01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Culler, J. (2011). Literary Theory: A Very Short Introduction (2nd ed.). Oxford University Press. Very Short Introductions.
章の要約
第2版は約160ページのポケットサイズの本で、9つの短い章に、理論的な学派と運動を扱う付録、参考文献、読書案内、索引が付く。初版(1997年)は8章構成だったが、第2版では第9章「倫理と美学」が加わり、出版社によれば「理論の死」、トラウマ理論、エコクリティシズム、物語理論と認知科学の結びつきについての新しい記述と、更新された文献案内が加えられている。本書の構成上の基本方針は出版社の紹介文に示されている。対立する「学派」を一つずつ記述するのではなく、理論が促してきた主要な「動き(ムーブ)」を素描し、それが文学、アイデンティティ、言語について考えるうえで何を意味するかを論じるというものである。学派そのものは付録にまとめられている。
第1章:理論とは何か
冒頭の章(約18ページ)は、特定の立場を紹介する前に、文学研究・文化研究における「理論」という語が何を意味するのかを問う。理論は教義の一覧というより、問いと議論の集まりとして理解するほうがよいという本書の主張の土台をここで据える。
第2章:文学とは何か、そしてそれは重要なのか
本書で最も長い章(およそ24ページ)で、表題の問いを取り上げる。文学を他の種類の書き物から区別するものは何か、そしてなぜその区分が重要なのか。この章を2番目に置くことで、読者が最初に出会う具体的な問題は研究対象の定義となる。
第3章:文学とカルチュラル・スタディーズ
文学研究と、より広い文化研究との関係を扱う短い章。出版社の紹介文は、この関係(「文学と文化の間に関係はあるのか」)を本書の導きとなる問いの一つとして掲げている。
第4章:言語、意味、解釈
この章は言語と、意味がどのように生み出され解釈されるかに目を向ける。表題は、本書の語彙ではロマーン・ヤーコブソンらの名と結びつく理論の言語学的側面を、解釈の問題へとつないでいる。
第5章:レトリック、詩学、詩
ここでは焦点が文彩と詩的言語の研究、そして詩と抒情詩へ移る。出版社は、詩・詩学・レトリックを本書が光を当てる領域の一つとして特に挙げている。
第6章:物語
物語の理論、つまり物語がどのように、誰によって語られるかを扱う章。本書の語彙には語り手、焦点化、プロットが含まれ、第2版で加わった物語理論と認知科学についての記述もこの主題に属する。
第7章:行為遂行的な言語
この章は、言語は何かを述べるだけでなく何かを行うものでもあるという考えを紹介する。本書の語彙に「行為遂行的(パフォーマティブ)」発話と「事実確認的(コンスタティブ)」発話が見られることから、行為を遂行する発話と事態を記述する言明との区別がここで中心となっていることがわかる。
第8章:アイデンティティ、同一化、主体
初版の最終章にあたり、アイデンティティと主体の問題を扱う。出版社はこれを理論が「人間のアイデンティティ」にもたらす含意の一つに位置づけている。本書の語彙には、フェミニズム、クィア理論、精神分析とともに、ジュディス・バトラー、イヴ・セジウィック、ルイ・アルチュセールといった名前が現れる。
第9章:倫理と美学
第2版で新設された章で、文学、倫理、美的価値の関係を考察する。初版では独立した章として扱われていなかった主題である。
付録:理論的な学派と運動
付録は、各章があえて構成の枠組みとしては用いなかった名前のある運動について、簡潔な説明を与える。出版社によれば、本書は脱構築、記号論、ポストコロニアル理論などのアプローチを、わかりやすい例を用いて概説している。
主要概念
第1–3章:理論、文学、文化
- 「動き」としての理論:理論を競合する学派の連なりではなく、繰り返し現れる議論と問いの集まりとしてとらえる本書の枠組み。
- 文学性:あるテクストを文学にしているものは何か、そしてその区分は重要なのかという問い。
- カルチュラル・スタディーズ:文化をより広く研究する営みで、文学研究との関係において考察される。
第4–7章:言語、レトリック、物語、遂行
- 解釈:読者がどのように意味に到達するのか、そしてその過程に言語が何を与えているのか。
- 詩学とレトリック:文学的効果を可能にする慣習と文彩の研究。
- 物語理論:物語がどのように構成され語られるかの分析で、語り手の視点の問題を含む。
