01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Hassani, S. (2009). Mathematical Methods: For Students of Physics and Related Fields (2nd ed.). Springer.
章の要約
第2版は約830ページ、32の章からなる。出版社によれば「使いやすい短めの章」に再編されており(大半の章は約10ページから40ページ)、初版に比べて確率の新しい扱いが丸ごと加わり、テンソルと積分変換についても新しい内容が加わっている。出版社の概要は、ベクトル代数と微分積分の復習から始まり、続いて無限級数、ベクトル解析、複素代数と複素解析、常微分方程式と偏微分方程式へ進み、数値解析、非線形力学とカオス、ディラックのデルタ関数が現代的な話題への導入になる、という順序を説明している。
第1–5章:座標系とベクトル/微分/積分:形式/積分:応用/ディラックのデルタ関数
冒頭のまとまり(pp. 3–170)は、出版社が言及する座標、ベクトル、微分、積分の復習で、積分は形式を扱う章と応用を扱う章に分かれている。最後はディラックのデルタ関数の章で、初版の書評者は、2次元・3次元の形も含むデルタ関数の扱いを特に優れた点として挙げた。
第6–8章:平面と空間のベクトル/有限次元ベクトル空間/相対論におけるベクトル
ベクトル代数のまとまりである。平面と空間のベクトル、次に有限次元ベクトル空間、そして相対論で用いられるベクトルを扱う。初版の書評は、著者が有限次元ベクトル空間を直交多項式のような関数空間の考え方と意図的に統一しており、そのためフーリエ級数や特殊関数が後で出てくるときに、直交基底をもつ関数空間という概念がすでになじみのものになっていると指摘した。
第9–11章:無限級数/よく使われる級数の応用/関数としての積分と級数
無限級数の収束、よく使われる級数の応用、そして積分と級数による関数の表現を扱う。
第12–17章:ベクトルと微分/流束と発散/線積分と回転/応用ベクトル解析/曲線座標のベクトル解析/テンソル解析
ベクトル解析に続いて、曲線座標とテンソルを扱う。初版の書評は、ベクトル解析の提示の締めくくりにマクスウェル方程式を用いている点を評価した。テンソル解析(pp. 439–474)は、出版社が第2版で拡充されたと挙げる話題の1つである。
第18–21章:複素数の算術/複素微分と複素積分/複素級数/留数の計算
算術から、微分と積分、級数、留数に至る複素解析。477ページから始まり、本のかなり先に位置する。
第22–28章:偏微分方程式から常微分方程式へ/1階微分方程式/2階線形微分方程式/ラプラス方程式:直交座標/ラプラス方程式:球座標/ラプラス方程式:円柱座標/数理物理のその他の偏微分方程式
微分方程式。章題がその順序を示している。偏微分方程式の常微分方程式への還元、1階と2階の常微分方程式、3つの座標系でのラプラス方程式、そして数理物理のその他の方程式である。
第29–32章:積分変換/変分法/非線形力学とカオス/確率論
最後の4つの章はそれぞれ独立した話題である。積分変換、変分法、非線形力学とカオスへの入門、そして確率論で、確率論は第2版の新しい部分である。そのあとに参考文献がある。
主要概念
第1–8章:座標、微積分、デルタ関数、ベクトル
- ディラックのデルタ関数:関数の1点での値を取り出す超関数で、独立した章で扱われる。
- 有限次元ベクトル空間:線形代数と、後の関数空間の考え方の舞台。
- 相対論におけるベクトル:時空の量を表すためのベクトルの用い方。
第9–21章:級数、ベクトル解析、テンソル、複素解析
- 無限級数:無限個の項の和で、その収束と応用が扱われる。
- 流束、発散、線積分、回転:ベクトル解析の中心的な量。
- テンソル解析:複数の添字をもつ量で、この版で拡充された。
- 留数の計算:積分を評価するための複素解析の手法。
第22–32章:微分方程式とさらなる話題
- 座標系ごとのラプラス方程式:直交座標、球座標、円柱座標でそれぞれ別の章がある。
- 積分変換と変分法:第29–30章で展開される手法。
- 非線形力学とカオス:現代的な話題への最後の導入。
- 確率論:第2版の新しい部分。
