01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Shafer-Landau, R. (2023). The Fundamentals of Ethics (6th ed.). Oxford University Press.
章の要約
第6版は、序論(Introduction)と22の章に、用語集、参考文献、章ごとの読書案内、索引が続き、全体で約400ページ(索引は403ページから)である。内容は三つの部に分かれる。善き生、規範倫理学(「正しいことをする」)、メタ倫理学(「道徳の地位」)である。章題と目次のページ番号から見ると、第一部は第1〜4章、第二部は第5〜18章、第三部は第19〜22章にあたる。Google ブックスの記録に示された序文の文章は、三つの部はどの順番で読んでもよいこと、またほとんどの章に本書内の他の議論への相互参照の脚注があることを述べている。以下の説明は、章題と出版社の紹介文に基づく。
序論
短い導入の章。出版社の紹介文は、著者が数十の議論を丁寧に再構成して深く分析し、その水準は哲学の予備知識のない学生にも理解できるものだと述べており、序論はこの方針を提示する。
第一部 善き生(第1〜4章)
- 第1章:Hedonism: Its Powerful Appeal(快楽主義:その強い魅力)。 快楽こそが人生をよいものにするという見解を提示する。
- 第2章:Is Happiness All That Matters?(幸福がすべてなのか)。 幸福だけが福利を構成するのかを検討する。
- 第3章:Getting What You Want(望むものを手に入れる)。 福利の欲求充足説を導入する。出版社は、これを本書が扱う主題として特に挙げている。
- 第4章:Problems for the Desire Theory(欲求説の問題)。 この理論に対する異論へ向かう。
第二部 規範倫理学:正しいことをする(第5〜18章)
- 第5章:Morality and Religion(道徳と宗教)、第6章:Natural Law(自然法)。 道徳と宗教の関係、そして自然法の伝統。本書には「神命説(divine command theory)」という語が繰り返し現れる。
- 第7〜8章:Psychological Egoism(心理的エゴイズム)、Ethical Egoism(倫理的エゴイズム)。 まず人が何に動機づけられるかについての主張、次に人が何をすべきかについての主張。
- 第9〜10章:Consequentialism: Its Nature and Attractions(帰結主義:その本性と魅力)、Consequentialism: Its Difficulties(帰結主義:その困難)。 正しさは結果によって決まるとする理論と、それに対する異論。本書の語彙には行為功利主義や optimific(最善の帰結をもたらす)が含まれる。
- 第11〜12章:The Kantian Perspective: Fairness and Justice(カント的観点:公正と正義)、The Kantian Perspective: Autonomy, Free Will, and Respect(カント的観点:自律・自由意志・尊重)。 カント倫理学を二つの章で扱う。普遍化可能性もそこに含まれる。
- 第13〜14章:The Social Contract Tradition: The Theory and Its Attractions(社会契約の伝統:その理論と魅力)、The Social Contract Tradition: Problems and Prospects(社会契約の伝統:問題と展望)。 契約論的な理論を、ここでも見解を示す章とその困難を論じる章の二つに分けて扱う。
- 第15章:Moral Absolutism(道徳的絶対主義)、第16章:Prima Facie Duties and Ethical Particularism(一応の義務と倫理的個別主義)。 例外を許さない道徳規則があるのかという問いと、出版社が名を挙げるロスの一応の義務の理論、および倫理的個別主義。
- 第17章:Virtue Ethics(徳倫理学)、第18章:Feminist Ethics(フェミニスト倫理学)。 規範倫理学のさらに二つのアプローチで、それぞれ一章が割り当てられている。
第三部 メタ倫理学:道徳の地位(第19〜22章)
- 第19章:Ethical Relativism(倫理的相対主義)。 道徳が文化や個人によって異なるのかどうか。文化相対主義と主観主義が語彙として繰り返し現れる。
- 第20章:Moral Nihilism(道徳的ニヒリズム)。 出版社は、道徳的錯誤説を扱う主題の一つとして挙げており、「error theory」という語は本書に繰り返し現れる。
- 第21章:Ethical Objectivism: The Theory and Its Attractions(倫理的客観主義:その理論と魅力)。 意見から独立に成り立つ道徳的事実があるという主張の根拠。
