01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Deakin, S., & Adams, Z. (2019). Markesinis and Deakin's Tort Law (8th ed.). Oxford University Press.
章の要約
第8版は912ページで、8つの編に分かれている。出版社は、不法行為法の全般的な概観であり、すべての主要な論点について学術的な議論を十分に扱うとし、コモン・ロー、立法、司法政策の関係を明らかにし、比較法と経済学の視点を加え、この分野を社会経済的な文脈に置くものだと説明している。各編の題名とページ数から、重心の置き方が分かる。過失とその特殊な形態に約260ページが充てられる一方、人身への侵害は約30ページにとどまる。
第I編:Setting the Scene(導入)(約80ページ)
冒頭の編は、法理に入る前にこの分野の枠組みを示すもので、不法行為法を社会経済的な文脈の中に置くという本書の目標に沿っている。後の編が立ち返る枠組みとして読むとよい。
第II編:The Tort of Negligence(過失不法行為)(約160ページ)
本書の中核である。過失の要素を順に扱う。すなわち、注意義務による原則的な責任の根拠づけ、義務違反による過失責任、因果関係と遠隔性による発生した損害への責任である。この編で目立つ主題には、過失による不実表示の責任(Hedley Byrne)や精神的損害がある。
第III編:Special Forms of Negligence(過失の特殊な形態)(約100ページ)
過失が細分化されて生じた特殊な領域を扱う。土地・占有者に関する責任、制定法上の義務違反、そして警察、医療機関、地方当局を含む公的機関・法定機関の責任である。ここでは免責の問題と人権法の関連が生じる。
第IV編:Interference with the Person(人身への侵害)(約30ページ)
人身への侵害を扱う短い編。
第V編:Land, Chattels, and Intentional Interference with Economic Interests(土地、動産、経済的利益への故意の侵害)(約115ページ)
動産への侵害、土地への侵入、ニューサンス(nuisance)、そして経済的利益を故意の侵害から保護する不法行為を扱う。ここでは違法な手段と共謀が中心的な概念になる。
第VI編:Stricter Forms of Liability(より厳格な責任の形態)(約135ページ)
過失責任から離れた責任類型をまとめる。Rylands v Fletcher の準則を含む厳格責任、そして使用者責任と代位責任である。
第VII編:Protection of Human Dignity in Private Law(私法における人間の尊厳の保護)(約120ページ)
名誉毀損および injurious falsehood による名誉の保護と、プライバシーの保護を扱う。
第VIII編:Defences and Remedies(抗弁と救済)(約145ページ)
最終編は、被告が援用できる抗弁、損害賠償、そして複数の責任を含むその他の救済を扱う。
主要概念
第I〜III編:過失
- 注意義務:その状況で注意を払う義務を法が課すかどうかという入口の問い。
- 義務違反、因果関係、遠隔性:過失、事実的因果関係、責任の限界を判断する、その後の要素。
- 公的機関の責任:公的機関・法定機関の責任に関する特別な規則。
第IV〜V編:故意の不法行為と財産に関する不法行為
- 侵入とニューサンス:直接的・間接的な侵害から土地を守ること。
- 経済的不法行為:違法な手段を含む、事業上の利益への故意の侵害に対する責任。
第VI〜VIII編:厳格責任、尊厳、救済
- 厳格責任と代位責任:被告自身の過失を証明しなくても生じる責任。
- 名誉毀損とプライバシー:名誉と私生活の保護。
- 損害賠償と救済:法が補償し、差し止め、あるいは権利を確認するための手段。
批判的分析
長所
- **幅広い範囲。**8つの編が、過失、故意の不法行為、財産に関する不法行為、厳格責任、尊厳に関する不法行為、救済を扱っており、出版社が述べるように、教員に幅広い題材を提供する。
- **文脈の中の法。**著者は、コモン・ローと立法および司法政策を関連づけ、比較法と経済学の視点を加えている。規則だけでなく規則の背後にある理由を論じなければならない学生に役立つ。
- **同時代性と典拠の幅。**第8版として、英国最高裁判所の判決を引用しており、判例表には他の法域の判例が別立てで掲げられている。
- **参照に便利。**英国判例表、他法域の判例表、立法表、国際文書表が別々にあり、索引もあるため、参考書として使いやすい。
短所
- **分量。**912ページの大著で、1年生には一つの科目に必要な量を超えているだろう。
- **規則と議論の併存。**出版社は、本書が記述的であり同時に反省的でもあると述べている。そのため、簡潔な規則の説明だけを求める学生は、学術的な議論の中から規則を拾い出す必要がある。
- **版の年による古さ。**2019年刊のため、その後の判例や立法は扱っていない。過失と公的機関、名誉毀損に関する現行法は別途確認すること。
コースにおける位置づけ
このコースの図書リストの中で、Markesinis と Deakin の本は、比較法と経済学の次元を備えた、この分野全体を扱う本格的な教科書である。より平易な入門としては、この分野に初めて触れる学生のために書かれた Horsey と Rackley の Tort Law があり、McBride の Tort Law と Witting の Street on Torts も範囲がほぼ同程度の講義用教科書である。Goudkamp らの Winfield and Jolowicz on Tort も、包括的な学部向けの教科書である。
専門的に掘り下げるには、Mullis らの Gatley on Libel and Slander が第VII編の名誉毀損を拡充する。Cane と Goudkamp の Atiyah's Accidents, Compensation and the Law と Stevens の Torts and Rights は、それぞれより広い補償制度と権利論の視点から入るもので、本書か同種の教科書の法理を学んだあとで読むのがよい。
本書の使い方
本書は、不法行為法を通年科目あるいは負荷の高い科目として履修する法学生や、規則に加えて学術的な議論を知りたい人に向く。契約法とイギリスの裁判所制度に親しんでいると助けになる。
読み方の例:
- **中心:**第II編全体、第III編のうち占有者・制定法上の義務・公的機関に関する部分、第V編のうち土地への侵入とニューサンスの部分。
- **次に:**第VI編(厳格責任と代位責任。多くの講義で扱われる)と第VIII編(抗弁と損害賠償)。
- **任意:**第IV編(短い)、第V編の経済的不法行為、第VII編。シラバスに合わせて選ぶ。
各編の政策論は、そこに挙げられた判例とあわせて読み、最近の判決と照らして確認すること。本版は2019年のものである。
