01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Lunney, M., Nolan, D., & Oliphant, K. (2017). Tort Law: Text and Materials (6th ed.). Oxford University Press.
章の要約
第6版は全18章、約1000ページである。「テキストと資料」の形式をとり、各節の冒頭で著者が関連する法を概説し、そのあとに判決、政府報告書、学術文献の抜粋を掲げ、解説と参考文献の提案を添える。章の順序はイングランドの不法行為法の講義に通例の配列で、故意の不法行為から過失、ニューサンス、名誉毀損、プライバシー、損害賠償へと進む。
第1章:General Introduction(総論)
個々の不法行為に入る前に、不法行為法とその目的を概観する。不法行為法の目的と、責任を支える理由を知るには、まずこの章を読む。
第2章:Intentional Interference with the Person(人身に対する故意の侵害)
人身への故意の加害、すなわちアソールト、バッテリー、不法監禁と、Wilkinson v Downton に結びつく故意による加害の責任、およびそれらに対する抗弁を扱う。
第3~6章:過失の構造
第3章は過失とその要素(注意義務、義務違反、因果関係、損害)を紹介する。第4章は義務違反と注意の基準を扱い、損害の蓋然性と重大性、予防措置の費用、被告の活動の価値を検討する。第5章は因果関係と責任の範囲を扱い、「but for」テスト、その難点(複数原因の場合を含む)、損害の遠隔性、介在行為を論じる。第6章は過失に対する抗弁、すなわち同意(volenti non fit injuria)、寄与過失、責任の排除、違法性を取り上げる。
第7~10章:個別の場面における注意義務
注意義務は一箇所でまとめて論じられず、困難な領域ごとに四つの章で順に扱われる。精神疾患(第7章)では、一次被害者と二次被害者が区別される。経済的損失(第8章)では、一般的な排除原則と、過失による不実表示・役務に関する Hedley Byrne の例外が扱われる。不作為と第三者の行為(第9章)。公的機関の責任(第10章)では、責任を制限する政策的理由と法定の責務が比較衡量される。
第11~12章:特別な責任制度;ニューサンスと Rylands v Fletcher の準則
第11章は、固有の規則をもつ責任制度、すなわち使用者責任、占有者責任、製造物責任、法定義務違反をまとめる。第12章は公的ニューサンスと私的ニューサンス、および土地から危険物が逸出した場合に関する Rylands v Fletcher の準則を扱う。
第13~14章:名誉毀損;プライバシー
名誉毀損(第13章)は、何が名誉毀損的な言明にあたるか、公表、抗弁、救済、名誉と表現の自由の均衡を検討する。プライバシー(第14章)は、プライバシーと秘密保持の法および人権との関係、私的情報の濫用を論じる。
第15~17章:代位責任;人身傷害の損害賠償;死亡と損害賠償
第15章は、使用者などがどのような場合に被用者の不法行為について責任を負うかを説明する。第16章は人身傷害の損害賠償額がどう算定されるかを示す。第17章は死亡が請求に及ぼす影響を扱い、死者自身の請求権の存続と被扶養者の請求権の両方を含む。
第18章:How Tort Works(不法行為法はどう機能するか)
最終章は個々の不法行為から一歩退き、不法行為制度の全体を考察する。題名のとおり締めくくりの章であり、法理を学んだ後で読むのが最も有益である。
主要概念
第1~2章:序論;故意の不法行為
- 不法行為法の目的:補償や抑止など、後続の各規則を評価するための基準となる目的。
- 人身への故意の加害:アソールト、バッテリー、不法監禁。過失の立証を要しない。
第3~6章:過失
- 注意義務:被告が原告に対して注意を払う法的義務を負っていたこと。Donoghue v Stevenson と Caparo Industries v Dickman に関連する。
- 義務違反と注意の基準:被告の立場にある合理的な人であればどうしたか。