- 行為遂行的発話:事態を記述するのではなく行為を成し遂げる言語。事実確認的な言明と対比される。
第8–9章と付録:アイデンティティ、価値、学派
- 主体:アイデンティティがどのように形成され、人が他者や虚構にどのように同一化するのかという理論的な問い。
- 倫理と美学:文学的価値と、道徳的・政治的判断との関係。
- 学派と運動:付録が要約する、名前のついたアプローチ(例えば脱構築、記号論、ポストコロニアル理論)。
批判的分析
長所
- 学派ではなく問題によって構成されている。 出版社の紹介文は、これを本書の際立った特徴としている。学生は学派に出会う前に、さまざまな学派が答えようとしている問いに出会うことになる。そのため付録が使いやすくなり、理論を暗記すべきラベルの一覧だと受け取る誤解も避けやすい。
- 書評で称賛された明快さ。 出版社が転載している初版への評で、フランク・カーモードは、これ以上明快な扱いは想像しがたく、しかもこの分量のなかで驚くほど包括的だと評した。著者紹介によれば、本書はおよそ20の言語に翻訳されている。
- 第一線の理論家による執筆。 カラーは『構造主義の詩学』や『ディコンストラクション』の著者であり、ソシュールとバルトについての短い入門書も書いている。説明は、この分野を要約しただけの人ではなく、分野の形成に関わった人によるものである。
- 分野の新しい段階に合わせた改訂。 第2版は倫理と美学の章を加え、トラウマ理論やエコクリティシズムなど、1997年以降に注目されるようになった主題を取り入れている。
短所
- 意図的にきわめて短い。 本文約130ページに9章を収めているため、個々の理論を詳しく展開することはできず、多くの章は12〜14ページである。特定のアプローチをテクストに適用する必要がある学生には、より詳しい手引きが必要になる。
- 学派そのものの扱いは少ない。 名前のある運動は付録に限られているので、例えばマルクス主義的読解やフェミニズム的読解を書くよう求められた読者は、学派ごとに構成された本に比べて直接の助けを得にくい。
- 作品全体を通した読解の実演がない。 本書は短い例を用いており、一つの文学作品全体にアプローチを適用してみせるわけではない。出版社の資料からは、練習問題や学習用の問いがあることもうかがえない。
- 2011年の改訂。 最新版から10年以上が経っており、それ以降の理論の展開は扱われていない。
コースにおける位置づけ
このコースでは、最も短く、最も概念的な入口となる一冊である。ピーター・バリーの『Beginning Theory』は似た領域を学派ごとに扱い、それぞれの批評家が実際に何をするのかを要約して短いテクストで実演する。一方が問いを、もう一方が方法を与えるので、カラーとよく組み合わせられる。ロイス・タイソンの『Critical Theory Today』は適用の面でさらに進み、各アプローチを説明したうえで『グレート・ギャツビー』をそれによって読んでみせる。
テリー・イーグルトンの『文学とは何か(Literary Theory: An Introduction)』は主要な学派について、より長く論争的に論じた本で、カラーの後に読むのがよい。M. A. R. ハビブの『A History of Literary Criticism』はプラトン以来の長い歴史を、『The Norton Anthology of Theory and Criticism』は一次文献を提供する。カラーはコースの初めに最も役立ち、学派を学んだ後のコースの終わりに第1章と第2章の問いを読み返すときにも再び役立つ。
本書の使い方
理論を学んだ経験は前提とされておらず、文学を読み、論じた経験が多少あれば十分である。数回に分けて読み切れる分量なので、理論の授業の最初の週、大学入学前の夏休み、あるいは復習に向いている。
実践的な読み方:
- 第1章と第2章をまず、ゆっくり読む。 この2章が以後のすべての枠組みとなり、文学とは何かという問いはコース全体を通じて繰り返し現れる。
- 第3〜8章は順に読み、各章の後に、その章が提起する中心的な問いと、それを試せそうな文学作品を一つ書き留める。
- 第9章は、授業が価値、正典、政治をめぐる議論に入ったときに読むと効果的である。
- 付録を地図として使う。 講義で学派が紹介されたら、付録の該当項目を読み、その学派が取り組む問いを扱った章に戻る。
- 巻末の読書案内をたどって一次文献に進む。Nortonのアンソロジーのような選集と並行して読むのが理想的である。
本書はきわめて短いため、より詳しい手引きと理論家自身の著作によって肉付けしていく枠組みとして使うのが最もよい。
