01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Alcock, L. (2014). How to Think About Analysis. Oxford University Press.
章の要約
本書は教科書ではなく学習ガイドである。全体は二部構成で、第1部「解析学を学ぶ」(第1〜4章)は解析学の学び方全般を、第2部「解析学の概念」(第5〜10章)は中心となる概念を扱い、その前後に序論と結論が置かれている。第2部の各章は概要で始まり、「この先に向けて(Looking ahead)」の節で終わる。序論によれば、本書が扱う内容は初期の解析学の授業より少なく、その代わり基礎と、それを学ぶ際の心理的な側面にはるかに多くの注意を払っている。
第1章:解析学とはどのようなものか
数列の収束を扱う典型的な解析学の講義ノートを1ページ示す(この時点で理解できることは求めていない)。それを使って、定義・定理・証明がどのような姿をしているか、記号と言葉をどう読むべきか、そしてこの種の数学がそれまでの手続き的な数学とどう違うかを示す。
第2章:公理、定義、定理
数学理論の構成要素を一つずつ取り上げる。定義を一つの例に、さらに複数の例に関連づけること、定義を正確に使うこと、定理の前提を吟味すること、図と一般性、定理とその逆についての節が、読むことを能動的な技能に変えていく。
第3章:証明
証明が数学理論の構造の中でどのような位置を占めるか、解析学がふつうどのように教えられるかを説明する。続いて証明の学び方に移り、本書が勧める研究に基づく読解技法である「自己説明」の節を含み、最後に証明を読むことと証明を組み立てることを区別する。
第4章:解析学を学ぶ
実践的な学習上の助言を扱う。解析学を学ぶとはどのような経験か、授業についていくこと、時間の浪費を避けること、疑問に答えてもらうこと、学習戦略を調整することが論じられる。
第5章:数列
最も長い章。数列とは何か、どう表すかから始め、単調性、有界性、収束を経て収束の厳密な定義に至る。定義には「直観から先に」と「定義から先に」の両方向からアプローチする。その後、数列が収束することの証明、収束数列の組み合わせ、無限大に発散する数列を扱う。
第6章:級数
記号法と部分和を通じて級数を導入し、等比級数を改めて取り上げる。意外な例を中心にした二つの節が収束判定法と交代級数への準備となり、章の最後はべき級数、収束半径、テイラー級数で締めくくられる。
第7章:連続性
関数の例と関数の指定のしかたを、あまりなじみのない例も含めて論じた後、ここでも連続性の定義に「直観から先に」と「定義から先に」の両方から取り組む。定義の変形、関数が連続であることの証明、連続関数の組み合わせ、連続性に関するさらなる定理、極限と不連続性を扱う。
第8章:微分可能性
定義を与えて適用する前に、微分可能性についてのよくある誤解から始める。さらに、微分不可能性、微分可能な関数に関する定理、テイラーの定理の節がある。
第9章:積分可能性
面積と原始関数の関係から出発し、面積の近似を経て積分可能性の定義へと積分を組み立て直す。積分不可能な関数、リーマンの条件、積分可能な関数に関する定理を示し、微積分学の基本定理で章を閉じる。
第10章:実数
最終章は「数について知らないこと」から始まり、小数展開、有理数と無理数、実数の公理を扱い、完備性で終わる。
主要概念
第1〜4章:解析学を学ぶ
- 使う道具としての定義:定義は、具体例に当てはめて試し、各条件を正確に確かめることで理解される。
- 定理の前提と逆:定理が何を仮定しているか、その逆が成り立つかを確かめることも、定理を理解することの一部である。
- 自己説明:証明の各行を自分自身に説明する学習技法。本書はこれを数学教育の研究に基づいて勧めている。
- 理論の構造:公理・定義・定理・証明が互いにどう依存しているか、そして講義でそれらがどう提示されるか。
第5〜6章:数列、級数
- 数列の収束:厳密な定義を、それがとらえている直観と並べて読む。
- 部分和:級数は、その部分和の列が収束するときに収束する。
- 収束判定法と収束半径:級数、とくにべき級数が収束するかどうかを判断するための道具。
第7〜9章:連続性、微分可能性、積分可能性
- 連続性の定義とその変形:定義の同値な言い表し方と、それを使って連続性を証明する方法。
- 定義に基づく微分可能性:定義が何を述べているか、どこでよくある誤解が生じるか、そして微分可能でない関数。
- リーマンの条件:積分可能性の判定条件。積分不可能な例とあわせて用いられる。
- 微積分学の基本定理:積分と微分を結ぶ厳密な関係。
第10章:実数
