01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Heim, I., & Kratzer, A. (1998). Semantics in Generative Grammar. Blackwell.
章の要約
本書は12章と索引からなり、全体で約310ページ、Blackwell Textbooks in Linguistics シリーズの一冊である。目次からは着実な積み上げが見える。最初の3章でフレーゲ的な真理条件的枠組みと統語論との関係を整え、第4〜6章でそれを修飾語、関係節、量化子へと広げ、第7〜12章は量化、束縛、代名詞、そして内包への最初の一歩を扱う。出版社は、本書が学生に意味論の「やり方」を教えるものであり、理解を確かめて今後の課題へと導く練習問題を含むと述べている。
第1章:真理条件的意味論とフレーゲ・プログラム(Truth-conditional Semantics and the Fregean Program)
真理条件的意味論とフレーゲの合成性の考えを導入し、集合と関数についてのチュートリアル(集合、集合の抽象記法、関数)を含む。
第2章:フレーゲ・プログラムの実行(Executing the Fregean Program)
フレーゲ的解釈の最初の例を詳しく扱い、意味論を一つの例文に適用すること、外延的意味論で真理条件を導くこと、対象言語とメタ言語の区別を含む。続いて集合とその特性関数、他動詞を加える際の意味型と表示領域、シェーンフィンケル化、λ記法による関数の定義を扱う。
第3章:意味論と統語論(Semantics and Syntax)
意味論の仕組みを統語構造と結びつける:型駆動の解釈、意味解釈への入力の構造、適格性と解釈可能性、θ基準、項構造と連結。
第4章:英語をさらに:非動詞的述語、修飾語、定記述(More of English: Nonverbal Predicates, Modifiers, Definite Descriptions)
意味的に空な語と非動詞的述語を扱い、次に制限的修飾語としての述語を、新しい合成規則、関数適用としての修飾、非交差的形容詞の問題とともに論じる。また定冠詞について、部分的表示、前提と主張の区別、前提の失敗と解釈不能性の違いなどを展開する。
第5章:関係節、変項、変項束縛(Relative Clauses, Variables, Variable Binding)
関係節を述語として分析し、節内部の意味的合成、変項、述語抽象を扱う。続いて複数の変項(such-that 関係節、入れ子の関係節、共指標付け)を処理し、変項束縛とは何かを、定義、定理、指標付けへの統語的制約とともに問う。
第6章:量化子:その意味型(Quantifiers: Their Semantic Type)
個体をDPの表示とすると問題が生じることを示し、その解決として一般化量化子を提示する。続いて量化的限定詞、集合間の関係、関係的限定詞の意味の形式的性質、前提的量化句(論争のある事例を含む)を扱う。
第7章:量化と文法(Quantification and Grammar)
目的語位置の量化子の問題に対し、型の不一致を修復する二つの方法、すなわちその場での柔軟な型と移動を検討する。続いて自然言語の量化子を述語論理と比較し、量化子移動を支持する標準的な議論(スコープの曖昧性、先行詞を含む削除、代名詞を束縛する量化子)を比較検討する。
第8章:量化子移動の統語的・意味的制約(Syntactic and Semantic Constraints on Quantifier Movement)
どのDPが移動できるか、どれが移動しなければならないか、どこまで一緒に動くか、着地点はどこか。VP、PP、AP、NP、DPへの量化を論じる。
第9〜11章:束縛代名詞と指示代名詞および省略;統語的束縛と意味的束縛;E型照応(Bound and Referential Pronouns and Ellipsis; Syntactic and Semantic Binding; E-Type Anaphora)
第9章は自由変項としての代名詞、共指示と束縛、省略における「ずさんな同一性」の謎を扱う。第10章は束縛原理と弱い交差に関して、統語的束縛と意味的束縛を区別する。第11章は量化子を先行詞とするE型代名詞と、束縛変項でも指示的でもない代名詞を、クーパーの分析を含めて論じる。
第12章:内包的意味論への第一歩(First Steps Towards an Intensional Semantics)
最終章は、外延的意味論がどこで行き詰まるかを説明し、内包を導入して内包的意味論を素描し、限界と展望で終わる。
主要概念
第1〜3章:枠組み
- 合成性:文の意味は、その部分の意味と統語的な配列から計算される。
- 意味型と表示領域:意味がどう組み合わさるかを決める分類。
- シェーンフィンケル化とλ記法:関係の関数的表現。
- 型駆動の解釈:結合される部分の意味型によって導かれる解釈。
第4〜6章:修飾、束縛、量化子
- 述語抽象:痕跡を含む文から関係節が述語を作る仕組み。
- 前提と主張:定記述に適用されるこの区別。
- 一般化量化子:DPが集合の集合を表示し、限定詞が集合間の関係となること。
第7〜12章:量化、照応、内包
- 量化子移動と柔軟な型:目的語位置の量化子の型の不一致への二つの解決法。
- 束縛と共指示:省略における「ずさんな同一性」の背後にある区別。
- E型代名詞:記述として解釈される代名詞。
- 内包:評価の状況によって変わる意味。
批判的分析
長所
- 段階的で累積的な構成。 目次は集合と関数から出発し、最小限の文法を経て、量化子移動と照応にいたる。各章が一つずつ拡張を加える。
- 導出を技能として教える。 出版社は意味論を「行う」ことを強調しており、目次にも分析に加えて証明、定理、方法論的所見が目立つ。
- 一貫して統語論と結びついている。 θ基準、量化子移動、束縛の各章が、意味分析を生成文法の統語構造と関係づける。
- 論争を避けない。 前提的量化句の論争的な事例や非交差的形容詞についての節は、競合する分析を提示する。
短所
- 前提知識が要る。 最初の章から、生成文法の樹形図、基本的な論理、集合論に通じていることが必要である。
- 外延が中心で、内包は短い終章のみ。 内包は「第一歩」と題された最終章でようやく現れるため、内包的な話題は導入にとどまる。
- 1990年代の枠組みのスナップショット。 1998年の書物であり、当時の分析と統語論上の仮定を反映している。
コースにおける位置づけ
このコースの意味論・語用論の書目の中で、ハイム&クラッツァーは形式的な一冊である。クルースの Meaning in Language、サイードの Semantics、ハーフォード、ヒースリー、スミスの Semantics: A Coursebook は、完全な形式体系を用いずに意味を提示する入門書である。レヴィンソンの Pragmatics とバーナーの Introduction to Pragmatics は、文脈の中の意味を扱う。
正確な導出が必要になったときに、入門書のあとでハイム&クラッツァーを読むとよい。レヴィンソンとは、文脈依存的な話題に対する合成的な対応物として組み合わせられる。
本書の使い方
意味論の入門講義を履修し、集合論と論理の知識があり、統語の樹形図に慣れた大学院生・学部上級生に向く。
読み方の計画:
- 中核: 第1〜3章を順に、練習問題を解きながら読む。以降のすべてが型の体系の上に成り立つからである。
- 次に: 第4〜6章、その後に量化を扱う第7・8章。
- 分岐: 代名詞と省略の第9〜11章、内包の第12章。
練習問題は必ず解くこと。出版社は、練習が理解の確認と今後の課題への手がかりになると述べており、本書の方法は導出を自分で再現することに依存している。
