01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Eysenck, M. W., & Brysbaert, M. (2024). Fundamentals of Cognition (4th ed.). Routledge.
章の要約
第4版は全11章、632ページで、カラー図版が170点入っている。出版社は、人が世界に対処するために用いる認知過程、すなわち注意、知覚、学習、記憶、言語、問題解決、思考、推論への、基本的で読みやすい入門書だと説明している。出版社が挙げる今版の新しい点は、参考文献の更新、再現性の問題を踏まえた前版の記述の再確認、拡充された研究活動と「現実世界で」のケーススタディ、注意欠如・多動症、失読症(ディスレクシア)、手品が成り立つ理由、リンゴのロゴを正確に思い出せない理由といった現実的な話題、「重要語」の定義集、そして選択式問題、フラッシュカード、主要実験のシミュレーションを備えた学生・教員向け資料である。
第1章:What is cognitive psychology?(認知心理学とは何か)
冒頭の章は分野を紹介し、続く10章の枠組みを整える。
第2章:Visual perception(視知覚)
最初のテーマ章は視知覚で、人が見たものをどう理解するかという本書の扱いの入口になる。
第3章:Attention and performance(注意とパフォーマンス)
注意とパフォーマンスが一章にまとめられている。出版社は、注意を日常生活に対処するために必要な能力の一つに挙げている。
第4章:Short-term and working memory(短期記憶とワーキングメモリ)
この章は短期記憶とワーキングメモリを扱い、記憶と知識に関する連続4章(第4〜7章)の最初にあたる。
第5章:Learning and long-term memory(学習と長期記憶)
第5章は学習と長期記憶に進み、前章の短期記憶の議論を発展させる。
第6章:Knowledge in semantic memory(意味記憶における知識)
第6章は意味記憶、つまり知識の組織を扱う。
第7章:Everyday memory(日常の記憶)
第7章は日常生活における記憶を扱う。
第8章:Language(言語)
言語には独立した一章が充てられている。
第9章:Problem solving(問題解決)
第9章は問題解決を紹介し、高次の思考を扱う二つの章の最初となる。
第10章:Judgement, decision making, and reasoning(判断、意思決定、推論)
第10章は判断、意思決定、推論をまとめて扱う。
第11章:Cognition and emotion(認知と情動)
本書は認知と情動で締めくくられる。これは出版社のページにある問い、すなわち情動は私たちの考え方にどう影響するのか、に呼応している。
主要概念
第1〜3章:分野、視覚、注意
- 認知心理学:心的過程の研究。第1章で定義される。
- 視知覚:第2章。
- 注意とパフォーマンス:第3章。
第4〜7章:記憶と知識
- 短期記憶とワーキングメモリ:第4章。
- 学習と長期記憶:第5章。
- 意味記憶:知識がどう保持されるか。第6章。
- 日常の記憶:第7章。
第8〜11章:言語、思考、情動
- 言語:第8章。
- 問題解決:第9章。
- 判断、意思決定、推論:第10章。
- 認知と情動:第11章。
批判的分析
長所
- 教育上の工夫が明記されている。 出版社は、重要語の定義、拡充された研究活動、「現実世界で」のケーススタディなど、学習に向けた追加点を挙げている。出版社のページに引用された Valérie Camos は、各章の冒頭に明確な学習目標があり最重要の概念が定義されていると述べ、同じく引用された Jan Theeuwes は、研究結果が日常生活でどう使われるかを学べる「現実世界で」の節を特色として挙げている。
- 入門の話題を網羅している。 11章は、視覚と注意から、記憶と知識の4章を経て、言語、問題解決、推論、情動へと進み、認知心理学の科目を一冊でカバーできる。
- 信頼性に配慮した更新。 出版社は、再現性の問題に関する近年の知見に照らして前版の記述を確認したと述べている。実験に基づく分野として重要な点である。
- オンラインの支援。 選択式問題、フラッシュカード、主要実験のシミュレーションを備えた学生・教員向け資料が挙げられている。
- アプローチのバランス。 出版社は、従来の認知研究のアプローチと、認知神経科学・認知神経心理学とのバランスをうたっている。出版社が引用する Robert Logie は、単純化しすぎずに、範囲の広さと学識の深さを両立していると評価している。
短所
- 入門書としては長い。 632ページは、短い入門書ではなく本格的な教科書である。手早く概観したい読者には、より薄い本が向く。
- 推薦文は出版社が選んだもの。 商品ページに引用された賛辞は出版社が選んだ研究者によるものなので、読みやすさやバランスについての記述は、サンプル章で確かめるのがよい。
- 認知中心の範囲。 目次には意識や認知発達の章がなく、脳に関する証拠は独立した章ではなく各テーマ章の中の一つの流れとして扱われる。
コースにおける位置づけ
このコースにある二冊の初級書のうち、長いほうである。Taylor と Workman の Cognitive Psychology: The Basics は9章・約306ページで素早い最初の見取り図に向き、Eysenck と Brysbaert の本は学習支援とオンライン資料を備えた教科書の分量で扱う。Michael Eysenck は、研究文献をより詳しく扱う総合テキスト Cognitive Psychology: A Student's Handbook の著者の一人でもあり、まず Fundamentals of Cognition、次にその Handbook へ進むのが通常の道筋である。
Reisberg の Cognition: Exploring the Science of the Mind は中程度の分量の学部向けの別の選択肢である。同じ過程の脳に基づく説明を求める読者は Cognitive Neuroscience: The Biology of the Mind へ、形式的なモデルを求める読者は大学院レベルの Bayesian Models of Cognition へ進むことができる。
本書の使い方
認知心理学を初めて学ぶ学生向けの本である。認知心理学の予備知識は要らず、心理学入門の科目を履修していると助けになるが必須ではない。
実践的な進め方は次のとおり。
- 科目全体では順に読む: まず第1章、次に視覚と注意(第2〜3章)、記憶と知識(第4〜7章)、そして言語(第8章)、思考(第9〜10章)、情動(第11章)。各まとまりを一つの単位として読める。
- 本書の仕掛けを使う: 各章の前に学習目標を読み、後で重要語で自己点検し、研究活動を飛ばさずに行う。
- オンライン資料を使う: フラッシュカードと選択式問題は復習に向き、主要実験のシミュレーションは研究結果がどう得られたかを実感させる。
- 必要に応じて選ぶ: 記憶の科目に備える学生は第4〜7章に集中でき、意思決定に関心のある読者は第1章を軽く読んだあと第9・10章から始められる。
- 次の一歩: 用語が身についたら、より詳しいテキストに進む。