- 第22章:Is Moral Knowledge Possible? Five Skeptical Arguments(道徳的知識は可能か:五つの懐疑論的議論)。 客観的な道徳が存在するとしても、それは知りうるのかという問い。
主要概念
第一部
- 快楽主義:福利は快楽にあるとする見解。
- 欲求充足説:欲求が満たされる程度に応じて人生がよいものになるとする見解。
第二部
- 帰結主義と行為功利主義:行為は、その帰結が最善であるとき正しいとする見解。
- 普遍化可能性:カント倫理学のテストで、自分の行為の原理を普遍法則として意志できるかを問うもの。
- 一応の義務(prima facie duties):互いに衝突しうる複数の義務についてのロスの考えで、それぞれは、より重い義務に覆されない限り成り立つ。
- 倫理的エゴイズム:各人は自分自身の善だけを追求すべきだとする見解。
- 二重結果の原則と行為と放置の区別:出版社が挙げる主題のうち、より短い概説書がしばしば省く二つの原則。
第三部
- 倫理的相対主義と主観主義:道徳的真理を文化や個人に結びつける見解。
- 錯誤説(error theory):道徳的主張は真であろうとするが、すべて偽であるとする見解。
- 道徳的客観主義:誰がどう考えようと真である道徳的主張があるとする見解。
批判的分析
長所
- 一冊での幅広さ。 出版社は、この種の教科書の中で善き生、規範倫理学、メタ倫理学をより包括的に扱っていると主張している。目次はその規模を示している。善き生に4章、規範倫理学に14章、メタ倫理学に4章である。また出版社によれば、二重結果の原則や行為と放置の区別のように、他の教科書がしばしば省く主題も扱っている。
- 議論を一つずつ検討する方法。 出版社は、著者が数十の議論を深く再構成していると述べる。専門用語は初出のところで定義され用語集にまとめられると序文が述べていることと合わせて、立場を覚えるだけでなく、議論の組み立て方と検証の仕方を学ぶ必要のある学生に適している。
- 柔軟な読む順序。 序文は、三つの部はどの順番で読んでもよいと述べているので、教員は福利、規範理論、メタ倫理学のどれから始めてもよい。
- 理論と異論の組み合わせ。 いくつかの理論には二つの章が割り当てられ、一つはその見解と魅力、もう一つは困難を扱う(帰結主義、カント的観点、社会契約の伝統、欲求説)。これはバランスのとれた評価の手本になる。
- 学習支援。 序文は各章または二章ごとの読書案内を挙げており、出版社は学生向け資料(セルフクイズ、フラッシュカード、拡張版電子書籍)を提供している。
短所
- 分量の不均等。 帰結主義、カント的観点、社会契約の伝統にはそれぞれ二つの章があるが、徳倫理学とフェミニスト倫理学には一章ずつで、後者はより簡潔に扱われている。
- 応用倫理学がない。 目次に応用的な問題を扱う章はないので、それを求める読者は他に当たる必要がある。さらに学ぶためとして、序文は姉妹編の The Ethical Life を挙げている。
- 長さと密度。 22の章と約400ページ、数十の議論を含み、一つの短い授業ですべてを扱うことはできない。教員は章を選ぶ必要がある。
コースにおける位置づけ
シェイファー=ランドーは、倫理学コースにおける体系的な主教材である。ジェームズ・レイチェルズとスチュアート・レイチェルズの The Elements of Moral Philosophy はより入りやすい最初の一冊で、各章は独立して読め、理論とその最も強い論拠、標準的な異論が示される。シェイファー=ランドーは、福利とメタ倫理学にさらに踏み込み、各理論についてより多くの議論を扱う。
ミルの Utilitarianism とカントの Grounding for the Metaphysics of Morals は、帰結主義とカントの章(第9〜12章)に対応する一次文献で、併せて読める。バーナード・ウィリアムズの Ethics and the Limits of Philosophy は体系的な道徳理論への上級の批判であり、批判の対象となる理論をこのような教科書が整理した後に読むのが最もよい。
本書の使い方
本書は、倫理学・道徳理論の授業を受ける学部生を対象としている。用語は登場する箇所で定義されるので、哲学入門の履修は役立つが必須ではない。
実際的な進め方は次のとおりである。
- 出発点を選ぶ。 各部は独立しているので、授業の始まる場所から始めればよい。福利(第一部)、正しい行為(第二部)、道徳の本性(第三部)である。
- 核心: 帰結主義、カント的観点、社会契約の伝統を扱う第9〜14章と、相対主義・ニヒリズム・客観主義を扱う第19〜21章は、本書の論争が最も展開されている箇所である。
- 選択的な読み方: 第5〜8章と第15〜18章は、コースに合わせて個別に割り当てられる。
- 方法を練習する: 各章の後に、主要な議論を番号付きの前提として書き出し、続いて最も強い異論を書く。これが本書の手本とする方法である。
- 用語集、読書案内、学生向け資料を復習に使い、 コースの一次文献を併せて読む。
