01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Carter, N. (2009). Visual Group Theory. Mathematical Association of America (Classroom Resource Materials, vol. 32). Reissued by the American Mathematical Society, 2021.
章の要約
本書は約300ページ、10章からなり、冒頭に短い概観、巻末に選ばれた演習の解答がある。著者によれば図版は300点を超え、平均して1ページに1点以上ある。主な道具はケイリー図式で、乗積表、対称性をもつ物体、巡回グラフ、ハッセ図、作用の図、準同型の図がそれを補う。各章は演習で終わり、概観によれば各章の演習には無限群に関するものも含まれる。
第1章:群とは何か
有名なおもちゃから出発して立方体パズルを考察し、対称性の研究を紹介し、群の規則を示す。ここで群は、演算をもつ集合としてではなく、作用の集まりとして定義される。
第2章:群はどのように見えるか
地図づくり、あまり有名でない二つ目のおもちゃ、群の地図化を経て、本書の中心的な視覚的手段であるケイリー図式に到達する。最後の節では考え方を「少しだけ抽象的に」する。
第3章:なぜ群を学ぶのか
対称性の群、作用の群、そしてさまざまな場面に現れる群の例(「いたるところにある群」)を通じて動機づけを行う。
第4章:ついに代数
代数はここで初めて登場する。作用はどこへ行ったのかという問いの後、元の結合と乗積表を扱い、演算をもつ集合としての群の古典的な定義に到達する。
第5章:五つの族
巡回群、アーベル群、二面体群、対称群と交代群を概観する。著者はこの章を、有限群に幅広く触れるもので役には立つが、5.2節のアーベル群の定義を除けば後の章に厳密には必要ないと説明している。
第6章:部分群
乗積表をケイリー図式に結びつけた後、図式の中で部分群をどのように見て取り、浮かび上がらせるかを示す。さらに剰余類とラグランジュの定理へ進む。
第7章:積と商
直積と半直積、正規部分群と商群、正規化群と共役。
第8章:準同型の力
埋め込みと商写像から準同型定理(Fundamental Homomorphism Theorem)へ進む。それを剰余算、直積と互いに素な数、アーベル群の基本定理に応用し、半直積を改めて取り上げる。
第9章:シロー理論
群作用、シローの定理への足がかりとしてのコーシーの定理、p群、シローの定理。
第10章:ガロア理論
多項式方程式を解くという「大きな問い」から出発し、体の拡大を視覚化し、既約多項式とガロア群を論じて「ガロア理論の核心」に至る。章は可解でないことで終わる。概観は、五次方程式の非可解性をこの章の焦点かつ終着点としている。体への入門を含むが、いくつかの定理は証明なしに述べられる。
主要概念
第1〜4章:作用としての群から代数としての群へ
- 作用の集まりとしての群:パズルと対称性から組み立てられる、本書の出発点となる定義。
- ケイリー図式:頂点が元を表し、矢印が生成元の効果を示す群の図。
- 乗積表:有限群の演算表。ケイリー図式と結びつけられる。
- 古典的な定義:群の公理を満たす二項演算をもつ集合としての群。第4章で到達する。
第5〜6章:族と部分群
- 五つの族:巡回群、アーベル群、二面体群、対称群、交代群。
- 剰余類とラグランジュの定理:部分群が群をどのように分割するか、そしてなぜ部分群の位数が群の位数を割り切るのか。
第7〜8章:積、商、準同型
- 直積と半直積:小さな群から大きな群を組み立てる方法。
- 正規部分群と商:剰余類をつぶしたものが群になるのはどのような場合か。
- 準同型定理:準同型、その核、その像の関係。
- アーベル群の基本定理:(有限)アーベル群の構造定理。
第9〜10章:シロー理論とガロア理論
- 群作用とコーシーの定理:シローの定理に近づくための道具。
- シローの定理:素数べき位数の部分群についての結果。
- ガロア群:体の拡大の対称性の群。多項式方程式を群の構造に結びつける。
- 五次方程式の非可解性:本書を締めくくる結果。
批判的分析
長所
