01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Mearsheimer, J. J. (2014). The Tragedy of Great Power Politics (Updated ed.). W. W. Norton & Company.
章の要約
更新版は約560ページで全10章。初版は2001年に出た。更新版の主な変更は最終章で、2001年版の「21世紀の大国政治」に代わって「中国は平和的に台頭できるか」と改題されている。大まかに言えば、章は理論から、戦略と歴史的事例を経て、戦争の原因へ、さらに現在へと進む。
背景と論旨
本書は、国際関係の理論である攻撃的リアリズムを述べ、擁護する。その前提としてふつう挙げられるのは5つである。国際システムはアナーキーである。大国は攻撃的な軍事能力を持つ。国家は互いの意図を確信できない。生存が国家の第一の目標である。国家は合理的な行為主体である。Mearsheimer はここから、大国は絶えず権力を求め、大国間の協力は難しく、安全だけを求める国家でさえ競争に追い込まれると論じる。これが書名にいう「悲劇」である。出版社は、更新版が21世紀を左右しそうな問い、すなわち中国は平和的に台頭できるかを取り上げ、それはできないと答えるものだと紹介している。
第1章:序論
冒頭の章で、本書の議論を提示する。
第2章:アナーキーと権力闘争
本書の理論的な中心。攻撃的リアリズムの前提を示し、それらがどのように国家を権力の追求へ導くかを論じる。
第3章:富と権力
経済的資源と軍事力の関係を扱う。本書の説明では、経済力が軍事力の基礎であるため、大国は世界の富に占める自らの取り分を最大にしようとする。
第4章:陸上戦力の優位
国家の権力は主としてその陸上戦力にかかっており、大きな水域は軍隊が戦力を投射できる範囲を限定すると論じる。「水の阻止力」は、どの国も世界覇権に到達できない理由として本書が挙げるものである。
第5章:生存のための戦略
国家が生存のために何をするか。大国が権力を得、ライバルに対処する戦略である。本書の説明では、大国の最高の目標は地域覇権であり、地域の覇権国は他国が自らの地域で同じ地位を得るのを阻止しようとする。
第6–7章:行動する大国/オフショア・バランサー
理論から歴史的記録への移行。第6章の題は「行動する大国」で、第7章はオフショア・バランサーを扱う。本書の議論に出てくる例には、ヨーロッパ大陸の外にとどまりつつ、どの国もそれを支配しないよう努めたイギリスと、1900年までに自らの半球で地域覇権に達したアメリカがある。
第8–9章:バランシング対責任転嫁/大国間戦争の原因
第8章は、脅威にさらされた国が侵略者に対応する2つの方法、すなわち直接に均衡をとる(バランシング)か、負担を他国に転嫁するかを比べる。第9章は大国間戦争の原因を扱う。Mearsheimer は、権力の構造、すなわち極性を戦争の原因の1つとみなし、潜在的な覇権国が存在する不均衡な多極状態をもっとも危険な配置とみる。
第10章:中国は平和的に台頭できるか
更新された最終章。理論を中国とアメリカに適用する。出版社はこれを新版の存在理由となる答えとして示す。台頭する中国はアジアの支配を目指し、アメリカはそれを阻止するために大きな努力を払う。
主要概念
第1–5章:理論
- 攻撃的リアリズム:アナーキーが大国に自らの権力を最大化させるという理論。
- アナーキーと不確実性:国家の上に権威はなく、他国の意図を確信できる国はないという前提。
- 地域覇権:大国の最高の目標。大国は、ライバルが他の地域で覇権を得るのも阻止しようとする。
- 陸上戦力の優位と水の阻止力:陸上戦力が決定的であり、海洋がその投射を制約するという主張。
第6–10章:適用
- オフショア・バランサー:遠い地域の外にとどまり、どの国もそこを支配しないよう介入する大国。
- バランシングと責任転嫁:脅威となる国への2つの対応の仕方。
- 極性と戦争:大国間の権力の分布が戦争の危険を左右するという議論。
批判的分析
長所
- 前提を明示した理論。 5つの前提は挙げやすく、検証しやすいので、学生は何から何が導かれるのか、不一致がどこから始まるのかを見て取れる。
- 明快な叙述の順序。 本書は、理論から歴史的事例、戦争の説明、そして現在へと進む。章題のおかげで、責任転嫁のような特定の主張を扱う箇所を見つけやすい。
- 評価。 出版社は、Barry R. Posen が The National Interest で、すぐれた本であり、大国の行動の理解に重要な貢献をしたと述べたことを引いている。John A. Hall は Canadian Journal of Sociology(2003)の書評で、その議論が緊密さと一貫性によって強められていると評した。
- 最新で政策にも関わる結び。 2014年版の最終章は理論を中国の台頭に適用しており、本書を米中関係をめぐる論争の参照点にしている。
短所
- 歴史の使い方。 Charles Kupchan は The International History Review(2003)の書評で、本書を重要で印象的な著作と呼びつつ、Mearsheimer が理論を支えるために歴史を用いる仕方と、折衷主義により開かれた姿勢をとろうとしない点を批判した。
- 持続的な平和の事例。 外交問題評議会(Council on Foreign Relations)が発表した書評は、英米の和解と欧州連合が、破壊的な対立は避けられないという主張に疑問を投げかけると論じた。
- 国内政治の棚上げ。 Mearsheimer は国内政治を無関係とみなす。R. Harrison Wagner は、本書が民主主義、貿易、その他の仕組みが国家間の戦争を防げるかどうかを扱っていないと論じた。
- 戦争の原因。 戦争の交渉モデルを用いる批判者は、極性が戦争を引き起こすという主張に異を唱え、戦争には費用がかかるので、合理的な国家には何か別の原因が必要だと論じる。
コースにおける位置づけ
安全保障研究のリストは教科書、すなわち Contemporary Security Studies と Security Studies: An Introduction、そして International Security: A Very Short Introduction から始まる。そのどれもが、攻撃的リアリズムが1つの立場として位置づけられる論争を紹介している。Mearsheimer の本は、このリストにある3冊の理論書の1冊である。Waltz の Man, the State, and War は、戦争の説明を3つのイメージを軸に整理し、第3のイメージ、すなわち国際システムの構造が他を枠づけると論じる。Mearsheimer の理論も同様に、大国間競争の主な原因を国際システムの構造に求める。
Buzan、Wæver、de Wilde の Security: A New Framework for Analysis は主要な対抗案であり、争点がそもそもどのように安全保障上の問題として扱われるのかを問い、議題を軍事的脅威の外に広げる。一方 Mearsheimer は、焦点を大国と軍事力に保つ。2冊を併せて読むと、安全保障の狭い概念と広い概念をめぐる論争が見えてくる。
本書の使い方
国際関係論と安全保障研究の上級の学部生や大学院生、米中の競争をめぐる論争を追う読者に向く。
実践的な計画は次のとおりである。
- 中核: 理論には第1、2、4、5章、戦争には第9章。
- 歴史的事例: 第6章と第7章。扱われている時代の歴史書とあわせて読み、各事例を第2章に挙げられた前提と照らして確かめる。
- 更新部分: 第10章は最後に読み、その主張を、中国についてのその後の研究や上に挙げた批判と比べる。
- 比較: 攻撃的リアリズムの前提を、Waltz の Theory of International Politics の前提と並べて書き出し、結論がどこで分かれるかを確かめる。
