01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Riley, K. F., & Hobson, M. P. (2011). Foundation Mathematics for the Physical Sciences. Cambridge University Press.
章の要約
本書は15の章と6つの短い付録からなる。各章の末尾には主要な結果のまとめと、ヒントと解答の付いた問題があり、各節の末尾にも短い演習がある。序文は本書を、著者らのより大部な Mathematical Methods for Physics and Engineering の別版と位置づけている。基礎づくりに当たる前半を残し、真に「方法」と呼ぶべき話題は省いたものである。
第1–2章:算術と幾何;初等代数
冒頭の2章は、多くの読者が学校で学んだ内容を扱う。冪、指数関数と対数関数、物理量の次元、二項展開、三角関数の恒等式、不等式に続いて、多項式方程式、座標幾何、部分分数、いくつかの証明法が置かれている。序文によれば、この導入的な内容は読者の出発点に合わせるために加えられた。
第3–4章:微分法;積分法
第3章は微分、ライプニッツの定理、関数の特異な点と曲率、微分に関する定理、グラフの描き方を扱う。第4章は積分の方法、部分積分、漸化(簡約)公式、広義積分、平面極座標での積分、積分不等式、積分の応用を扱う。
第5–6章:複素数と双曲線関数;級数と極限
第5章は複素数が必要な理由から始め、複素数の演算と極形式、ド・モアブルの定理、複素対数と複素冪を経て、双曲線関数で終わる。第6章は級数を扱い、和の計算、収束、級数の演算、冪級数、テイラー級数、極限の評価を含む。
第7–8章:偏微分;多重積分
第7章は多変数関数に進む。全微分、完全微分と不完全微分、連鎖律、変数変換、制約の有無による停留値、包絡線、熱力学の関係式、積分の微分が扱われる。第8章は二重積分とその応用、変数変換を紹介する。
第9–10章:ベクトル代数;行列とベクトル空間
第9章はスカラー積とベクトル積、三重積、直線・平面・球面、距離、相反ベクトルを扱う。第10章は本書で最も長く、ベクトル空間と線形作用素から出発し、行列式、逆行列、階数、連立一次方程式を経て、固有値、対角化、二次形式とエルミート形式、総和規約に至る。
第11–12章:ベクトル解析;線積分・面積分・体積積分
第11章はベクトルの微分、スカラー場とベクトル場、ベクトル演算子、円柱座標と球座標、一般の曲線座標を展開する。第12章は線積分・面積分・体積積分、平面でのグリーンの定理、保存場とポテンシャル、発散定理とストークスの定理を扱う。
第13–15章:ラプラス変換;常微分方程式;初等確率
第13章はラプラス変換、ディラックのデルタ関数、ヘヴィサイドの階段関数を導入する。第14章は1階および高階の線形常微分方程式と線形漸化式を扱う。第15章は確率を初等的に扱い、ベン図や順列・組合せから、代表的な離散分布・連続分布、同時分布までを含む。
付録A–F
付録には、より形式的な展開(自然対数の底、正弦の定義、ライプニッツの定理、総和規約)、物理定数表、そして後述する脚注の問いへの解答が収められている。
主要概念
第1–6章:代数、微積分、複素数、級数
- 物理量の次元:第1章に設けられた、物理量の次元を扱う節。
- 積分の方法:第4章で扱う置換積分、部分積分、漸化公式。
- 複素数:第5章の極表示とド・モアブルの定理。
- テイラー級数と極限:第6章の冪級数の内容。
第7–12章:多変数、行列、ベクトル解析
- 完全微分と不完全微分:第7章の基本的な言葉で、同章には熱力学の関係式の節もある。
- 固有ベクトルと固有値:第10章と、そこから導かれる対角化。
- ベクトル演算子:第11章で定義される勾配、発散、回転。
- 発散定理とストークスの定理:第12章の終わりに置かれた積分定理。
第13–15章:変換、微分方程式、確率
- ラプラス変換:微分方程式を代数の問題に変える方法。
- 定数係数線形常微分方程式:第14章の中心。
- 確率変数と分布:第15章の枠組み。
批判的分析
長所
- 説明を重んじる書き方。 序文によれば、著者らは言葉による説明を増やす方向に改めた。各話題は、できるだけ物理に根ざした定性的な導入、形式的な説明、そして1つか2つの完全な例題という順で進む。
- 問いかける脚注。 300を超える脚注のおよそ半数は、読者への問いや指示になっており、模範解答は付録Fにある。著者はこれを、少人数の演習で教員がその場で投げかける質問の代わりと位置づけている。
- 段階的な練習。 各節に短い演習(合計300以上)、各章末にまとめ、より難しい問題(450以上)が章末にある。奇数番号の問題には略解が本書に載っており、別売の学生用解答集が同じ問題の詳しい解答を与える。
- 入りやすい出発点。 最初の2章で冪、対数、次元、三角関数を復習するため、高校数学に不安がある読者にも足がかりがある。
短所
- 意図的に網羅していない。 序文は、真に「方法」にあたる話題を省いたと述べている。目次にはフーリエ級数、偏微分方程式、特殊関数の章がなく、物理の授業ではもう1冊の数学書が必要になる。
- 「入門」としては長い。 索引は706ページから始まり、構成上、1つの授業で15章すべてを扱うことはない。
- まとめは覚え書き。 序文は、章末のまとめが各結果に付く条件をすべて述べられないと断っている。本文を読んだ後のチェックリストや公式集として使うのがよい。
コースにおける位置づけ
本書は数学的方法の読書リストの出発点にあたる。Boas の Mathematical Methods in the Physical Sciences は、本サイトの紹介では、完全な理論に出会う前に方法を使えるようにする教科書であり、級数、複素数、線形代数、多変数・ベクトル解析、フーリエ法、微分方程式、特殊関数、テンソルを扱う。Riley と Hobson はそれより手前で止まり、高校レベルの基礎と説明に多くの紙面を割いているため、通常は本書を先に読み、その後に Boas か、各技法を物理の問題から動機づける Hassani の Mathematical Methods へ進む。
Schey の Div, Grad, Curl, and All That は、静電気学を軸にした短くくだけた叙述で第11–12章に相当する範囲を単独で扱い、この2章と並べて読める。Arfken、Weber、Harris は学部課程の後に使う参考書・大学院向けの教科書であり、Strogatz の Nonlinear Dynamics and Chaos は汎用の道具箱ではなく、特定分野の教科書である。
本書の使い方
本書は、数学を丁寧に説明してほしい理工系の低学年の学生や、方法論の授業の前に高校数学を復習したい独学者に向く。序文は、大学数学への穏やかな入門として本書を位置づけ、出発点を読者の実際の水準に合わせるとしている。
実践的な進め方は次のとおり。
- 中核: 微積分の力を固めるために第1–4章と第6–7章、ベクトル・行列・ベクトル解析のために第9–12章、常微分方程式のために第14章。高校数学に自信があれば第1–2章は流し読みでよい。
- 必要に応じて: 波や振動を扱う前に第5章、多変数の物理の前に第8章、授業でラプラス変換が出るときに第13章、統計や統計物理の前に第15章。
- 学び方: 脚注の問いは出会った時点で答える。節末の演習は節を読んだ直後に解く。章末問題は復習に回す。奇数番号の解答は本書で確かめ、詳しい解法は学生用解答集を使う。
- 付録: 本文が参照したときに読むか、序文が認めるように、本編に慣れてから後回しにする。
