01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Kind, A. (2020). Philosophy of Mind: The Basics. Routledge. The Basics series.
章の要約
本書は短く、各章およそ20〜28ページの全6章のあとに、用語集、文献表、索引が続く。どの章も「結びの要約」または「結びの所見」と読書案内で終わる。前半4章は心についての古典的な理論を扱い、後半2章は動物、機械、テクノロジーへと話題を移す。
第1章:心と心性
導入の章。心の哲学とは何かを問い、心的生活の目録を作り(出版社の紹介文は、意識・思考・情動を中心的な主題として挙げている)、哲学者が心をどのように研究するかを説明し、心の理論を大まかに概観したうえで、本書の残りを予告する。
第2章:二元論
心と身体は別種のものだとするデカルト的二元論から始め、続いて現代版の二元論に進む。こうして二元論は、歴史上の立場としてだけでなく、いまも検討に値する選択肢として提示される。
第3章:物理主義
理論を扱う章のなかで最も長い。物理主義を支持する一般的な動機を示し、そのさまざまなバージョンを区別したうえで、どのバージョンにも共通する一般的な問題を検討する。
第4章:機能主義
機能主義をその起源までさかのぼってから定式化する。続いて、機能主義を支持する考慮と機能主義が直面する問題とを比較検討する。二元論や物理主義と同じく、解説のあとに評価が来るという型に従っている。
第5章:機械の心
本書は理論から、どのような存在が心をもつのかという問いへと向きを変える。まず動物の心性を取り上げ、続いて人工システムについて二つの問いを分けて立てる。機械は考えることができるのか、そして機械は感じることができるのか。
第6章:心の未来
最終章は、テクノロジーが心をどう変えうるかを考える。心の拡張、心のアップロード、心の融合を順に扱い、最後の融合について、現実の事例はあるのかを問う節で終わる。
主要概念
第1章:心と心性
- 心的生活の目録:思考、感覚、情動など、どの心の理論も説明しなければならない心的状態の種類を見渡すこと。
- 心の理論:本書でいう、心とは何か、心は物理的世界とどう関係するのかについての哲学的説明。二元論、物理主義、機能主義がその主な系統である。
第2〜4章:二元論、物理主義、機能主義
- デカルト的二元論:デカルトに由来する、心は身体とは異なる非物理的なものだという見解。
- 現代の二元論:今日のかたちの二元論。独立した節で扱われる。
- 物理主義:心的なものは究極的には物理的だという見解。章では、その一般的な動機、さまざまなバージョン、それらに共通する問題が区別される。
- 機能主義:心的状態は、何でできているかではなく、どのような役割を果たすかによって定義されるという見解。
第5〜6章:機械の心、心の未来
- 動物の心性:人間以外のどの動物が心をもつのかという問い。機械について問うための出発点となる。
- 機械の思考と機械の感覚:人工システムが考えうるかという問いと、感情をもちうるかという問い。本書はこの二つを区別している。
- 心の拡張・アップロード・融合:テクノロジーが心を変えたり移したりしうる三つの道筋。最終章でそれぞれに節が当てられている。
批判的分析
長所
- 最初の出会いのために作られている。 出版社は本書を、主要用語の用語集と読書案内を備えた簡潔な入門書として紹介しており、目次もそれを裏づける。どの章も要約と文献リストで終わる。Diversity Reading Listの項目は難易度を「やさしい」とし、哲学専攻でない学生を含む学部1年生に勧めている。出版社が掲載するBence Nanayの推薦文は、中核となる考えを過度に単純化することなく、学部生はもちろん高校生にも明快で読みやすいと評している。
- 公平な構成。 理論を扱う各章は、ある見解の動機や起源から、それを支持する論拠、それに対する問題へと同じ流れをたどる。このため立場どうしを比較しやすく、どの理論も決着済みとしては示されていないことがわかる。
- 新しい話題をカバーしている。 全6章のうち2章が、短い入門書ではしばしば省かれる問い、すなわち動物の心、機械が考えたり感じたりできるか、心の拡張・アップロード・融合といった思弁的な問いに当てられている。そのため、人工知能や認知科学からこの分野に入ってくる学生にとって自然な入口になる。
- 専門家による執筆。 Amy KindはRoutledgeの『心の哲学の歴史』のうち20〜21世紀の巻を編集し、人格の同一性の入門書も書いている。短さは専門性の浅さではなく、意図的な選択である。
短所
- 深さより広さ。 本文およそ150ページに6章が収められており、一つの理論に割かれるのはおよそ20〜28ページの1章である。物理主義への賛否の詳しい議論や、心的因果の持続的な扱いを必要とする学生は、より長い教科書が必要になる。
- 古典的な話題のいくつかは独立した章になっていない。 目次には、行動主義、同一説、志向性、他我問題そのものに当てられた章や節はない。これらが登場する場合も、二元論・物理主義・機能主義の章のなかに組み込まれている。出版社は意識を中心的な関心事として挙げているが、意識だけを扱う章はない。
- 最終章は意図的に思弁的である。 心のアップロードや融合は決着した論争ではなく開かれた問いなので、第6章は標準的な理論についての試験対策よりも、議論の材料として使うのに向いている。
コースにおける位置づけ
このコースでは、Kindの本は最も短い入口である。Ian Ravenscroftの『Philosophy of Mind: A Beginner's Guide』と同じ三つの理論系統を扱うが、Ravenscroftは主要な理論を明快な段階を踏んで説明したのち、意識や、心的状態がどのようにして世界の事物についてのものでありうるかといった横断的な問題に進む。そうした問題をより詳しく扱ってほしい学生にはRavenscroftが、手早く全体像をつかみたい学生や、動物・機械・テクノロジーをめぐる問いに関心のある学生にはKindが向いている。
Kindのあとは、二冊の本格的な教科書に進むのが自然である。John Heilの『Philosophy of Mind: A Contemporary Introduction』はデカルト的二元論から現代の見解までを概観し、最新版では人工知能の章が加わり、Heil自身の立場も擁護される。Jaegwon Kimの『Philosophy of Mind』は心の形而上学についてのより厳密な教科書で、心的なもののどれだけが物理的世界に収まるのかを問うて終わる。Kimの『Mind in a Physical World』とDavid Chalmersの『The Conscious Mind』は、それぞれ心的因果と意識について特定の立場を擁護する研究書である。Kindの物理主義と二元論の章は、それらを読み始めるのに必要な背景を与える。
本書の使い方
本書は哲学の予備知識を前提とせず、学部1年生、心理学・コンピュータ科学・認知科学の学生、一般読者に向いている。分量からいって、1〜2週間で読み通せる。
実践的な読書計画は次のとおり。
- 中核: 第1〜4章を順に読む。第1章の理論の概観が残りの章の地図となり、続く3章は互いを土台にしている。
- AIに関心のある読者: 第4章のあとに第5章を読む。機械が考えうるかという問いは、心はそれが何をするかによって定義されるという機能主義の考えと密接に結びついているからである。
- 議論のために: 第6章は最後に読み、中核の内容としてではなく、ゼミやレポートの題材として使うのがよい。
- 併用: 読みながら用語集を参照し、各章末の文献リストから理論ごとに一つか二つの一次文献を選ぶとよい。一つの理論についてレポートを書くなら、該当する章を読んだあとでHeilやKimの対応する章に進むとよい。
各理論の章を読み終えたら、結びの要約を読む前に、その見解を支持する最も強い論拠と、それに対する最も強い問題を書き出し、そのうえで要約とノートを照らし合わせる練習が役に立つ。
