01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Levinson, S. C. (1983). Pragmatics. Cambridge University Press.
章の要約
本書は全7章で、参考文献と索引を除く本文は約380ページ。Cambridge Textbooks in Linguistics シリーズの一冊である。出版社は、語用論の中心的な話題、すなわち直示(ダイクシス)、含意、前提、発話行為、会話の構造についての明快で統合的な分析と紹介している。語用論と意味論の関係が繰り返し問われ、出版社は、選ばれた話題の詳細な分析がこの分野に求められる経験的な厳密さを示すものだと述べている。
第1章:語用論の範囲(The Scope of Pragmatics)
冒頭の章は、分野の定義と範囲の画定を扱う。語用論を定義するいくつかの方法、現在この分野に関心が集まっている理由、そして拡張された一つの例が節として並ぶ。
第2章:直示(Deixis)
まず直示への哲学的アプローチを示し、続いて記述的アプローチに移る。人称、時間、場所、談話、社会的直示を別々の節で扱い、結論で終わる。
第3章:会話の含意(Conversational Implicature)
グライスの含意の理論から始め、修正、問題点、応用へと進む。含意と論理形式、含意の種類、一般化された量の含意、格率の悪用の一例、含意と言語構造などが論じられる。
第4章:前提(Presupposition)
歴史的背景と最初の観察ののち、取り消し可能性や投射問題など、前提の厄介な性質を取り上げる。さらに前提の語用論的理論を含む各種の説明を比較し、結論で終わる。
第5章:発話行為(Speech Acts)
哲学的背景から始まる。後半の節では、発話行為は真偽の問題には還元できないというテーゼ、発言内的力を通常の統語論と意味論に還元する立場、そして「対立の崩壊」を、統語論上の問題や両方の立場にとっての問題とともに検討する。また発話行為の文脈変化理論を検討し、発話行為の理論を超えるという節で結ぶ。
第6章:会話の構造(Conversational Structure)
談話分析と会話分析を対比し、そのうえで会話分析を紹介する:隣接ペアや全体的な組織化を含む基本的な知見、方法論についての所見、いくつかの応用。後半の節は、選好組織と選好される連鎖、予備連鎖(予告を含む)と間接発話行為の再分析を扱う。末尾に書き起こし記号の説明がある。
第7章:結論(Conclusions)
最終章は、語用論をコア言語学、社会言語学・心理言語学、その他の分野と関係づける。
主要概念
第1〜2章:範囲と直示
- 語用論の定義:何が意味論ではなく語用論に属するかという問題。
- 直示:人称、時間、場所、談話、社会的直示。言語が発話状況の特徴を符号化する方法。
第3〜4章:含意と前提
- 会話の含意:言われたこと以上の意味についてのグライスの説明と、本章で区別される含意の種類。
- 一般化された量の含意:独立した節で扱われる含意の一類型。
- 取り消し可能性と投射問題:前提の厄介な二つの性質。
第5〜7章:発話行為、会話、結論
- 発言内的力:発話の力と、それを統語論・意味論に還元できるかをめぐる論争。
- 隣接ペアと選好組織:会話分析の基本的な知見。
- 予備連鎖:予告など、後続の行為の準備をする発話。
批判的分析
長所
- 範囲が明確で目的がはっきりしている。 出版社は、この分野の従来の研究が気後れするほど技術的な水準で書かれていたことを強調し、適切な例示を伴う読みやすい代案として本書を位置づけている。
- 少数の問題に集中している。 五つの主題を一章ずつ、選ばれた問題の詳細な分析とともに扱うため、浅い概観ではなく古典的な問いに深く入れる。
- 意味論と語用論の境界が一貫した主線である。 語用論的説明が意味論の何を解決できるかを繰り返し問い、各章に共通の論点を与えている。
- 周辺領域への広がり。 序論と結論は語用論を心理学、哲学、人類学、文学と結びつけ、第6章は会話分析を取り入れ、本書を文の意味から相互行為の中の談話へと広げる。
短所
- 時代的な制約。 1983年に出版されて以来改訂されておらず、その後の分野の発展は扱われない。
- 水準。 出版社は学部上級から大学院1年向けの教科書としている。初学者はもっと穏やかな入門書から始める方がよいかもしれない。
コースにおける位置づけ
このコースの意味論・語用論の書目では、レヴィンソンは語用論の側に位置する。バーナーの Introduction to Pragmatics とクルースの Meaning in Language は入門書で、後者は意味論と語用論をあわせて扱う。ハーフォード、ヒースリー、スミスの Semantics: A Coursebook はワークブック形式、サイードの Semantics は意味の入門書である。ハイム&クラッツァーの Semantics in Generative Grammar は、形式的・合成的な対応物である。
レヴィンソンは、含意・前提・発話行為がすでになじみのある状態で、それらが意味論の理論にどう関わるかを理解したいときに、入門書のあとで読むとよい。
本書の使い方
意味論・語用論の入門講義を履修し、初等論理の知識がある、言語学・言語哲学の学部上級生と大学院生に向く。
読み方の計画:
- 中核: 含意と前提についての主要な論証を担う第3章と第4章。その前に第1章で分野の定義を確認する。
- 次に: 発言内的力をめぐる議論のための第5章(発話行為)。
- 補完: より記述的な第2章(直示)と、独立した単元として読める会話分析入門の第6章。
- 締めくくり: 語用論を他の領域と関係づける第7章。
本書は古典的な問題の基礎固めと位置づけ、そのあとで関心のある話題について新しい文献を読むとよい。
