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歴史学

歴史学

世界の道:世界史における歴史的出会い

Robert W. Strayer; Eric W. Nelson

英語原題: Ways of the World: A Brief Global History

包括的な世界史教科書で、文化的遭遇、社会変化、および古代から現在まで人類社会を形作ってきた相互関係に焦点を当てている。

難易度レベル
中級
学術レベル
学部
世界史文化的遭遇社会変化比較史学世界の相互関係歴史的変遷文明史グローバル史

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Strayer, R. W., & Nelson, E. W. (2022). Ways of the World: A Brief Global History (5th ed., value edition, combined volume). Bedford/St. Martin's.

章の要約

第5版は6部23章からなり、その前にプロローグ「宇宙の歴史から人類の歴史へ(From Cosmic History to Human History)」と、一次史料の扱い方についての短い節が置かれている。各部は時代の枠組みを示す「ビッグ・ピクチャー(Big Picture)」という論考で始まり、各章の最後には「結論と考察(Conclusions and Reflections)」、具体的事項と中核となる考え(Core Ideas)を振り返る「Revisiting」の問い、そして「より広い視野(A Wider View)」が続く。バリュー版は本文の叙述のみを収める。出版社によれば、「Working with Evidence」と「Historians' Voices」という史料の特集は総合版(comprehensive edition)に属し、Achieveプラットフォームで利用できる。合本版はすべての章を収め、第1巻は第1〜12章、第2巻は第12〜23章を扱う。

第1部:はじめに、前600年まで(First Things First;第1〜2章)

第1章「最初の人々、最初の農耕民:歴史の大部分を一章で、前3500年まで」 は、アフリカからユーラシア、オーストラリア、アメリカ大陸、太平洋への人類の移動、旧石器時代の生活様式、農耕への移行をたどり、牧畜社会、農耕村落社会、首長制社会で締めくくる。第2章「最初の文明:都市、国家、不平等な社会」 は、都市革命、階級とジェンダーの階層化による平等の崩壊、国家の成立、そしてメソポタミアとエジプトの比較を検討する。

第2部:第二波の時代における継続と変化、前600年〜後600年(第3〜6章)

ユーラシアと北アフリカを三つのテーマ別の章で扱う。第3章「国家と帝国」 はペルシア人とギリシア人を対置し、ローマ帝国と中国の帝国を比較し、インドを「断続的な帝国」の事例とする。第4章「文化と宗教」 は、中国における法家・儒家・道家の答えから、インドの宗教、ゾロアスター教とユダヤ教、ギリシアの合理主義、そして仏教と比較したキリスト教の誕生へと進む。第5章「社会と不平等」 は、中国の階級、インドのカースト、ローマ帝国の奴隷制、対照的な家父長制を扱う。第6章「共通性と多様性」 はアフリカ、アメリカ大陸、太平洋のオセアニアに目を向け、メロエ、アクスム、マヤからチャビン、モチェ、バントゥー・アフリカ、太平洋の人々までを取り上げる。

第3部:第三波の時代における文明と遭遇、600年〜1450年(第7〜12章)

第7章「交易と文化」 は、長距離の交流をシルクロード、インド洋を渡る「海の道」、サハラを越える「砂の道」、そしてアメリカ大陸のネットワークとして整理する。第8章「中国と世界」 は唐・宋の中国、朝貢体制、朝鮮・ベトナム・日本、中国仏教を扱う。第9章「イスラームの諸世界」 は新しい宗教とその帝国をたどり、インド、アナトリア、西アフリカ、スペインにおけるイスラームの遭遇を比較する。第10章「キリスト教世界の諸相」 は、アジアとアフリカでのキリスト教の縮小、ビザンツとロシア、比較の視点から見た西欧を扱う。第11章「世界の舞台に立つ牧畜民:モンゴルの時代」 は、モンゴル帝国をユーラシアのネットワークとして示し、ペストで締めくくる。第12章「15世紀の諸世界」 は、旧石器的社会や村落社会から明代中国、ヨーロッパ、イスラームの諸帝国、アステカとインカの帝国まで、1500年ごろの世界を概観する。

