01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Levine, R. S. (General Ed.). (2026). The Norton Anthology of American Literature (11th ed., Vols. A–E). W. W. Norton & Company.
章の要約
時代別に編成された5巻のアンソロジーである。各巻は、序文と謝辞、序論、年表で始まり、その後、作者を年代順に並べて、それぞれに解題と注釈付きのテクストを付け、巻末には選択書誌、版権許諾の表示、索引が置かれる。Norton は6人の編者を挙げている。総編者は Robert S. Levine で、Sandra Gustafson と Lisa Siraganian が引き続き編者を務め、第11版では Cody Marrs、Gretchen Murphy、Stephanie Li の3人が新たに加わった。以下の概観は、章ではなく巻ごとに進める。
巻A:始まりから1820年まで
この巻はアメリカ先住民の文学から始まる。創世の物語(イロコイ、ナバホ、ポタワトミ)、写本、岩絵、キープ、ワムパムベルト、チェロキー文字、皮革画などの「物質的テクスト」、トリックスターの物語、弁論、歌である。続いて Columbus、Las Casas、Cabeza de Vaca、そして先住民世界についての初期ヨーロッパ人の記述(Cortés、Harriot、Champlain、Juet、Heckewelder、Bradford と Winslow)が来る。中心は植民地期の著作で、John Smith、Bradford、Morton、Winthrop、Roger Williams、Bradstreet、Wigglesworth、Rowlandson、Mather、Edwards、さらに宗教的表現についての特集がある。後半は、民族誌・博物学的著作、Franklin、Crèvecoeur、アダムズ夫妻、Paine、Jefferson、『ザ・フェデラリスト』、Murray、Freneau、Wheatley、革命の時代の奴隷制と自由についての特集(奴隷にされた人々の語りと Equiano を含む)、初期のアメリカの小説と戯曲(Tyler、Rowson、Brown)を扱い、Irving で終わる。
巻B:アメリカ文学、1820〜1865年
この巻は南北戦争前の時期に集中する。Irving、Cooper、Sedgwick、Sigourney、Bryant、Apess、Schoolcraft、Child、Emerson、Hawthorne、Longfellow、Whittier、Poe、Lincoln、Fuller、Stowe、Jacobs、William Wells Brown、Thoreau、Douglass、Whitman、Melville("Hawthorne and His Mosses" と Moby-Dick の数章を含む)、Harper、Ridge、Dickinson、Davis、Spofford である。特集は、先住民(移住と抵抗)、女性の権利と女性の著作、奴隷制・人種・アメリカ文学の形成、文学と環境、南北戦争の文学を扱う。
巻C:アメリカ文学、1865〜1914年
Whitman と Dickinson が続き、再建期の著作についての特集がある。Twain は Adventures of Huckleberry Finn と、小説における人種と言語をめぐる「批評的論争」の特集(Julius Lester、David L. Smith、Toni Morrison、Alan Gribben、Percival Everett)とともに登場する。リアリズム、地方主義、自然主義についての特集が、Howells、Henry James、Jewett、Chopin、Freeman、Wharton、Norris、Dreiser、Crane、Jack London の枠組みとなる。この巻はまた、Sarah Winnemucca、Emma Lazarus、José Martí、Booker T. Washington、Charles Chesnutt、Abraham Cahan、Charlotte Perkins Gilman、W. E. B. Du Bois、Paul Laurence Dunbar らにも紙幅を割く。さらにユートピアと思弁的な未来、ウーンデッド・ニーの虐殺、金ぴか時代に「アメリカ人になる」ことについての特集がある。
巻D:アメリカ文学、1914〜1945年
この巻は、Stein、Frost、Pound、Williams、Stevens、H.D.、Moore、Eliot(The Waste Land)、Cummings、Hart Crane を通じてアメリカのモダニズムを示し、モダニズムの宣言をまとめた特集がある。散文と戯曲には、Cather、Glaspell、Anderson、O'Neill、Fitzgerald(The Great Gatsby、"Winter Dreams"、"Babylon Revisited")、Dos Passos、Faulkner、Hemingway が含まれる。1920〜30年代の黒人作家は McKay、Hurston、Larsen、Toomer、Hughes、Cullen、Wright、Petry によって示され、「Debating Black Art」の特集がある。ほかの特集は、大衆ジャンル小説、大恐慌と社会不安、国境を越えるアメリカのモダニズムを扱う。
巻E:アメリカ文学、1945年から現在まで
