01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Tyson, L. (2023). Critical Theory Today: A User-Friendly Guide (4th ed.). Routledge.
章の要約
第4版は14の章からなり、その前に第4版への序文、教員向けの序文、謝辞が置かれ、およそ480〜500ページである(ラウトレッジは496ページ、Google ブックスは478ページと記載している)。ラウトレッジは本書を、魅力的でありながら厳密でもある「ハウツー」の本と説明し、批評理論に初めて触れる学部生・大学院生と、批評的アプローチの幅を広げたい大学教員を読者に想定している。総論の章のあと、12の章がそれぞれ一つのアプローチを取り上げる。出版社によれば、それぞれに、日常生活、大衆文化、文学テクストの例を用いた丁寧な説明、批評家が文学テクストについて問う具体的な問いの一覧、その理論によるF・スコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』の解釈、さらなる練習のための問いの一覧、文献目録が付く。公開されている目次は章題のみのため、以下の要約は章題と出版社の説明に沿っている。
第1章:批評理論について知りたかったのに、聞くのが怖かったことのすべて
冒頭の章は、個別のアプローチに入る前に、批評理論そのものを紹介する。題名は、この主題に気後れしているかもしれない読者に向けた入門であることを示しており、本書が理論に初めて触れる学生向けに書かれているという出版社の説明と合う。
第2〜4章:精神分析批評、マルクス主義批評、フェミニズム批評
この3章は、アプローチの最初に置かれている。精神分析批評、マルクス主義批評、フェミニズム批評である。出版社によれば、フェミニズム理論の章は、用語や理論的概念を含めて、第4版で大幅に更新された。
第5〜8章:ニュー・クリティシズム、読者反応批評、構造主義批評、脱構築批評
続く4章は、テクストと読むことを中心にするアプローチを扱う。ニュー・クリティシズム、読者反応批評、構造主義批評(出版社の説明では記号論と組になっている)、脱構築批評である。
第9〜10章:新歴史主義と文化批評;レズビアン、ゲイ、クィア批評
第9章は新歴史主義と文化批評をあわせて扱い、第10章はレズビアン、ゲイ、クィア批評を扱う。出版社によれば、LGBTQ理論の章は、用語や理論的概念を含めて第4版で更新された。
第11〜13章:アフリカ系アメリカ人批評、ポストコロニアル批評、エコクリティシズム
この3章は、人種、帝国、環境を中心にする批評を取り上げる。エコクリティシズムの第13章は第4版で新しく加わったもので、ディープ・エコロジー、エコ・マルクス主義、エコフェミニズム(急進派、マルクス主義、菜食主義のエコフェミニズム)、ポストコロニアルなエコクリティシズムと環境正義の節を含む。出版社によれば、アフリカ系アメリカ人理論とポストコロニアル理論の章も大幅に更新された。
第14章:全体像をつかむ
最後の章は、題名からして、それまでの章で取り上げたアプローチを振り返るものである。
主要概念
第2〜4章
- 精神分析批評、マルクス主義批評、フェミニズム批評:理論の章の連なりを始める3つのアプローチ。
第5〜8章
- ニュー・クリティシズム、読者反応批評、構造主義と記号論、脱構築:目次と説明に挙げられた、テクスト中心と読者中心の4つのアプローチ。
第9〜13章
- 新歴史主義と文化批評:第9章の題名にある組み合わせ。
- レズビアン、ゲイ、クィア批評:第10章の主題。LGBTQ理論の章は第4版で更新された。
- アフリカ系アメリカ人批評とポストコロニアル批評:第11章と第12章。
- エコクリティシズム:新しい第13章で、ディープ・エコロジー、エコ・マルクス主義、エコフェミニズムを含む。
全体を通して
- 批評家が問う問い:出版社によれば、各理論に付く具体的な問いの一覧。
- 一つのテクスト、多くの読み:それぞれの理論による『グレート・ギャツビー』の解釈。
批判的分析
長所
- 統一された型。 出版社によれば、どの理論にも、丁寧な説明、批評家が問う問いの一覧、同じ小説の解釈が付くので、読者はアプローチを直接比較できる。
- 練習が組み込まれている。 各理論には、他の作品に適用するための練習問題の一覧が付き、文献目録も更新・拡充された。
- 幅広いアプローチ。 精神分析やニュー・クリティシズムからクィア理論やエコクリティシズムまでの12のアプローチが1冊に収められている。
- 第4版での更新。 エコクリティシズムの新しい章と、フェミニズム、アフリカ系アメリカ人、ポストコロニアル、LGBTQの各章の大幅な更新(用語を含む)は、変化の速かった領域に対応している。
- 第3版への書評者の評言。 出版社は、明快な説明と、学部の授業で効果的に機能する相互比較を称賛するエリザベス・レンカー(オハイオ州立大学)と、各理論をそれ自身の言葉で提示していると述べるトッド・マクゴーワン(バーモント大学)の言葉を引いている。
短所
- 単一の例示テクスト。 実演となる読みはすべて『グレート・ギャツビー』についてのもので、比較は容易になるが、学生は各理論を他のテクストで試す必要がある。練習問題はそのためのものである。
- 概説の深さ。 14章、約500ページで12のアプローチを扱うので、各章は入門であって、元の思想家たちの完全な説明ではない。
- 二次的な解説であって一次テクストではない。 本書は理論を説明するもので、アンソロジーではないため、元の論文を読みたい学生は選集を必要とする。
- 固定されたアプローチの一覧。 12のアプローチは目次にあるものに限られ、その外にあるもの、たとえばナラトロジーやディスアビリティ研究は、別に探す必要がある。
コースにおける位置づけ
文学理論のコースでは、タイソンの本は、各理論をテクストに適用するハウツーの手引きにあたる。ピーター・バリーの Beginning Theory も、各アプローチに平易な説明、批評家が行うことの一覧、実際の読解を付けるので、両者は近い選択肢であり、『グレート・ギャツビー』 という一貫した例と練習問題が、タイソンの本の特徴である。ジョナサン・カラーの Literary Theory: A Very Short Introduction は、学派の連なりではなく、理論が促してきた動きを説明するので、タイソンの学派ごとの構成を補う、より短く概念的な読み物になる。M・A・R・ハビブの A History of Literary Criticism は、古代ギリシャから20世紀後半までの単著による通史で、タイソンが扱う現代の諸学派より前の背景を求める場合に選ぶ本である。The Norton Anthology of Theory and Criticism は、古代から現代までの理論と批評の一次テクストを集めたアンソロジーで、タイソンのような手引きが説明するだけのものの原典を提供する。
本書の使い方
本書は、批評理論に初めて触れる学部生・大学院生と、より多くのアプローチを求める教員に向いている。ラウトレッジは前提知識を挙げていない。小説や詩を読み、議論した経験と、『グレート・ギャツビー』を一度読んでおくことが、例示をより生かす。
まず第1章を読んで全体の枠組みをつかむ。そのあとは授業の順序に従って章を選ぶ。各章は独立しているので、たとえば精神分析の前にフェミニズム批評を取り上げてもよい。各章では、説明、批評家が問う問いの一覧、『ギャツビー』の読みの順に読み、練習問題を別のテクストで試す。第14章は、各アプローチを比較するまとめとして、最後に読むのがよい。より深い読みが必要なときは、各章を、アンソロジーにある対応する一次の論文と組み合わせる。