第4部:近世の世界、1450年〜1750年(第13〜15章)

三つの「変容」の章からなる。第13章「政治の変容:帝国と遭遇」(アメリカ大陸のヨーロッパ帝国、大量死とコロンブス交換、ロシア・清・ムガル・オスマンの諸帝国)、第14章「経済の変容:交易とその帰結」(アジアの交易、銀、毛皮交易、大西洋奴隷貿易体制)、第15章「文化の変容:宗教と科学」(キリスト教のグローバル化、イスラーム世界・中国・インドにおける刷新、近代科学の誕生)である。

第5部:世界史におけるヨーロッパの時代、1750年〜1900年(第16〜19章)

部の論考は「ヨーロッパの中心性とヨーロッパ中心主義の問題」を論じる。第16章「大西洋の諸革命と世界への反響」 は北アメリカ、フランス、ハイチ、ラテンアメリカの革命を比較し、奴隷制廃止、ナショナリズム、初期フェミニズムをたどる。第17章「工業化の諸革命」 は、イギリスの産業社会、アメリカ合衆国とロシア、ラテンアメリカを取り上げる。第18章「アジア、アフリカ、オセアニアにおける植民地での遭遇、1750年〜1950年」 は植民地経済とアイデンティティの変化を比較する。第19章「衝突する諸帝国」 は中国とオスマン帝国を比較し、日本の明治の近代化と対照させる。

第6部:長い20世紀、1900年〜現在(第20〜23章)

第20章「戦争と革命、1900年〜1950年」 は二つの世界大戦、ソ連の共産主義、大恐慌、ファシズム、中国革命を扱う。第21章「変わりゆく世界の情勢、1950年〜現在」 は冷戦、脱植民地化、共産主義時代の終わりを扱う。最後の二つの「グローバルな過程」の章はテーマ別の視点をとり、第22章 は技術、グローバル経済、社会変化、私生活を、第23章 は人口、移動、疾病、文化的アイデンティティ、宗教、そして人新世の環境を、COVID-19のパンデミックも含めて論じる。

主要概念

第1〜2部

  • 転換点:人類の出現、その地球規模への拡散、農業革命、文明。第1部の論考の枠組みである。
  • 第二波の文明:前600年〜後600年の帝国、宗教、社会秩序。地域別ではなくテーマ別に学ぶ。
  • 家父長制と不平等:階級、カースト、奴隷制、ジェンダーの階層を社会間で比較する。

第3〜4部

  • 第三波の時代:600年〜1450年。新しい文明と地域を越えた交流によって特徴づけられる。
  • 絹の道・海の道・砂の道:陸上、海上、サハラ越えの交流ネットワーク。
  • コロンブス交換と大量死:アメリカ大陸におけるヨーロッパの帝国がもたらした生物学的・人口学的な帰結。

第5〜6部

  • ヨーロッパの時代:1750年〜1900年にヨーロッパが世界の中心にあった時期と、それを説明する際のヨーロッパ中心主義の問題。
  • 大西洋の諸革命:北アメリカ、フランス、ハイチ、ラテンアメリカで連動した政治革命。
  • グローバル化と人新世:長い20世紀における経済的な結びつきの加速と、人間が引き起こす環境変化。

