01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Heil, J. (2026). Philosophy of Mind: A Contemporary Introduction (5th ed.). Routledge.
章の要約
第 5 版は十四章からなり、Routledge によれば 352 ページで白黒の図版 36 点を含む(Google Books は 324 ページとする)。Routledge の「現代哲学入門」シリーズに属する。出版社は、各章の末尾に章のまとめと五つの討論課題が付くようになり、推薦図書と参考文献も更新されたと述べている。以下の要約は、章題と、本書が扱う問題や「主義」を挙げた出版社の紹介文に基づく。目次には章内の節は載っていない。
第 1 章:序論
冒頭の章はこの分野を紹介する。心身問題は出版社の話題一覧の筆頭である。
第 2–3 章:デカルト的二元論/デカルトの遺産
二つの章はデカルトから始まる。前者はデカルト的二元論を、後者はその遺産、すなわちそこから生じる問題や立場を扱う。第 4 版の紹介文によれば、第 3 章には E. J. Lowe の「非デカルト的二元論」の議論が含まれる。
第 4 章:心と行動
出版社が挙げる「主義」のうち、行動主義がこの章の内容である。
第 5–6 章:同一説/機能主義
続いて、二十世紀のもっともよく知られた二つの理論、同一説と機能主義が来る。どちらも出版社の一覧にある。
第 7–8 章:心の表象理論/人工知能
表象理論は、出版社の言う「思考の計算モデル」と結びつく。第 8 章の人工知能は第 5 版で新たに加わったもので、デイヴィドソンの根源的解釈を扱っていた以前の章に代わるものである。
第 9 章:志向的態度
章題が指すのは、信念や欲求を帰属することで行動を説明するダニエル・デネットの取り組みである。目次は、この章についてこれ以上の詳細を示していない。
第 10 章:消去主義、外在主義、拡張された心
この章は第 5 版で改訂された。出版社によれば、消去主義に加えて、内容外在主義と拡張された心についての新しい節が含まれる。
第 11–12 章:非還元的物理主義/意識
第 11 章は非還元的物理主義を、第 12 章は意識を扱う。この二つは心的内容をめぐる諸理論のあとに置かれており、意識とは何かという問いは、本書の後半になって現れる。
第 13–14 章:創発と汎心論/自然のなかでの心の位置
第 13 章は創発と汎心論を扱い、どちらも出版社の挙げる「主義」に含まれる。第 14 章は結びの章である。前の版の紹介文は、最終章がそれまでの内容をまとめ、自然のなかでの心の位置についての説明を素描すると述べている。
主要概念
第 1–6 章
- 心身問題:心的なものと物理的なものがどう関係するかという問題。出版社の話題一覧の筆頭。
- デカルト的二元論:心と身体は別の種類の実体だとする見解(第 2–3 章)。
- 行動主義:心的状態は行動と結びついているとする見解(第 4 章)。
- 同一説:心的状態は脳の状態と同一だとする見解(第 5 章)。
- 機能主義:心的状態はそれが果たす働きによって定義されるとする見解(第 6 章)。
第 7–10 章
- 心の表象理論:思考を計算と表象の観点から理解する立場(第 7 章)。
- 人工知能:機械と心を扱う新しい章(第 8 章)。
- 志向的態度:信念や欲求を帰属することで行動を説明すること(第 9 章)。
- 消去主義、内容外在主義、拡張された心:第 10 章の話題。
第 11–14 章
- 非還元的物理主義:心的なものを物理的なものへ還元しない物理主義の立場(第 11 章)。
- 意識:第 12 章の話題。
- 創発と汎心論:本書の後半で取り上げられる二つの見解(第 13 章)。
批判的分析
長所
- 立場の幅広さ。 出版社は、行動主義、二元論、消去主義、創発説、機能主義、唯物論、中立一元論、汎心論を挙げており、十四の章題も、古典的な理論から、拡張された心、人工知能、汎心論といった新しい見解までを追っていることを裏づけている。
- 教育上の工夫。 第 5 版では、各章末に章のまとめと五つの討論課題が加わり、出版社は推薦図書が更新されたとも述べている。独習する読者にとって、まとめは各章の主な主張を手早く確かめる助けになる。
- 形而上学的な方向づけ。 出版社は、本書の目的を、明快で魅力的で「形而上学に根ざした」入門と説明している。以前の版の紹介文も、形式的な道具立てや専門用語を使わない議論と説明を強調しており、技術的な背景のない読者に合っている。
- 評価。 出版社のページには、前の版に対する Henry Taylor の書評が引用され、本書を幅広く、わかりやすく、「読んで楽しい」と評し、上級の学部生、大学院生、専門家に勧めている。これは出版社が選んだ抜粋である。
短所
- 今回の版で改訂が大きい。 出版社によれば、前の版のデイヴィドソンの章は人工知能の章に置き換えられ、ほかの章も改訂され、「あまり関連しない材料」が削られた。版をまたいで読む人は目次を確認するとよい。
- 心の科学ではなく形而上学に偏る。 出版社は本書が形而上学に根ざしていることを強調しており、目次には心理学や神経科学そのものを扱う章がない。
- 想定される読者。 出版社は哲学専攻の学生やその他の上級の学部生を想定している。哲学の素養がなくても読める最初の一冊を探す読者には、下に挙げる、より短い入門書のほうが合うかもしれない。
コースにおける位置づけ
Heil の教科書は、広い範囲の理論を扱い、形而上学的な方向づけをはっきり持つ入門書である。Ian Ravenscroft の Philosophy of Mind: A Beginner's Guide と Amy Kind の Philosophy of Mind: The Basics は、より穏やかな最初の本である。Ravenscroft は二元論から機能主義、消去主義までの主な理論を段階的に説明し、Kind は簡潔な入門で、各章を要約と推薦図書で締めくくる。Jaegwon Kim の Philosophy of Mind は、このコースで最も近い比較対象であり、心身問題を軸に組み立てられた厳密な教科書である。その章題は、心を何とみなすか(非物質的実体、行動、脳、計算機械、因果システム)に沿って並び、そのあとで心的因果、心的内容、意識へ進む。Heil の一覧は、新しい話題の点でより幅広い。
さらに読む場合、非還元的物理主義を扱う Heil の第 11 章は、この立場では心的性質がどのように因果的な違いを生むかを説明できないと論じる Kim の Mind in a Physical World へつながる。意識と汎心論を扱う第 12・13 章は、意識は還元的に説明できないと論じ、自然主義的二元論を擁護する David Chalmers の The Conscious Mind へつながる。
本書の使い方
出版社は本書を哲学専攻の学生やその他の上級の学部生に向けたものとし、読了後には、この分野の中心的な問題をしっかり把握し、次に何を読めばよいかがわかると述べている。哲学入門の科目を一つ終えていると助けになる。
一学期の授業で使う場合は、章を順に読む。デカルト的二元論から行動主義、同一説、機能主義へという流れが、後の章で使われる語彙を整えるからである。標準的な理論の基礎を固めたい読者にとって、第 2–6 章が核心である。第 7–10 章は、表象、人工知能、志向的態度、外在主義をめぐるひとまとまりとして読める。第 11–14 章は物理主義の問題と意識に戻り、自然のなかでの心の位置を扱う章で終わる。この章は前の版ではそれまでの内容をまとめていた。
各章末の五つの討論課題をゼミの準備に使い、推薦図書で原典に当たる。人工知能や拡張された心に特別な関心がある読者は、第 6 章のあと、第 8 章と第 10 章へ直接進んでもよい。