この巻は、Nabokov、Roethke、Welty、Bishop、Tennessee Williams から、Ellison、Miller、Lowell、Brooks、Salinger、Kerouac、Baldwin、O'Connor、Ginsberg、Rich を経て、Morrison、Plath、Roth、Cormac McCarthy、Lorde、Carver、Anzaldúa に至り、さらに Harjo、Cisneros、Erdrich、Saunders、Rankine、Alexie、Lahiri、Díaz、Viet Thanh Nguyen、Tracy K. Smith、Natalie Diaz などの同時代の作家に及ぶ。Hansberry の A Raisin in the Sun、August Wilson の Fences、Spiegelman の Maus(1章)、Bechdel の Fun Home(抜粋)が含まれる。特集は、ポストモダニズム、SF(Dick、Le Guin、Butler を含む「Reimagining Humanity」)、公民権・政治・美学を扱う。
主要概念
アンソロジーの構成
- 時代の序論と年表:各巻は、編者が書いた時代の概観と年表で始まる。
- 解題・注釈・書誌:各作者に解題と注釈付きのテクストがあり、各巻の巻末に選択書誌が置かれる。
- クラスター(特集):『ハックルベリー・フィンの冒険』論争、「Debating Black Art」、SF のように、短い関連テクストをまとめたもの。授業を特定のテーマや論争に集中させる。
繰り返し現れる運動とテーマ
- 宣言:巻Dにはモダニズムの宣言が集められ、巻Eのポストモダニズムの特集も同様のまとまりである。
- リアリズム、地方主義、自然主義:巻Cで、19世紀後半の小説に枠組みを与える特集。
- 複数のアメリカ文学:アメリカ先住民、アフリカ系アメリカ人、ラティーノ、アジア系アメリカ人、移民の著作が、すべての巻に現れる。
- 環境と思弁的な未来:巻Bの「Literature and the Environment」や巻Cの「Utopian and Speculative Futures」などの特集。
批判的分析
長所
- 1人の総編者のもとでの時代の幅。 5巻はアメリカ先住民の口承の伝統から21世紀に及び、学生は時代を移っても同じ種類の補助資料に接する。
- 多様な声。 アメリカ先住民の口承文学、奴隷制廃止論とアフリカ系アメリカ人の著作、のちの多文化的な小説や詩が、別の節ではなく、各巻の正典的な作者と並んで置かれる。
- 抜粋だけでなく全作品も。 目次によれば、The Great Gatsby(巻D)、A Raisin in the Sun と Fences(巻E)は章の抜粋ではない。
- 文脈が組み込まれている。 『ハックルベリー・フィン』をめぐる批評的論争のような特集は、テクストだけのアンソロジーにはない授業用の素材を与える。出版社はまた、編者による埋め込み動画と適応型の InQuizitive 演習を備えた、注釈可能な電子書籍を紹介している。
短所
- 最も長い作品は抜粋。 Moby-Dick をはじめ多くの小説は章または抜粋で収められるため、1つの小説を扱う授業には別の版が必要になる。
- セットの重さと費用。 各巻は約1000ページかそれ以上で(出版社は巻Aを948ページ、巻Dを1,104ページ、巻Eを1,296ページとしている)、セットは単巻とパッケージで販売される。短い概観の授業には2巻の組み合わせか、より短い版が必要になる。
- 文学史ではなくアンソロジー。 序論と解題は文脈を与えるが、アメリカ文学の連続した叙述はない。その役割は、コースに挙げられた文学史が担う。
- 版による変更。 第11版は新しい編者と新しい特集を備えており、収録作品、ページ、特集は第10版(2022年)と異なる。
コースにおける位置づけ
アメリカ文学のコースでは、このアンソロジーが一次テクストの集成である。Richard Gray の A Brief History of American Literature と Mario Klarer の A Short Literary History of the United States は時代順の簡潔な文学史で、アンソロジーと併せて使うのに適している。アンソロジーがテクストを、文学史が連続した叙述を与えるからである。リストの個別の作品(Beloved、Black Boy、Norton Critical Edition の Moby-Dick)は、概観で作者を紹介したあとで全体を読める。アンソロジーには Moby-Dick の数章が収められ、Morrison は巻Eに "Sweetness" とノーベル賞講演で登場する。Leo Marx の The Machine in the Garden はアメリカ文学における田園と技術についての批評的研究で、19世紀の作者を何人か読んだ学生に向く。
本書の使い方
このアンソロジーは、学部の概観コースや、編集上の助けを得て幅広い一次テクストを読みたい一般の読者に役立つ。長い課題を読む意欲以外に、特別な前提は要らない。
1学期の概観では、2巻の組み合わせ(初期と南北戦争前に巻A〜B、後の時代に巻C〜E)を選ぶ。各時代の序論と年表をまず読み、次に各作者の前の解題を読む。1回の授業で1人の作者か1つの特集という進め方が考えられる。たとえば最初の数週間は Franklin、Equiano、Emerson、Douglass、Whitman、Dickinson、次に Twain、James、Chopin、Du Bois、その次にモダニストと1920〜30年代の黒人作家、最後に Ellison、Baldwin、Morrison と現代の詩人である。特集は議論や作文課題に使える。
物語の流れのために文学史を併せて使い、抜粋でしか載っていない小説は単独の版で補う。購入前に、授業で使うのが第10版か第11版かを確認すること。