批判的分析

長所

  • 簡潔さとテーマ別の設計。 23章で人類の過去全体を扱い、第二波の時代と近世の部は地域別ではなくテーマ別(国家・文化・社会、政治・経済・文化の変容)に構成されている。そのため比較が基本となっており、第9章におけるイスラームの遭遇の四方向の比較や、第3章のローマと中国の比較がその例である。
  • 組み込まれた学習の構造。 部の冒頭の「ビッグ・ピクチャー」論考と、章末の「結論と考察」「中核となる考えの振り返り」の節によって、各章には明確な論点と復習の道筋がある。出版社は「Core Ideas」の問いを、本文に添えられた問いのなかで最も重要なものと位置づけている。
  • 最新で幅広い内容。 第5版では、初期人類、小氷期、インド洋と南インドにおけるイスラーム、ペストの長期的影響、工業化と気候危機の関係、COVID-19を含む近代のパンデミックについての記述が改訂された。アフリカ、アメリカ大陸、オセアニアには全体を通じて独立した章や節が充てられている。
  • 歴史そのものへの省察。 いくつかの章の結論は歴史の方法を論じている。たとえば「歴史家、偏り、モンゴル」「歴史をつくるのは誰か」「世界史と意味の形成」である。

短所

  • バリュー版には一次史料がない。 史料の特集は総合版とAchieveプラットフォームに収められているため、この版を使う授業では別の史料集が必要になる。
  • 詳細より幅。 世界を23章に圧縮しているため、個々の国家や王朝に割かれる紙幅は長い概説書よりはるかに少なく、とりわけ政治史の叙述は比較のなかに凝縮されている。
  • テーマ別構成による地域の分散。 たとえば中国は第3、4、5、8、12、13、15、19、21章に分かれて登場するので、ある地域の連続した物語を求める学生は自分で組み立てる必要がある。
  • 複数の版の流通。 本書には総合版、バリュー版、分冊版、「with Sources」版、1200年から始まるAP版があり、内容がそれぞれ異なる。

コースにおける位置づけ

このコースの文献リストにある一般的な概説書のなかで、本書は簡潔版にあたる。ベントリーらの『Traditions & Encounters』(38章)、ブリエットらの『The Earth and Its Peoples』、ノートン社の『Worlds Together, Worlds Apart』は、より詳しい地域別の叙述を提供する。『Ways of the World』は、主教科書を軽くして一次史料、レポート、討論により多くの時間を割きたい授業や、長い概説書に取り組む前にコンパクトな全体像を必要とする学生に向いている。テーマ別の章構成のため、長い叙述的教科書を主教材とする場合にも、比較の問いを考える際の手引きとして役立つ。

コースのなかでは、ゼバスティアン・コンラートの『What Is Global History?』が、ビッグ・ピクチャー論考が実践しているアプローチを説明し、デイヴィッド・クリスチャンの『Maps of Time』がプロローグで導入される宇宙史・深層史の視点を本格的に展開する。ジャネット・アブー=ルゴドの『Before European Hegemony』は第7章と第11章を掘り下げ、ユルゲン・オスターハンメルの『The Transformation of the World』は第5部を学術的に拡張したものにあたる。ラテンアメリカ、近代中東、アステカを扱うリスト上の地域別の本は、第12、17、19章などの個々の章を補う。

本書の使い方

本書は、世界史の予備知識をもたない大学1年生や高校上級レベルの学生に適している。先史時代から現在までを1学期で扱う授業にも、両巻が共有する第12章で分ける2学期の授業にも使える。

  • 中核: プロローグ、すべてのビッグ・ピクチャー論考、各章の結論。部の論考は章を読む前に読み、読み終えた後にもう一度読むとよい。
  • 1学期の授業での選択: 第1〜2章、第3〜4章、第7章、第9章、第11章、第13〜14章、第16〜18章、第20〜21章、そして第22章か第23章のどちらかを読めば、主要な転換点を一貫してたどることができる。残りの章は、個々の学生の発表に割り当てられる。
  • 学習の手順: 各章の「Revisiting Core Ideas」の問いに文章で答える。これらは本書の論旨の骨格である。「A Wider View」の問いはレポートの練習に使う。
  • 併せて行うこと: バリュー版には一次史料集(利用できるなら付属の史料集かAchieveの史料特集)を組み合わせ、学期末レポートのためにコースのリストからより詳しい本を1冊加える。AP版や「with Sources」版は内容が異なるので、購入前に授業がどの版を使うかを確認すること。