01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Lieber, R. (2021). Introducing Morphology (3rd ed.). Cambridge University Press.
章の要約
本書は Cambridge Introductions to Language and Linguistics シリーズの一冊である。本文は11章、約250ページ(1〜248ページ)からなり、その後に短い読書案内、用語集、参考文献、索引が続く。前付けには3つの版すべての序文が残され、国際音声記号と、英語の子音・母音の調音点と調音様式の表が加えられている。出版社は本書を、言語学の予備知識があまりない学部生向けの生き生きとした入門書とし、形態論のデータを見つけて分析することを軸に組み立てられていると説明している。
第1〜2章:What Is Morphology?;Words, Dictionaries, and the Mental Lexicon
第1章は最も短い章(約10ページ)で、この分野への導入となる。第2章(約24ページ)は、語、辞書、心的辞書を扱う。この版では、言語コーパスの使い方についての最新の詳しい紹介も含まれており、データを集めて分析するという本書の重点を支えている。
第3〜5章:Lexeme Formation: The Familiar;Productivity and Creativity;Lexeme Formation: Further Afield
これらの章は新しい語彙素がどのように作られるかを扱う。第3章は本書で最も長い章(約36ページ)で、第4章(約16ページ)は生産性と創造性に移り、第5章(約18ページ)は第3章で扱った身近なパターンの先へ進む。三つの章は合わせて、出版社が中心的な話題として挙げる派生と生産性に対応している。
第6〜7章:Inflection;Typology
屈折を扱う第6章(約32ページ)は二番目に長い章である。第7章「Typology」(約28ページ)は、形態類型論、すなわち言語が語の構造をどのように組織するかの比較へと視野を広げる。
第8〜9章:Words and Sentences: The Interface between Morphology and Syntax;Sounds and Shapes: The Interface between Morphology and Phonology
二つのインターフェースの章は、形態論の境界を順に扱う。第8章(約16ページ)は統語論、第9章(約26ページ)は音韻論との関係を扱う。
第10〜11章:Theoretical Challenges;Theories of Morphology
最後の二章は記述から理論へと移る。第10章「Theoretical Challenges」は約22ページである。第11章「Theories of Morphology」(約20ページ)は第3版で新しく加わった章で、出版社はこれを、現在の複数の理論的枠組みを扱う最終章と説明しており、学生が形態論の理論を理解し、理論的提案を支持したり反証したりできるようになることをめざしている。
主要概念
第1〜2章
- 心的辞書:話者が蓄えている語についての知識。出版社が本書の基本概念の一つとして挙げている。
- 言語コーパス:実際の言語データの集まり。第2章で形態論の証拠の源として紹介される。
第3〜7章
- 語彙素形成と派生:新しい語が作られる過程。第3章と第5章で扱われる。
- 生産性:あるパターンが新しい語をどれだけ自由に作れるか(第4章)。
- 屈折:語の文法的な形(第6章)。
- 形態類型論:語構造の言語横断的な分類(第7章)。
第8〜11章
- 形態論と統語論のインターフェースおよび形態論と音韻論のインターフェース:章題が示す二つの境界。
- 形態論の理論:第11章で紹介される複数の理論的枠組み。
批判的分析
長所
- データを使う初学者向けの設計。 出版社によれば、本書は予備知識の少ない学部生向けで、形態論のデータを見つけて分析する方法を教え、学生が自分でデータを集めるよう促す実践的な活動を備えている。
- 豊富な練習問題。 出版社は多様な練習問題を主要な特色として挙げており、第3版では例と練習問題が新しくなっている。
- バランスのとれた言語の扱い。 出版社によれば、本書は多様な言語のデータを用い、英語の形態論とほかの言語の形態論のバランスをとっているため、教員は例を選びやすい。
- コンパクトな分量。 約250ページ・11章という分量は一つの入門講義に収めやすく、章の順序は基本概念からインターフェース、そして理論へと進む。
- 最新の版。 第3版では、第2章にコーパス入門が加わり、理論的枠組みを扱う新しい最終章が追加された。
短所
- 理論は最後に、短く扱われる。 第10章と第11章を合わせても約42ページなので、競合する理論の扱いは入門にとどまり、本格的な比較にはなっていない。
- インターフェースの章が短い。 統語論を扱う第8章は約16ページであり、語に関する詳細な統語論的議論が必要な学生はほかの資料にあたる必要がある。
- 英語の参照書ではない。 この分量の教科書は英語の語形成の完全な記述ではない。そのためには、コーパスデータと辞書に基づく Bauer・Lieber・Plag の大規模な参照書が本サイトに掲載されている。
コースにおける位置づけ
本書は、理論よりも実践的な性格の強い最初の教科書である。本サイトの形態論のほかの本のうち、Aronoff と Fudeman の What Is Morphology? は、一貫した事例研究を伴う簡潔な問題中心の入門書であり、Booij の The Grammar of Words は語の構造を文法全体の一部として扱う。Lieber の本は、心的辞書から屈折・類型論を経てインターフェースへと進む簡潔な章立てを求め、最初からコーパスを使った作業を行いたい授業に自然に適している。
講義がより理論的になったら、Katamba と Stonham の Morphology や Haspelmath と Sims の Understanding Morphology に進むとよい。後者は、形態素に基づくモデルと語に基づくモデルを対比する、理論を意識した教科書と紹介されている。The Oxford Reference Guide to English Morphology(Lieber が Laurie Bauer、Ingo Plag と共著)は、教科書というより、英語のデータを調べるための大規模な記述的参照書である。
本書の使い方
本書は、形態論に初めて触れる学部生に向いている。言語学の一般的な入門講義を受けていると、特に前付けにある音声記号の理解に役立つが、出版社はそれを要件にはしていない。
実践的な進め方は次のとおり。
- 中核: 第1〜7章を順に読む。後の章が前提とする形態論の語彙(語、語彙素、派生、屈折、生産性、類型論)がここにまとまっている。
- 次に: 基本が固まったら第8・9章へ進む。第9章はIPA表を手元に置いて読む。
- 理論: 第10〜11章は、インターフェースの章のあとか、最初のコースの最後に読むのがよい。短い講義では省略できる。
- 練習: 練習問題は読み進めながら解き、第2章のコーパス入門を早めに活用して、後の分析の章で自分で集めたデータを使えるようにする。
- 無料の教材: 出版社は、この教科書に無料の教材と教員専用の教材があるとしている。利用できるものは出版社のページで確認すること。