- 最初のページから視覚的。 300点を超える図版により、本書は他の代数の教科書にはあまり見られないほど図に依拠している。著者は、ケイリー図式が群の構造を明快かつ忠実に表すので中心に据えたと説明している。
- 通常の順序を意図的に逆転させている。 多くの教科書は群を演算をもつ集合として定義し、ケイリーの定理を後で証明する。Carter は第1章で群を作用の集まりとして定義し、古典的な定義には第4章で到達する。公理の動機がつかめない学生は、先に例に出会うことができる。
- 標準的な授業内容をカバーする。 出版社は本書を、学部の典型的な群論の授業内容をカバーするものと説明している。目次もそれを裏づけ、部分群とラグランジュの定理から、商、準同型、アーベル群の基本定理を経てシロー理論に至り、さらにガロア理論の章が加わる。米国数学協会(MAA)は2012年に本書にベッケンバック賞を授与した。
- ソフトウェアの伴走。 多くの図版は著者の無料ソフトウェア Group Explorer で作られており、それを使った探究がいくつかの演習の助けになる。ソフトウェアを必須とする演習はわずかである。
短所
- 網羅的ではなく、証明の練習は少ない。 序文によれば、本書の狙いは群論を網羅することではなく、読者に群を「知る」ことを教えることである。伝統的な教科書は、予想を立てて証明する訓練を学生に課す。証明中心の授業を受ける学生は、標準的な教科書を併用する必要がある。
- 群だけを扱う。 第10章の体への入門(いくつかの定理は証明なしで述べられる)を除けば、環や体などの構造は範囲外である。
- 主に有限群。 著者は、図にしやすく直観を育てやすいという理由で有限群に焦点を当てている。最もよく現れる無限群は扱われるが、主に無限群に関心のある読者には物足りない。
- ソフトウェアの所在が変わった。 序文は Group Explorer の SourceForge のアドレスを示しているが、現行版(3.0)は著者の GitHub ページで公開されているウェブアプリケーションである。
コースにおける位置づけ
Carter の本は、このコースの群論への視覚的な入口である。まだ抽象代数を学んでいない学生や、最初の授業を受けていて定義を思い描けずに苦労している学生に向いている。Charles Pinter の A Book of Abstract Algebra と Thomas Judson の Abstract Algebra: Theory and Applications は、群に加えて環と体も扱う、従来の定義・定理・証明の流儀による本格的な入門教科書である。Carter はそのどちらかの前に読んでもよいし、それらの群論の章と章ごとに並行して読んでもよい。
Joseph Gallian の Contemporary Abstract Algebra と Peter Cameron の Introduction to Algebra はより充実した授業用教科書であり、剰余類、商、準同型の理解に Carter の図が役立つ。R. B. J. T. Allenby の Rings, Fields and Groups は、後で読むより手ごわい扱いである。これらのどれも Carter の図の代わりにはならず、Carter もそれらの証明と演習の代わりにはならない。最も効果的なのは組み合わせて使うことである。
本書の使い方
序文は、群論の最初の授業を始める学生(教科書の代わりとしても補助としても)と、概観を求める気軽な読者に向けて書かれている。前提は高校数学だけで、それに分析的に考える意欲があればよい。
- 順に読む。 概観によれば構成は直線的で、後の節はたいてい前の節に依存する。例外は二つある。第5章の大部分は、5.2節のアーベル群の定義を除いて飛ばし、後で戻ってよい。第10章が第9章に依存するのはコーシーの定理(9.2節)だけで、これは10.7節で使われる。
- 群論の授業のための中心的な道筋: 第1〜4章、続いて部分群と剰余類、積と商、準同型を扱う第6〜8章。シロー理論には第9章が中心となる。第10章は群論で何ができるかを示す発展である。
- 図を自分で描く。 ケイリー図式を描き直し、無料のウェブアプリケーション Group Explorer を使って各章の群を実験してみる。
- 演習を解き、付録で選ばれた解答を確かめる。 その後、同じ話題について標準的な教科書で証明を書く練習をする。