批判的分析
長所
- 物理と結びついた例。 出版社は、「物理科学からの多くの独創的で明快かつ関連性の高い例」、章末の問題、重要な概念を強調する囲みを挙げている。Albano は Physics Today(2001年6月)で初版を評し、各章が文脈を示す前書きで始まること、物理的な例が定義の動機づけに使われること、人物や考え方についての注が多いことを評価した。
- 初版より広い範囲。 初版の書評は確率、テンソル、積分変換を足りない話題に挙げた。出版社は第2版が確率と、テンソルおよび積分変換についての新しい内容を加えたとしており、目次にはテンソル、積分変換、変分法、確率論の各章がある。
- 現代的な話題。 出版社は、デルタ関数、非線形力学とカオス、数値解析を現代数理物理への導入として挙げている。
- 短めの章。 約10ページから40ページの章への再編により、特定の話題を割り当てやすくなっている。
短所
- 冒頭の復習の章。 Albano は初版の最初の章を、学生がすでに知っているはずの復習内容だとして批判し、著者による誤解の解説がかえって混乱を招く場合があると述べた。出版社によれば第2版も復習から始まるが、その箇所が改訂されたかどうかは記されていない。
- 初版の書評が指摘した文体上の点。 同じ書評者は、脚注と略語が多すぎること、根拠のない一般化があることも指摘した。これらは初版についての指摘であり、入手できた資料から第2版について確認することはできない。
- 複素解析が後ろにある。 複素数の算術は第18章、つまり本のほぼ中ほどまで出てこないので、複素数を早い段階で必要とする授業では章の順序を入れ替えなければならない。出版社が引用する前版についての Zentralblatt MATH の書評も、同じ遅さに触れていた。
- 計算機と数値計算。 Albano は初版に、記号計算や数値計算のための計算機の利用についての議論がないことを惜しんだ。出版社の概要は第2版について数値解析に触れているが、32の章題のどれにもその名前はなく、扱いがあるとしても他の章の中にある。
コースにおける位置づけ
Hassani は中級レベルの学部向け数理手法の教科書で、最も直接に競合するのは Boas の Mathematical Methods in the Physical Sciences である。Albano の書評は、初版を対象読者、進度、扱う分野の点で Boas に最も近いと判断した。違いは順序にある。Boas は、短期間で各分野の基本的な力を養うことを目的としており、複素数を第2章、線形代数を第3章に置くが、Hassani は複素数を第18章まで遅らせ、ベクトル空間を第6–7章に置く。どちらもテンソル、変分法、確率を含み、Boas はフーリエ級数と変換、特殊関数にそれぞれ独立の章を与えている。
準備としては、Riley と Hobson の Foundation Mathematics for the Physical Sciences が学校数学から出発し、Schey の Div, Grad, Curl, and All That は第12–17章の助けとなるベクトル解析への気軽な入口である。Hassani より深く進むには、Arfken、Weber、Harris の Mathematical Methods for Physicists が大学院レベルの参考書であり、Strogatz の Nonlinear Dynamics and Chaos は、第31章の主題を本格的な分量で展開している。
本書の使い方
本書は、入門物理の科目を終えた物理学、工学およびその関連分野の2、3年生のために書かれている。微積分は既習とされるが、第1–5章でそれを復習する。
1学期の数理手法の授業では、第9–11章(級数)、第12–16章(ベクトル解析)、第18–21章(複素解析)、第22–28章(微分方程式)を選ぶのが現実的で、第1–5章は必要に応じて参照するだけにする。第6–7章(ベクトル空間)は早めに読む価値がある。初版の書評によれば、著者はここから直交基底をもつ関数空間の考え方を組み立てている。テンソル(第17章)、積分変換、変分法、カオス、確率は、2学期目や独習に向いた教材である。章末問題を使い、複素数が早く必要な場合は先に第18章を読むとよい。
