主的(W.E.I.R.D.)な集団を対象とした研究から一般化することの難しさを扱う。さらに、250件を超える新しい学術文献が加えられた。
第1部、第1〜2章:心の科学/認知の神経基盤
基礎の部は、分野そのものとその方法(W.E.I.R.D. の議論はここから始まる)から始め、次に認知の物理的基盤としての脳を扱う。
第2部、第3〜5章:視覚的知覚/物体の認識/注意
第2部は「Observing the World Around Us」と題され、視覚から、見たものの認識へ、そして処理する対象を選ぶ注意の役割へと進む。
第3部、第6〜8章:記憶の獲得とワーキングメモリ系/さまざまな種類の記憶/複雑な出来事の想起
記憶には3章が充てられる。記憶の獲得とワーキングメモリ系、記憶のさまざまな種類、そして複雑な出来事の想起である。
第4部、第9〜11章:概念と一般的知識/言語/視覚的知識
第4部は、人が何を知っているか、その知識がどう組織されているかを扱う。概念と一般的知識(新しいAIコラムのある章)、言語、視覚的知識である。
第5部、第12〜15章:判断と推論/問題解決と創造性/知能/意識的な思考、無意識的な思考
最後の部は思考に関するものである。判断と推論の章には Seekers のケーススタディが含まれ、残りの章は問題解決と創造性、知能、意識的思考と無意識的思考の関係を扱う。
主要概念
第1〜5章:基礎、知覚、注意
- 心の科学としての認知心理学:第1章で紹介される、この分野の目的と方法。
- 認知の神経基盤:脳の構造と活動が心的機能とどう関わるか。
- 知覚・認識・注意:見ることから、処理する対象を選ぶことまでの段階。
第6〜8章:記憶
- 獲得とワーキングメモリ:情報がどのように記憶に入り、使うために保持されるか。
- 記憶の種類:第7章が扱う、それぞれ異なる想起のあり方。
- 複雑な出来事の想起:日常経験についての記憶。
第9〜15章:知識と思考
- 概念と一般的知識:一般的な知識がどう組織され、使われるか。
- 言語と視覚的知識:知識の別の2つの形態。
- 判断・推論・問題解決:人がどのように判断し、推論し、問題を解くか。
- 意識的思考と無意識的思考:最終章の主題。
批判的分析
長所
- 全体を通した応用。 出版社は、「Cognition Outside the Lab」コラムをはじめとする現実世界とのつながりと、実験室の知見から日常生活へのわかりやすい道筋を強調している。
- 脳から思考へのわかりやすい流れ。 5つの部は、基礎と脳から、知覚、記憶、知識を経て思考へと進み、記憶には3章が与えられている。
- 方法についての批判的思考。 W.E.I.R.D. コラムは、研究結果が誰について述べたものか、どこまで一般化できるかを考えるよう読者に促す。
- 新しく、インタラクティブ。 本版は250件を超える新しい文献を加え、インタラクティブな電子書籍、課題として割り当て可能な小テストとデモ(「Cognitive Phenomena Interactives」)、「Dynamic Data Figures」を備える。
短所
- 大きな領域が1章ずつ。 言語、判断と推論、認知の神経基盤はそれぞれ1章のみで、深く学ぶには別の教科書が必要になる。
- デジタル機能は購入と結び付いている。 本版の売りのいくつかは新品に付属するオンライン製品であり、中古本や図書館の本を使う読者には関わる点である。
- 章の細部は第8版と異なる。 部と章のタイトルの多くは前の版と同じだが、例、コラム、部の名称は変わっており、第8版で取ったノートがそのまま当てはまるとは限らない。
コースにおける位置づけ
認知心理学の最初の講義向けの、中程度の長さの主教材である。Eysenck と Keane の Cognitive Psychology: A Student's Handbook はより包括的な参考書で、2周目や、ある領域を深く学びたい講義に向く。Eysenck と Brysbaert の Fundamentals of Cognition と Taylor と Workman の Cognitive Psychology: The Basics はやさしい入門書で、より詳しい内容を求める読者は、どちらかのあとで Reisberg に進むとよい。
中心的な話題をすでに知っている読者には、Cognitive Neuroscience: The Biology of the Mind が同じ過程を生物学的に説明し、Griffiths、Chater、Tenenbaum の Bayesian Models of Cognition は心への確率論的アプローチを大学院レベルで論じている。
本書の使い方
認知心理学に初めて触れる学部生に向く。心理学の学習経験は役に立つが必須ではない。
実践的な進め方:
- 第1〜3部を順に読む: 注意と記憶は、知覚と脳についての内容の上に成り立っているためである。
- 次に第4部と第5部へ: 前の部を終えたあとは、言語、判断と推論、意識の各章はどの順で読んでもよい。
- 短い講義では、 第1〜10章を中核とし、後半の章は選んで読む。
- コラムを活用する: 「Cognition Outside the Lab」とW.E.I.R.D. コラムを議論のきっかけに使い、インタラクティブなデモや小テストで次に進む前に理解を確かめる。
