01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Pinter, C. C. (2010). A Book of Abstract Algebra (2nd ed.). Dover Publications. Unabridged republication of the second edition (McGraw-Hill, 1990); first edition 1982.
章の要約
全33章はいずれも短く、一つの中心的な考え方をめぐる語りかけ調の本文と、それに続く長い演習問題セットから成ります。目次で斜体になっている話題は、演習問題の中でのみ扱われます。
第1章:なぜ抽象代数学なのか?
歴史的な導入の章で、代数学の歴史、新しい代数、代数的構造、公理と公理的代数、そして抽象化を取り上げます。序文によれば、本書は「5次方程式は冪根で解けない」ことを示すという約束から始まり、第33章でその約束を果たします。
第2〜5章:演算/群の定義/群の基本的性質/部分群
演算とその性質から出発して群(有限群と無限群、アーベル群と非アーベル群、群表)を導入し、その基本的性質、部分群、生成元と基本関係へと進みます。演習問題では最尤復号、直積、ケイリー図、群の中心、群符号が加わります。
第6〜8章:関数/置換群/有限集合の置換
置換群の直前に単射・全射・全単射の関数が復習されます(演習では有限状態機械とオートマトン)。続いて対称群と二面体群が扱われ、演習には人類学への応用があります。さらに巡回置換、互換、偶置換と奇置換、交代群へと進みます。
第9〜11章:同型/群の元の位数/巡回群
同型な群と同型でない群、ケイリーの定理、(演習で)自己同型を扱い、続いて元の累乗、指数法則、元の位数、巡回群とその部分群を学びます。
第12〜13章:分割と同値関係/剰余類の数え上げ
同値関係がラグランジュの定理とその帰結への準備となります。演習では位数10以下の群の概観、共役な元、群の作用を扱います。
第14〜16章:準同型/商群/準同型定理
準同型、正規部分群、核から商群と準同型定理(基本準同型定理)へ進みます。演習問題はさらに先まで扱い、類等式、同型定理と対応定理、コーシーの定理とシローの定理、有限アーベル群の分解に及びます。
第17〜23章:環:定義と基本的性質/イデアルと準同型/剰余環/整域/整数/素因数分解/数論の初歩(選択)
環、整域、体から始め、イデアル、剰余環、素イデアルと極大イデアル、標数、有限体、商体を扱います。整数は順序整域として特徴づけられ、一意的素因数分解へと至ります。選択章の第23章では合同式、フェルマーとオイラーの定理、中国剰余定理を扱います。
第24〜26章:多項式環/多項式の因数分解/多項式への代入
多項式環、体上の割り算、既約多項式と F[x] における一意分解を扱い、続いて根と因数、ℚ 上および実数上の多項式、アイゼンシュタインの判定法、補間を学びます。
第27〜30章:体の拡大/ベクトル空間/体の拡大次数/定規とコンパス
代数的元と超越的元、最小多項式を導入し、拡大次数を定義するために線形代数(一次独立、基底、次元、線形写像)を短い章で扱います。そのうえで単拡大と逐次拡大、作図可能な数と作図不可能性を論じます。
第31〜33章:ガロア理論:序/ガロア理論:核心/冪根による方程式の解法
重根、根体、拡大体の同型を準備し、体の自己同型、ガロア群、ガロア対応と基本定理を扱います。最後に冪根拡大と可解群を用いて、5次方程式の非可解性を示して終わります。
付録A〜C:集合論の復習/整数の復習/数学的帰納法の復習
第2版で追加された短い復習で、それぞれに演習問題が付いており、準備事項から授業を始めたい場合に使えます。巻末には一部の演習の解答があります。
主要概念
第1〜13章:群
- 群:結合的な演算、単位元、逆元を持つ集合。演算が可換ならアーベル群。
- 巡回置換分解:有限集合の任意の置換は互いに素な巡回置換の積で表され、偶置換か奇置換のどちらかである。
- 同型:演算を保つ全単射。ケイリーの定理は、任意の群が置換群と同型であることを示す。
- ラグランジュの定理:有限群の部分群の位数は群の位数を割り切る。
第14〜16章:準同型と商群
- 正規部分群と核:準同型の核は常に正規部分群である。
- 準同型定理:準同型の像は、定義域を核で割った商群と同型である。
第17〜26章:環、整数、多項式
- 整域と体:零因子を持たない単位元付き可換環と、0でないすべての元が可逆なもの。
- 素イデアルと極大イデアル:剰余環がそれぞれ整域、体となるイデアル。
- 既約多項式:与えられた体の上で、より低い次数の多項式の積に分解できない多項式。
第27〜33章:体とガロア理論
- 拡大次数:大きい体を小さい体上のベクトル空間とみたときの次元。定規とコンパスによる作図のいくつかが不可能である理由を説明する。
- ガロア群:基礎体を固定する拡大体の自己同型の群。基本定理によって中間体と対応づけられる。
- 可解群:冪根による可解性に対応する、群の側の条件。
批判的分析
長所
- 形式より先に動機づけ。 序文によれば、本書は定義・定理・証明・系の繰り返しを避け、学生との対話の形で書かれており、概念をその起源と身近な直観にさかのぼって説明します。証明が数行を超えることはまれです。
