01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Bauer, L., Lieber, R., & Plag, I. (2015). The Oxford Reference Guide to English Morphology. Oxford University Press.
章の要約
本書は英語の語構造を記述した参考書で、29章・6部、約690ページからなる。出版社によれば、記述が大規模コーパス(Corpus of Contemporary American English と British National Corpus を含む)に基づくこと、そして形式と意味を同等に重視していることが特色である。初版は2013年で、2015年版はペーパーバックである。
第I部「導入」:第1〜4章
第1章 Aims and Structures は本書の範囲と構成を示す。第2章・第3章(Basic principles: terminology、Basic principles: methods)は、以降の記述で用いる用語と方法を提供する。第4章 Orthography は、形態論の綴り字(正書法)の面を扱う。
第II部「屈折」:第5〜8章
屈折の章は品詞ごとに進む:Verb inflection、Adjective and adverb inflection、Noun inflection、Function words: pronouns, determiners, wh-forms, deictics。
第III部「派生」:第9〜18章
最も長い部である。第9章 Derivation: phonological considerations は、接辞付加と音構造の相互作用を扱う。続く章は、何が派生され何を意味するかによって整理されている:派生名詞が三つの群(出来事・状態・結果、人・参与者、性質・集合・その他の抽象名詞)に分けられ、次に派生動詞、派生形容詞、派生副詞が続く。最後の三章は、時間と空間の場所表現(Locatives of time and space)、否定(Negatives)、大きさ・量・態度(Size, quantity, and attitude)を扱う。出版社は、この部に形容詞の形成、場所表現、否定、評価的な語形成など、研究が比較的少ない領域が含まれると述べている。
第IV部「複合」:第19〜20章
Compounds: formal considerations と Compounds: semantic considerations の二章が、複合語の形式面と意味面を分けて論じる。
第V部「相互作用」:第21〜23章
第21章 Combination of affixes、第22章 Affixation on compounds and phrases、第23章 Paradigmatic processes は、前の部で個別に記述された過程がどのように組み合わさるかを検討する。
第VI部「テーマ」:第24〜29章
最後の諸章は記述から分析へと移る:Inflection versus derivation、The analysis and limits of conversion、Blocking, competition, and productivity、The nature of stratification、English morphology in a typological perspective、English morphology and theories of morphology。
主要概念
第I・II部:導入と屈折
- 用語と方法:以降の章が依拠する枠組みとコーパスに基づく手順。
- 正書法:形態論の綴り字の面。
- 品詞別の屈折:動詞、形容詞・副詞、名詞、機能語を別々に扱う。
第III〜V部:派生・複合・相互作用
- 出力範疇別の派生:名詞、動詞、形容詞、副詞、さらに場所表現、否定、大きさ・量・態度。
- 複合:複合語の形式的・意味的分類。
- パラダイム的過程:接辞を単に積み重ねるだけではない語形成。
第VI部:テーマ
- 転換:顕在的な接辞を伴わない範疇変化の分析と、その限界。
- 阻止・競合・生産性:なぜ可能な語が作られないことがあるのか、競合する過程の使い分けを何が決めるのか。
- 層化:英語の形態が層に分かれるかという問題(第27章)。
批判的分析
長所
- 全編がコーパスの証拠に基づく。 記述は作例ではなく大規模コーパスに基づき、データが豊富だとされる。英語の語を研究する際の実例の出典として使える。
- 網羅的な範囲。 出版社は、屈折と語形成の両方を含む現代英語の初の包括的な扱いだと述べている。章立てもそれを裏づけており、よく研究された名詞・動詞にとどまらず、副詞、場所表現、否定、評価的な形成にまで及ぶ。
- 記述と理論の分離。 第II〜V部が事実を記述し、それが形態論の理論に何をもたらすかを問うのは第VI部だけである。データが欲しい読者は、特定の枠組みを採らずに本書を使える。
- 評価。 出版社は、本書が2015年のブルームフィールド図書賞を受賞したと記している。
短所
- 参考書であって講義用の教科書ではない。 品詞と過程による構成、接辞・人名・事項の別々の索引は、通読よりも参照に向いており、形態論への穏やかな入口でもない。
- 英語に限られる。 類型論の章を除けば英語のみを扱うため、言語横断的な教科書の代わりにはならない。
- 理論は最後に置かれる。 理論的な議論を期待する読者には、それが最終部に凝縮されているように見えるだろう。
コースにおける位置づけ
このコースの他の形態論の書籍は教科書である。リーバーの Introducing Morphology とアロノフ&フデマンの What is Morphology? は例と練習問題のある学部向け入門書、カタンバ&ストーナムの Morphology は理論志向の入門書、ボーイの The Grammar of Words とハスペルマート&シムズの Understanding Morphology は言語横断的・理論的な観点から分野を扱う。オックスフォードのガイドは種類の異なる本で、これらのいずれかを読んだあとに、英語が実際にどうなっているかを詳しく確かめるために手に取る。
授業で使う教科書と併せ、いま学んでいる語形成の過程に対応する章を引くとよい。第24〜29章は、ハスペルマート&シムズやボーイの理論的議論と並べて読むと効果的である。
本書の使い方
形態論の授業を受け、英語の音韻論と統語論の基礎知識がある学生、および英語の語の記述的な情報を必要とする研究者に向く。
実践的な使い方:
- 中核: 用語と方法を扱う第2・3章、そのうえで学習中の過程に関する章。
- 研究プロジェクト向け: 第III・IV部を確認された型のカタログとして使い、接辞索引で個々の形式を探す。
- 理論向け: 関連する記述の章を読んだあとで、第24〜29章をひとまとまりとして読む。
- 任意: 第4章(正書法)と第28章(類型論)は、テーマに関わらなければ飛ばしてよい。
最初から通読せず、具体的な疑問に答える章を選んで読むこと。