- 因果関係と遠隔性:「but for」テストと、予見可能・予見不可能な結果についての責任の限界。
- 寄与過失:原告自身の落ち度により、認められる損害賠償が減額される。
第7~10章:場面ごとの注意義務
- 一次被害者と二次被害者:精神疾患に関する責任を構造づける区別。
- 純粋経済損失:物理的損害を伴わない財産的損失。原則として排除されるが、責任の引受けがある場合(Hedley Byrne など)は例外。
- 公的機関の責任:注意義務が法定の権限・責務とどう作用し合うか。
第11~17章:その他の不法行為と救済
- 占有者責任と製造物責任:施設や欠陥商品による損害に関する制定法上の制度。
- ニューサンスと Rylands v Fletcher:土地の利用に対する妨害。
- 代位責任:両者の関係を理由に他人の不法行為の責任を負うこと。
- 人身傷害の損害項目:賠償の区分と、それぞれの算定方法。
批判的分析
長所
- 解説だけでなく一次資料がある。 判決、報告書、学術文献の抜粋が収められているため、裁判所の実際の推論と、学説がそれにどう応答するかを学べる。議論と批判的評価を問う授業に適している。
- 各抜粋の前に明快な概説がある。 出版社が強調するように、各節は法の記述から始まるので、抜粋を独力で読み解く必要がない。
- 問題領域ごとの構成。 注意義務は精神疾患、経済的損失、不作為、公的機関に分けて章立てされ、難所ごとに持続的な検討が行われる。最後の章は不法行為を一つの制度として見渡す。
- 参考文献の案内が本文に織り込まれており、レポートの調査に役立つ。
短所
- 初めて学ぶには重い。 約1000ページで抜粋も長く、通常の教科書より負担が大きい。入門書としてよりも、教科書と併用する形が使いやすい。
- 版による制約。 第6版は2017年刊で、その後新版が出ている。注意義務、代位責任、名誉毀損の判例は発展を続けているため、現行法として引用する前に最新の資料で確認する必要がある。
- イングランド・ウェールズ法のみ。 全体がイングランドとウェールズの法を軸に構成されており、他の法域の授業では現地の資料が必要になる。
コースにおける位置づけ
本サイトの不法行為法の書目のうち、教科書と判例資料集の性格を併せ持つのはこの一冊である。Horsey と Rackley の Tort Law は主要判例と政策を軸にした講義用教科書であり、Markesinis と Deakin の Tort Law、McBride の Tort Law、Street on Torts は全範囲を扱う教科書である。いずれも、より短く最初に読むのに向いている。教員が学生に判決そのものを読むよう求める場合や、レポート課題が判例と学術的論争への取り組みを求める場合に、Lunney、Nolan、Oliphant の本は自然な次の一冊となる。
その他の本はより専門的である。Gatley on Libel and Slander は名誉毀損のみを詳述し、本書の第13章を超える内容をもつ。Atiyah の Accidents, Compensation and the Law は、法が保険や社会保障とどう並ぶかを論じる背景研究で、第18章が扱う全体の制度に関心がある読者に向く。Stevens の Torts and Rights は、不法行為法は権利を保護するものだと論じる理論書であり、法理に慣れた後で、第1章の目的をめぐる議論と照らして読むとよい。
本書の使い方
本書は、講義や教科書が並行して進み、その背後にある一次資料を読みたい第二段階の読者に向いている。法制度の入門以上の予備知識は不要だが、抜粋を丁寧に読むことが求められる。
実際的には、講義の順序に従って読むとよい。第1~2章を早めに読み、第3~10章を過失の中核として進める。この部分に試験範囲の大半が集まるからである。第11~17章は、各主題が教えられるたびに読めばよい。第18章は、より大きな主題を復習できるよう、講義の終わりまで取っておくのがよい。
各節では、まず著者の概説を読み、次に抜粋を読み、最後に各抜粋が提起する問題と、後の抜粋がそれに同意するかどうかを短くメモする。レポートの題材には書中の参考文献案内を活用し、書中の法を拠りどころにする前に、制定法と近時の判決を最新の資料で確認する。
