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Semantics(意味論) cover

言語学

言語学

Semantics(意味論)

John I. Saeed

英語原題: Semantics

言語における意味の表現と伝達を学ぶ、学生向けの入門書です。基本概念から語の意味、文の意味、理論的な分析へ進み、例と段階別の演習を含みます。言語学の基礎知識があれば読み始められ、専門的な意味論研究への準備にもなります。

前提知識: 言語学入門を終えていれば十分で、論理学や形式意味論の知識は前提としません。

難易度レベル
中級
学術レベル
学部
semanticsmeaninglexical semanticspragmaticslinguistics

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Saeed, J. I. (2023). Semantics (5th ed.). Wiley-Blackwell. (Introducing Linguistics series; released November 2022.)

章の要約

第5版は約590ページで、11章が三つの部に分かれている。第I部「予備的考察」(第1–2章)、第II部「意味の記述」(第3–7章)、第III部「理論的アプローチ」(第8–11章)である。各章は要約、練習問題、読書案内、注、その章独自の参考文献で終わり、巻末には約35ページの練習問題解答、用語集、索引がある。この版で新たに加わったのは推論語用論を扱う第11章である。Saeed は第1章の冒頭で方針を示している。本書は特定の一つの理論の入門書ではなく、意味の知識を話者が自分の言語について持つ知識の一部として扱う。

第1章:言語学における意味論

最初の章は、意味論を言語分析のレベルの中に、また記号の研究(記号論、Peirce のイコン・インデックス・シンボル)というより広い枠の中に位置づける。そのうえで、素朴な「定義理論」を三つの難題、すなわち循環性、言語的知識と百科事典的知識の境界、文脈に照らして検討する。これらに対処するための本書の戦略(意味のメタ言語、概念のモデル、字義的意味、文脈を語用論に委ねること)を予告し、作業上の区別として、指示と意義、発話・文・命題、字義的意味と非字義的意味、意味論と語用論を導入する。Saeed は意味論と語用論の境界線を引くことを、意図的に第11章まで先送りしている。

第2章:意味、思考、現実

言語が世界や心とどう結びつくかを扱う。指示の種類、固有名と名詞句、意味の理論としての指示の限界を論じ、続いて心的表象(概念、必要十分条件、プロトタイプ)と、言語相対性と思考の言語仮説をめぐる論争を取り上げる。

第3章:語の意味

何を語とみなすか、なぜ語の意味を確定するのが難しいかを論じ、そのうえで語彙関係(同音異義、多義、同義、反義、下位関係、部分・全体関係など)、派生関係、言語間の語彙類型論(LINGUIST List の書評は色彩語と普遍的な語彙素に触れている)、語彙変化を扱う。

第4章:文の関係と真理

論理と真理への短い導入(結合子の真理表を含む)、必然的真理・アプリオリな真理・分析性を扱い、そのうえで含意と前提、そして真理関係によってそれらをどこまで記述できるかを論じる。

第5章:文の意味論1:状況

言語が状況をどう符号化するかを扱う。状況タイプ(状態、活動、達成、到達)、テンス、アスペクト、モダリティとムード、証拠性、否定である。

第6章:文の意味論2:参与者

意味役割、意味役割と文法関係との結びつき、動詞の意味役割グリッド、意味役割の問題点とそれを設定する動機を論じ、続いて使役、態、類別詞と名詞クラスを扱う。

第7章:意味と文脈

ダイクシス、文脈の中での指示、文脈としての背景知識、情報構造(旧情報と新情報)、推論、発話行為の意味論を扱う。

第8章:意味成分

成分分析とそれによる語彙関係の扱い、Katz の意味理論、文法規則の中の意味成分、Talmy の移動事象の類型論、Jackendoff の概念構造、Pustejovsky の生成語彙論を取り上げ、成分的アプローチの問題点で締めくくる。

第9章:形式意味論

第4章を土台に、モデル理論的意味論、英語の論理的メタ言語への翻訳とその解釈、真理値の確認、意味公準、自然言語の量化子と高階論理(単調性と否定極性項目を含む)、内包性、談話への動的アプローチを扱う。

第10章:認知意味論

一般的な認知の一部としての意味を扱う。カテゴリー化、多義、メタファー、メトニミー、メンタル・スペース、Langacker の認知文法、構文文法である。

第11章:推論語用論

新しい章で、意味論と語用論の境界の問題に立ち返る。命題、Grice の会話の含意、グライスの格率の一般化、文脈主義、関連性理論、語彙語用論を扱う。

主要概念

第I部:予備的考察(第1–2章)

  • 意義と指示:表現が意味するものと、表現が世界の中で指し示すものとの区別。
  • 発話、文、命題:具体的な発話行為、抽象的な文法単位、そして真偽を問える記述内容。
  • プロトタイプ:厳密な必要十分条件ではなく典型的な成員を中心に組織された概念。
  • 言語相対性:言語のカテゴリーがその話者の思考を形づくるという仮説。

第II部:意味の記述(第3–7章)