- 必要なときに必要な予備知識。 置換群の直前に関数が、ラグランジュの定理の直前に同値関係が復習され、付録A〜Cで集合、整数、帰納法が復習されるため、別に準備講座を受けていなくても学べます。
- 演習問題が本書の中心。 Allen Stenger による MAA Reviews の書評は、紙幅の半分以上が問題の系列に充てられていると指摘しています。題名の付いた演習セットは計算から短い証明へ、さらに新しい結果を証明するセットへと進み、シローの定理、平方剰余、代数的閉包といった発展的な内容にまで届くため、力のある学生はさらに先へ進めます。
- はっきりした到達点。 多項式、体の拡大、作図の各章はいずれも5次方程式の非可解性へとつながっており、後半の章の目的が見えやすくなっています。
短所
- 多くの理論が演習の中にしかない。 同型定理、対応定理、コーシーの定理とシローの定理、有限アーベル群の構造は演習セットの中でしか扱われません。演習をあまり課さない授業では、これらが抜け落ちます。
- 解答の手助けが限られる。 解答があるのは # の付いた演習だけで、序文はそれを部分的な解答や決め手となるヒントと説明しています。
- 標準的で固定された範囲。 Stenger は題材の選び方と扱いを非常に標準的だと評しており、Dover 版は1990年版をそのまま再刊したものです。一意分解は ℤ と F[x] についてのみ扱われ、一般の整域は扱われません。加群などの発展的な話題もありません。
- 応用は周辺的。 第2版の序文は、応用(主に符号理論とオートマトン理論)は演習の部分にのみ加えたもので、省略してもよいと述べています。
本書で扱う応用
応用は演習セットの中にのみ現れます。最尤復号(第3章)、群符号とハミング符号(第5章)、有限状態機械とオートマトン(第6章)、人類学における置換群(第7章)です。暗号は含まれていません。
コースにおける位置づけ
Pinter は対話調の入門書で、群、環、体を扱い、ガロア理論で締めくくります。Nathan Carter の Visual Group Theory は図と付属ソフトウェアを通じて群だけを扱う本で、Pinter の第1〜16章の前に、あるいは並行して読むのに向いています。Carter が扱わない環、体、ガロア理論は Pinter が補います。Thomas Judson の無料の Abstract Algebra: Theory and Applications は同様の範囲を扱い、暗号や符号理論を独立した章として、Sage を使う演習を選択課題として含んでいます。応用やコンピュータでの実験を求めるなら Pinter と並行して使うとよいでしょう。Joseph Gallian の Contemporary Abstract Algebra はより大部の教科書で、例と歴史的な解説が豊富です。より広い範囲を求める学生や、離散数学の授業ですでに証明に触れた学生に向いています。
Pinter の後には、Peter Cameron の Introduction to Algebra が自然な次の一歩になります。群より先に環を扱い、加群、数の体系の構成、さらに発展的な話題を加えているため、Pinter が演習に回した部分や扱わなかった部分を補えます。R. B. J. T. Allenby の Rings, Fields and Groups は同じ三つの構造をより厳密かつ包括的に扱う本で、入門の代わりではなく、入門課程を終えた後に読むのがよいでしょう。
本書の使い方
本書は抽象代数学の最初の授業に向いています。Dover は、数学専攻の3・4年生と将来の数学教員に適した本だと説明しており、序文は「平均的な学生」を念頭に置いていると述べています。代数学の授業を事前に受けている必要はありません。基礎的な事項は必要に応じて補われ、求められるのは高校までの代数と、短い証明を読み書きする意欲です。集合、整数、帰納法に不慣れなら、まず付録を復習しましょう。
実践的な学習計画:
- 第1学期(群): 第1〜16章。第1章は全体の見通しをつかむために手早く読み、群論の中心である第12〜16章に最も時間をかけます。
- 第2学期または後半(環と体): 第17〜22章と第24〜27章、続いて第29〜30章。第23章は選択と明記されています。線形代数を履修済みなら第28章は流し読みで構いません。
- ガロア理論: 第31〜33章。第24〜29章と、第14〜16章の商群の内容を前提とします。
- 1学期の概観コース: 第1〜19章。演算、関数、同値関係に慣れていれば第2、6、12章は流し読みし、時間があれば第24、25、27章に進みます。
演習セットを本文そのものとして扱いましょう。各章で、最初の計算問題のセット、少なくとも一つの短い証明のセット、そして新しい結果を証明する後半のセットを一つ解きます。† の付いたセットは順番どおりに解きます。# の付いた演習には巻末に部分的な解答がありますが、それ以外については、証明を確かめるために学習仲間や教員の助けがあると役立ちます。さらに代数学を学ぶつもりの学生は、本文では証明されない同型定理とシローの定理について、第16章の演習セットに取り組むべきです。第3章と第5〜7章の応用の演習セットは選択で、興味に応じて加えるとよいでしょう。
