01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Horsey, K., & Rackley, E. (2025). Tort Law (9th ed.). Oxford University Press.
章の要約
本書は二十一の章からなり、約830ページである。総論的な序論のあと、九つの章が過失不法行為(negligence)を、基本原則から、特別な注意義務の問題、義務違反、因果関係、抗弁まで順に追う。残りの章は、その他の主要な不法行為、使用者責任、損害賠償を扱う。巻末には、注釈付きの事例問題とその解答の概要、および各章末問題の解答がある。出版社によれば、各章の冒頭の事例問題は法を文脈の中に置いて場面を設定し、注釈付きの制定法と判決は難しい点を説明する。公表されているのは章題だけなので、以下の要約は章題と出版社の説明から範囲を示すにとどめる。
第1~3章:序論、過失不法行為への序論、注意義務の基本原則
第1章「序論」は約25ページの総論的な導入である。第2章と第3章は過失不法行為の連なりを始め、まずこの不法行為を紹介し、続いて注意義務の基本原則を示す。
第4~7章:特別な注意義務の問題
四つの章が、注意義務が争われる場面を扱う。「不作為と第三者の行為」(第4章)、「精神的損害」(第5章)、「公的機関」(第6章)、「経済的損失」(第7章)である。出版社は、精神的損害に関する Paul v Royal Wolverhampton NHS Trust、Polmear v Royal Cornwall Hospital NHS Trust、Purchase v Ahmed([2024] UKSC 1)の新しい扱いを強調している。
第8~10章:義務違反、因果関係、抗弁
第8章は「義務違反:注意の水準」、第9章は「因果関係と損害の遠隔性」、第10章は「過失不法行為に対する抗弁」である。新版の紹介は、義務違反に関する McCulloch v Forth Valley Health Board([2023] UKSC 26)、因果関係に関する Holmes v Poeton Holdings Ltd([2023] EWCA Civ 1377)、抗弁に関する Hassam v Rabot([2024] UKSC 11)を挙げている。
第11~14章:特定の形態の責任
「占有者責任」(第11章)、「製造物責任」(第12章)、「使用者の責任」(第13章)、「制定法上の義務違反」(第14章)の四つの特定の責任形態を取り上げる。
第15~19章:故意による不法行為と財産に関わる不法行為
第15章「人身に対する故意の侵害」に、「プライバシーの侵害」(第16章)と「名誉毀損」(第17章)が続く。第18章「土地への不法侵入とニューサンス」と第19章「Rylands v Fletcher の準則に基づく訴え」は、合わせて約70ページである。
第20~21章:代位責任、死亡および人身傷害に対する損害賠償
本書は「代位責任」(第20章)と「死亡および人身傷害に対する損害賠償」(第21章)で終わる。出版社は、代位責任に関する新しい権威として Trustees of the Barry Congregation of Jehovah's Witnesses v BXB([2023] UKSC 15)を挙げている。
注釈付き事例問題と解答
巻末には「注釈付きの事例問題と解答の概要」(671ページから)と「各章末問題の解答」(733ページから)がある。
主要概念
過失不法行為
- 注意義務:不法行為の最初の要件で、第3章から第7章にかけて、不作為、第三者、精神的損害、公的機関、経済的損失を含めて展開される。
- 注意の水準と義務違反:被告が基準に達しなかったかどうかを判断する第8章の基準。
- 因果関係と遠隔性:義務違反と損害のつながり、およびその限界(第9章)。
- 抗弁:責任が軽減または排除される仕組み(第10章)。
その他の不法行為と責任
- 占有者責任、製造物責任、使用者の責任、制定法上の義務違反:第11章から第14章の特定の責任。
- 故意による侵害、プライバシー、名誉毀損:人身と名誉を保護する不法行為で、第15章から第17章。
- 不法侵入、ニューサンス、Rylands v Fletcher の準則:第18章と第19章の土地に関わる責任。
責任と救済
- 代位責任:他人の不法行為についての責任(第20章)。
- 死亡および人身傷害に対する損害賠償:賠償額の算定(第21章)。
批判的分析
長所
- 初めての授業のために作られている。 出版社は、本書が学生を「予備知識ゼロから、積極的で批判的な思考ができる人へ」導くと紹介しており、章の順序は、過失不法行為から始まり、その他の不法行為、代位責任、損害賠償へと進む。
- 全体を通じた事例問題。 各章の冒頭に事例問題が置かれ、解答の概要が用意され、注釈付き版が検討すべき論点と判例を示す。試験準備に直接役立つ。
- 批判的思考を促す工夫。 「カウンターポイント」と「立ち止まって考える」のコラムが、論争や改革の問題に取り組むよう読者に促し、注釈付きの制定法と判決が、一次資料を読み分析する技能の手本になる。
- デジタルの支援。 電子書籍とLaw Troveには、各章の著者動画、択一式の自己点検問題、主要な不法行為のためのインタラクティブな決定ツリーが加わる。
短所
- 分量。 約830ページあり、初めての授業には長い本であるため、章ごとに選んで読むことになるだろう。
- 過失不法行為が最大の割合を占める。 21章のうち9章が狭い意味での過失不法行為にあてられている。ニューサンス、土地への不法侵入、Rylands v Fletcher は合わせて約70ページなので、土地に関する不法行為を重視する授業では追加の読書が必要になるかもしれない。
- いくつかの支援はデジタル版のみ。 動画、択一式問題、決定ツリーはLaw Troveと電子書籍でしか利用できず、紙の版の読者は使えない。
コースにおける位置づけ
Horsey と Rackley の本は、この不法行為の書籍リストの中で、学生に取り組みやすい教科書であり、初めての授業の主たるテキストとして適している。McBride と Bagshaw の Tort Law は、もう一つの一般的な授業用教科書である。Lunney、Nolan、Oliphant の Tort Law: Text and Materials は、原資料をもっと読みたい学生のために、判例や論文の抜粋を加える。Markesinis and Deakin's Tort Law は包括的な教科書であり、Street on Torts と Winfield and Jolowicz on Tort は、さらなる読書や詳細な権威の確認に使う、より大部の文献である。
コースの他の二冊は、別のことをしている。Cane と Goudkamp の Atiyah's Accidents, Compensation and the Law は、不法行為を保険や補償制度と並べて論じており、法理を理解してから使うと有用である。Stevens の Torts and Rights は、不法行為法は権利の法であると論じる専門書で、理論に関する小論文に向いている。
本書の使い方
本書は、不法行為法の事前の学習を前提とせず、この科目を初めて学ぶ学生、特に問題演習と批判的議論の道しるべを重んじる学生のために作られている。
実践的な進め方は次のとおりである。
- 中核: 過失不法行為を扱う第2章から第10章を順に読む。各章は、前半で紹介される義務と違反の枠組みの上に積み上げられているからである。代位責任の第20章と損害賠償の第21章が中核を締めくくる。
- シラバスに応じて: 第11章から第19章は、授業がその他の不法行為を扱う順に読めばよい。ニューサンス、土地への不法侵入、Rylands v Fletcher は第18章と第19章にまとまっている。
- 演習: 各章を読む前に冒頭の事例問題に取り組み、その後で解答の概要と比べる。復習には章末問題と巻末の注釈付き事例問題を使い、出版社が挙げる最近の最高裁判決は、現在の権威のチェックリストとして使う。