  • 語彙関係:多義、反義、下位関係など、語と語の間の体系的な意味関係。
  • 含意と前提:ある文の真理が別の文から導かれる、あるいは別の文によって当然視される関係。
  • 状況タイプとアスペクト:動詞と文法が出来事を状態や過程として、また完結したものや進行中のものとして提示する仕方。
  • 意味役割:動作主や被動者など、参与者が状況の中で果たす役割。
  • ダイクシスと情報構造:発話の場に結びつけられた意味と、旧情報・新情報の配置。
  • 発話行為:真か偽かの言明としてだけでなく、行為として理解される発話。

第III部:理論的アプローチ(第8–11章)

  • 成分分析:語の意味をより小さな意味素性の組み合わせとして記述する方法。
  • モデル理論的意味論:世界のモデルに相対的な真理条件として意味を与える方法。
  • メタファー、メトニミー、メンタル・スペース:認知意味論が意味を説明する際の認知的な仕組み。
  • 含意と関連性:Grice の説明や関連性理論における、言われたことを超えて推論される意味。

批判的分析

長所

  • 明快な展開。 Rebecca Madlener は LINGUIST List(34.1777、2023年)の書評で、本書を読みやすく追いやすいと評し、各章が論理的に積み重なっていると指摘している。目次も出版社の説明する構成、すなわち一般的な概念から記述へ、そして理論へという流れを裏づけており、章間の相互参照も多い(第1章だけで第2、3、7、8、9、10、11章を先取りして参照している)。
  • 理論の中立的な概観。 Saeed は本書が特定の一つの理論の入門書ではないと述べており、Madlener もすべてのアプローチが中立的な視点から扱われていると評価している。学生は成分的、形式的、認知的アプローチを比較し、自分で結論を導くことができる。
  • 解答つきの練習問題。 各章に練習問題があり、出版社によれば難易度別に配列されている。巻末の解答は約35ページに及び、独習にも使える。たとえば第1章の練習問題では、複合名詞を意味の予測しやすさで分類したり、自分で辞書の定義を書いて実際の辞書と比べたりする。
  • 更新された語用論。 新しい第11章が Grice、文脈主義、関連性理論、語彙語用論を取り込み、各章の参考文献は最新の文献を示している。

短所

  • 例文の大半が英語。 出版社は多くの言語のデータを強調しており、語彙類型論、証拠性、類別詞の節はそれを裏づけるが、Madlener は例の大部分が英語であると指摘している。著者自身も紙幅の都合としてそれを認めている。
  • 形式意味論は入門的。 第9章は約50ページの1章にすぎない。自分で合成的な分析を行う必要がある学生には、形式意味論専門の教科書が必要になる。
  • 1学期には長い。 600ページ近くあり、第III部だけで200ページを超えるため、すべてを扱える授業は少なく、教員は理論章を取捨選択する必要がある。

コースにおける位置づけ

このコースの意味論の部分では、Saeed は自然な主教科書となる。より短い2冊を先に、あるいは並行して読むことができる。Hurford、Heasley、Smith の Semantics: A Coursebook は短い単元と練習・フィードバックで基本的な考え方を教え、反復練習を望む学生に向いている。Cruse の Meaning in Language は、予備知識のない読者に向けて意味論と語用論を一緒に扱う入門書である。Saeed はどちらよりも広い範囲を、特に第III部で扱っている。

語用論の部分では、Birner の Introduction to Pragmatics が含意、前提、指示、発話行為について Saeed の第7章と第11章よりも踏み込んでおり、Levinson の Pragmatics はこの分野の中心的な主題を体系的に示した古典的教科書である。Saeed の第9章の後には、Heim と Kratzer の Semantics in Generative Grammar が、型付きラムダ記法を用いて統語構造の上に真理条件的意味論を構築する大学院レベルの次の一歩となる。

本書の使い方

出版社は本書を言語学、英語学、応用言語学、現代語、コンピュータ科学の学部生向けとしており、意味論の予備知識は前提とせず、形式言語学についても限られた知識しか前提としていない。言語学の最初の授業を1つ受けていれば十分な準備となる。

1学期の授業での実際的な計画:

  • 中核: 第1–7章を順に読む。第1章は本書全体で使われる問いと用語を準備し、第4章は第9章の前提となる。
  • 理論ブロック: 授業の方向性に応じて選ぶ。形式言語学寄りの授業なら第9章(と第8章)、認知言語学寄りなら第10章、語用論へ続く授業なら第1章で残された問いを取り上げる第11章で締めくくる。
  • 独習: 章を読み、解答を見る前に練習問題に取り組み、複数の章にわたって出てくる用語は用語集で確認する。

さらに深めるには各章末の読書案内を使うとよい。たとえば第1章のリストは大部の参照用概説として Lyons と Allan を、語用論については Birner を挙げている。例の大半が英語なので、他の言語を話す学生は、アスペクト、証拠性、類別詞、ダイクシスといった概念をその言語で試してみると理解が深まる。