01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Rachels, J., & Rachels, S. (2026). The Elements of Moral Philosophy (10th ed.). McGraw Hill.
章の要約
マグロウヒルは本書を、学部の倫理学の授業のための教科書と説明している。13の章が、明快な説明と議論を通して主要な道徳的概念と理論を紹介し、各章は他の章から独立して読めるように書かれている。原著はジェイムズ・レイチェルズが書き、2003年に彼が亡くなってからは息子のスチュアート・レイチェルズが改訂を続けている。現在の版は第10版の「2026年リリース」として販売されている。各章は、道徳とは何かという問いから始まり、客観的な倫理という考えへの挑戦を経て主要な規範理論へと進み、満足のいく理論とはどのようなものかを問う章で締めくくられる。
第1章:道徳とは何か
冒頭の章は、道徳とは何かという基本的な問いを取り上げる。本書全体が最終章でこの問いに立ち返る。
第2〜3章:文化相対主義の挑戦、倫理学における主観主義
二つの章で、倫理が客観的でありうるかについての主な疑いを取り上げる。善悪は文化に相対的だという主張と、道徳判断は個人の態度を表現しているにすぎないという見解である。
第4章:道徳は宗教に依存するか
道徳に宗教的な基礎が必要かどうかを検討する。
第5章:倫理的利己主義
各人は自分自身の利益だけを追求すべきだという理論を扱う。
第6章:社会契約説
道徳を、合理的な人々が相互の利益のために合意するであろう規則として理解する立場を扱う。
第7〜8章:功利主義的アプローチ、功利主義をめぐる論争
功利主義に2章が充てられる。一つ目はそのアプローチを示し、二つ目は功利主義をめぐる論争を成す反論と応答を検討する。
第9〜10章:絶対的な道徳規則はあるか、カントと人格の尊重
第9章は、例外なく成り立つ道徳規則があるかどうかを問う。第10章はカントと人格の尊重という理想に向かう。
第11章:フェミニズムとケアの倫理
倫理学へのフェミニズムのアプローチとケアの倫理を扱う。
第12章:徳倫理学
正しい行為の規則ではなく、人柄と徳を中心とする倫理学を扱う。
第13章:満足のいく道徳理論とはどのようなものか
最終章は、満足のいく道徳理論が何を含まなければならないかを問うことで、議論の糸をまとめる。
主要概念
第1〜4章:道徳とそれへの挑戦
- 文化相対主義:道徳的な善悪は自分の文化の基準によって決まるという見解。
- 倫理的主観主義:道徳判断は個人の感情を表現する、あるいは報告するものだという見解。
- 道徳と宗教:道徳的真理が神や宗教的権威に依存するかどうか。
第5〜8章:利己主義、契約、功利
- 倫理的利己主義:人は自分の利益になるようにのみ行為すべきだという理論。
- 社会契約説:道徳規則を、合理的な人々が相互の利益のために受け入れるであろう規則とみなす理論。
- 功利主義:正しい行為とは全体として最善の結果を生む行為だという理論。
第9〜13章:カント、ケア、徳
- 絶対的な道徳規則:いかなる例外もなく成り立つ規則。第9章の問いである。
- 人格の尊重:人々をそれ自体として目的として扱うというカント的な理想。第10章のテーマである。
- ケアの倫理:関係とケアに道徳的な重みを与えるフェミニズムのアプローチ。
- 徳倫理学:規則ではなく、善い人柄を中心とする倫理学。
批判的分析
長所
- 短く自己完結した章。 出版社は、各章が独立して読めることを強調している。そのため教員は任意の順序で章を指定し、一次文献と組み合わせることができる。13章という分量は1学期に無理なく収まる。
- 明快で専門用語が少ない。 出版社の著者紹介は、ジェイムズ・レイチェルズが「専門用語や雑多なものが驚くほど少ない」文章で称賛されていると述べている。また、理性によって困難な道徳的問題を解決できるという彼の信念にも触れており、この姿勢が本書の論証的なアプローチを形づくっている。
- 主要理論をバランスよく扱う。 目次には、功利主義、カント倫理学、徳倫理学というおなじみの三つに加え、社会契約説、倫理的利己主義、フェミニズムとケアの倫理が含まれている。初めの章では、初学者がよく持ち出す相対主義、主観主義、宗教からの挑戦も取り上げている。
- 長い改訂の歴史。 本書は10版を重ね、2003年以降はスチュアート・レイチェルズが改訂している。出版社は、読み物を補える姉妹編のアンソロジー The Right Thing to Do も挙げている。
短所
- 入門的な深さにとどまる。 各理論には短い1〜2章しか充てられていないので、本書は立場と標準的な反論を紹介するが、より詳しい教科書が行うような議論の綿密な再構成はしない。
- 冒頭の挑戦以外のメタ倫理学が少ない。 相対主義と主観主義の章を除けば、目次には道徳的実在論、錯誤理論、道徳的知識についての章はない。
- 応用倫理学の章がない。 目次は理論ごとに構成されており、個別の道徳的問題に充てた章はない。応用倫理学の授業には別の読本が必要になる。
- 結論としての一つの提案。 最終章は満足のいく理論とはどのようなものかを問う。読者は著者たちの答えを、概観の確定した結論ではなく、数ある提案の一つとして扱うべきである。
コースにおける位置づけ
倫理学のコースにおいて、レイチェルズは最も短く取り組みやすい概説書であり、最初のテキストとして自然な選択である。ラス・シェーファー=ランドーの The Fundamentals of Ethics は同様の範囲をより詳しく扱い、議論を一歩ずつ再構成している。二重結果の原理、すること/許すことの区別、道徳的錯誤理論といった話題も加えているので、より深さを求める授業や、レイチェルズの後に進む学生に向いている。
書目にある一次文献は、理論の章と自然に組み合わせられる。ミルの Utilitarianism(シャー編)は第7〜8章と、カントの Grounding for the Metaphysics of Morals は第9〜10章と一緒に読むとよい。バーナード・ウィリアムズの Ethics and the Limits of Philosophy は、功利主義やカント主義のような体系的理論の野心に疑問を投げかける。学生がレイチェルズの紹介する理論を身につけた後の、歯ごたえのある対抗軸となる。
本書の使い方
哲学の予備知識は必要ない。本書全体が取り組む問いを示しているので、まず第1章を読むこと。その後は、シラバスの順序に合わせて章を読んでよい。わかりやすい順序の一つは、倫理への挑戦を扱う第2〜4章、次に第5〜12章の諸理論、最後に第13章という流れである。
理論を扱う各章について、その理論を一文で書き、それを支持する最も強い議論と最も深刻な反論を書き留め、自分で考えた事例で試してみるとよい。可能なら各理論をその一次文献と組み合わせること。ミルとカントはどちらもコースの書目にあり、姉妹編のアンソロジー The Right Thing to Do もさらに読み物を提供している。各章は短いので、二度読むとよい。授業の前に概要をつかむために一度、授業の後に議論がどうつながっているかを確かめるためにもう一度である。
