01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Haspelmath, M., & Sims, A. D. (2010). Understanding Morphology (2nd ed.). Routledge.
章の要約
本書は「Understanding Language」シリーズの約380ページの教科書で、全12章に、練習問題の解答、参考文献、専門用語集、言語索引と事項索引が付く。出版社によれば、第2版は近年の研究に沿って全面的に改訂され、中心的な主題を浮き彫りにする「ビッグピクチャー」の問いと、各章の研究型の練習問題が加わった。各章の末尾には要約、読書案内、練習問題がある。順序は、語構造の基本単位から屈折と派生を経て、統語論・音韻論との接点へ進み、最後に頻度の影響を扱う。
第1章:Introduction
冒頭の章は、語構造の研究と、本書が扱う範囲を紹介する。
第2章:Basic Concepts
形態素、異形態、語形、語彙素といった概念を含め、全体で使う用語を整える。
第3章:Rules
形態規則を扱い、語形成のモデル化における、形態素に基づく考え方と語に基づく考え方の競合を紹介する。
第4章:Lexicon
語彙目録と、そこに何が登録されるかという問題を扱う。
第5章:Inflection and Derivation
二つの主要な形態過程とその違いを扱う。出版社が挙げる中核領域の最初のものである。
第6章:Productivity
生産性、すなわちあるパターンが新しい語の形成にどこまで使えるかを扱う。出版社は、第2版で改訂された生産性と変化の議論を特に挙げている。
第7章:Morphological Trees
複合語を含む複雑な語の構造を樹形図で表す方法を示す。
第8章:Inflectional Paradigms
パラダイムと屈折クラス、すなわち屈折形がパターンをなす集合に整理される仕方を扱う。
第9章:Words and Phrases
語と句の境界を、接語を含めて論じる。形態論と統語論の接点である。
第10章:Morphophonology
音韻論との接点を扱い、音による条件づけを受ける異形態も含む。
第11章:Morphology and Valence
動詞の項の数や種類を変える形態を扱う。
第12章:Frequency Effects in Morphology
使用頻度が形態的パターンにどう影響するかを考える。登録と生産性の議論に結びつく話題である。
主要概念
第1〜4章
- 形態素、異形態、語形、語彙素:以後の分析が依拠する基本単位と区別。
- 形態素に基づくモデルと語に基づくモデル:形態規則を定式化する二つの競合する方法。
- 語彙目録:蓄えられた語やパターンの置き場と、何をそこに載せる必要があるかという問題。
第5〜8章
- 屈折と派生:ある語の別形を作ることと、新しい語を作ることの対比。
- 生産性:あるパターンが新しい形を生み出す力。
- 形態樹:複雑な語や複合語の内部構造の表示。
- 屈折パラダイムと屈折クラス:形が集合に配列される仕方と、同じ集合を共有する語のクラス。
第9〜12章
- 接語:語のようでもあり接辞のようでもある要素。
- 形態音韻論と異形態:音のパターンが形態素の形をどう左右するか。
- 結合価を変える形態:動詞の項を変える接辞付加。
- 頻度効果:使用頻度が形の記憶と変化に及ぼす影響。
批判的分析
長所
- 言語横断的な幅広さ。 出版社によれば、幅広い形態現象が多種多様な言語から取られており、言語索引と事項索引も付く。読者は英語の例に縛られない。
- 理論はデータのために。 出版社によれば、理論は分かりやすい言葉で、データを明らかにすることを目的として示され、機能主義と生成的アプローチの両方が使われ、論じられる。出版社が引用するジャネット・ピエールウンベール(Janet Pierrehumbert)は、この改訂が初版の豊富な類型論的例を残しつつ、生産性と変化についての最近の進展の明快な議論を加えたと評価している。
- 学習支援の組み込み。 各章に要約、読書案内、練習問題があり、巻末に理解確認問題の解答があって、第2版ではビッグピクチャーの問いと研究型の練習問題が加わった。教員がいなくても使える。
- 構造とともに変化も扱う。 出版社は、類推や文法化といった通時的現象が、語構造の共時的研究と並んで扱われると述べている。
短所
- 英語の参考書ではない。 例は英語だけでなく多様な言語から取られているため、英語の語形成を体系的に知りたい学生には、同じリストのオックスフォードのガイドのような参考書が必要である。
- 理論は手段であって主題ではない。 出版社は、理論はデータを明らかにするために使われ、それ自体が目的ではないと述べている。一つの枠組みを深く知りたい読者は、理論志向の教科書や原典に当たる必要がある。
- 最近の論争は追加の読書が必要。 頻度効果のような比較的新しい話題や、改訂された生産性の議論は、読者が読書案内をたどって研究文献に進むことを前提としている。
コースにおける位置づけ
形態論のリストの中で、本書は言語横断的な視野を持ち、現在の分析上の論争にも触れる教科書である。Lieber の Introducing Morphology は言語学の背景が少ない学生向けの学部入門、Aronoff と Fudeman の What is Morphology? は問題を中心にした簡潔な入門で、どちらを先に読んでもよい。Booij の The Grammar of Words と Katamba と Stonham の Morphology は同様に理論志向の入門書で、同じ話題について第二の見方を得るのに使える。Bauer、Lieber、Plag の The Oxford Reference Guide to English Morphology は英語に関する大部の記述的参考書で、英語のデータの手引きとして役立つ。
本書の使い方
出版社は本書を、言語学の初学者と関連分野の読者のための形態論の最初の入門として位置づけ、この分野の予備知識を前提としていない。簡単なグロスを含む言語学の基礎があれば、後半の章は読みやすくなる。
第1〜5章は順に読む。単位と、屈折と派生の対比がここで確立され、残りの章はそれを使うからである。第6〜8章(生産性、樹形図、パラダイム)は分析の中核であり、第9〜11章は接点を扱うので、統語論や音韻論の授業に合わせた順で読んでもよい。第12章は最後に、または第6章と並べて読める。理解確認問題を解いて解答と照合し、研究型の練習問題と読書案内を使って原典に進む。