- 実数の公理:実数の体系が満たすと仮定される性質。
- 完備性:実数を有理数から区別する公理。
批判的分析
長所
- 解析学の読み方を教える。 第1部はすべて技能に充てられている。定義を例に照らして読むこと、定理の前提と逆を吟味すること、自己説明によって証明を学ぶことである。著者は助言が研究に基づくと述べており、例はすべて解析学そのものから取られている。
- つまずきの理由を説明する。 序論によれば、本書はよくある誤り、誤解、混乱の原因を取り上げ、その中には高校までの数学を過度に一般化することから生じるものも含まれる。「よくある誤解」といった節の題や、「直観から先に」と「定義から先に」の対になった節が、その実践を示している。
- 授業の順序の違いに合わせられる。 第2部の各章は概要で始まるので、学生は自分の授業の内容と照らし合わせることができる。序論が指摘するように、数列と級数から始める大学もあれば、連続性・微分可能性・積分から始める大学もある。
- 先を見通させる。 第2部の各章は「この先に向けて」の節で終わり、基礎が本格的な授業でこの後扱う内容とどうつながるかを見せてくれる。
短所
- 意図的に限られた内容。 著者自身、初期の解析学の授業は本書より多くを扱うと述べている。授業用の教科書の代わりにはならず、コンパクト性、一様収束、距離空間といった話題は目次に現れない。
- 一般的な学習技能の扱いは簡潔。 第1部の学習上の助言は、著者の How to Study for a Mathematics Degree(米国版 How to Study as a Mathematics Major)より凝縮されている。大学の数学がまったく初めてなら、まずそちらから始めるよう序論自体が勧めている。
- 速くは読めない。 著者は本書全体を速く読めると期待すべきではないと警告し、難しい節はいったん飛ばして後で戻るよう勧めている。
コースにおける位置づけ
このリストの中で最も穏やかな入口であり、授業用の教科書ではなく、解析学の背後にある考え方を説明する副読本である。同じ話題を学生が答える問いの連なりで教える R. P. Burn の Numbers and Functions: Steps into Analysis の前に、あるいは並行して読むとよい。Alcock は証明の読み方と組み立て方を説明し、Burn はそれを実際に行う構造化された練習を与える。
習慣が身についたら、次は本格的な教科書である。Stephen Abbott の Understanding Analysis は動機づけの議論を備えた厳密な一変数の教科書で、Bartle と Sherbert の Introduction to Real Analysis はより包括的な教科書である。Walter Rudin の Principles of Mathematical Analysis は簡潔で形式的な古典であり、もっと後で読むものである。Victor Bryant の Yet Another Introduction to Analysis は、数列、連続性、微分、積分をたどるもう一つの入門である。Alcock の第1部の助言はこれらすべてに当てはまり、完備性を扱う第10章は、多くの教科書が早い段階に置く実数の公理的な扱いへの準備になる。
本書の使い方
本書は、まだ解析学を学び始めていない学生、たとえば大学入学前の夏休みや、米国式の制度で上級科目に進む前の学生に向けて書かれている。著者は、すでに解析学の授業を受けていて苦労している学生、試験直前になって読み始める学生にも役立つことを望んでいる。前提となるのは高校の微積分で、内容の章は数列、級数、微分、積分についてのなじみのある考えの上に組み立てられている。
実践的な計画:
- 第1部から始める。 序論は、大学の数学をある程度経験した読者も含め、全員が第1部から始めるよう勧めている。後の章がその助言を参照するためである。定義・定理・証明を扱う第2章と第3章が中心である。
- 第2部は自分の授業の順に読む。 各章冒頭の概要を使って授業と対応させる。数列と級数の授業なら第5〜6章、連続性・微分可能性・積分可能性なら第7〜9章、実数を扱う授業では第10章を読む。
- 能動的に読む。 第3章の自己説明の方法を第2部の証明で試す。第2章が勧めるとおり、先に進む前に各定義を例で試す。
- 立ち止まらない。 著者の助言に従い、難しい節には印をつけて先へ進む。どの章にも難しい部分とやさしい部分が混在している。
- 教科書と併用する。 授業の教科書の代わりではなく、一緒に使う。本書のある章が理解できたら、Abbott や Bartle と Sherbert の対応する節と演習に取り組むとよい。
