01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Bulliet, R. W., Crossley, P. K., Headrick, D. R., Hirsch, S. W., Johnson, L. L., & Northrup, D. (2023). The Earth and Its Peoples: A Global History (8th ed.). Cengage Learning.
章の要約
第8版は約1,000ページの単巻の世界史教科書で、Cengageから刊行され、世界史概説の授業を想定している。初期の人類社会から現代までの人類史全体を扱い、特定の文明や地域ではなく、一連のテーマを軸に構成されている。以下の項目は、出版社による本書の紹介に沿って整理したものである。
普通の人々の生活を中心に据えたグローバルな枠組み
出版社の説明によれば、本書は均衡のとれたグローバルな枠組みで世界史を示し、政治権力の中心から、普通の人々の生活状況や活動へと関心を移している。世界のある一部を中心に物語を組み立てるのではなく、各地域と各時代に見合った分量を与えることが狙いである。
環境と技術
二つの組織原理の一つは、人間と周囲の環境との相互作用である。著者たちは、人類が環境を形づくると同時に環境によって形づくられるものとして描き、とくに最も広い意味での技術を重視して、技術の発展をあらゆる人間活動の基盤として扱う。このテーマは、大きく異なる時代・場所・社会を共通の土俵で比較する手がかりとなる。
多様性と支配
第二のテーマは、支配的な構造や伝統が、別の信念や集団によってどのように均衡を保たれ、また挑戦されるかという点にある。社会の内部および社会間の権力関係と、それに異議を唱える信念や運動に目を向けさせ、通史が国家や帝国の記録だけにならないようにしている。
「Daily Life」コラム
本版は「Daily Life」(日常生活)というコラムを引き継いでおり、出版社によれば、学生の日常経験と過去の習慣や技術を結びつけることを意図している。このコラムは各章にあり、大きな叙述に加えて、各章に具体的で人間の尺度に合った入口を与える。
著者と専門
六人の著者は複数の地域と専門にまたがる。Richard Bulliet は中東・イスラーム社会史、Pamela Kyle Crossley は中国史・グローバル・ヒストリー、Daniel Headrick は技術史と帝国主義、Steven Hirsch は古典学と古代地中海世界、Lyman Johnson はラテンアメリカ史を専門とする。この顔ぶれは、地域間のバランスを図り、技術に注意を払う本書の姿勢を説明している。
主要概念
出版社が示すテーマ
- 環境と技術:人間と環境の相互作用。技術は広い意味で人間活動の基盤と捉えられる。
- 多様性と支配:支配的な構造や伝統と、それを均衡させ、あるいは挑戦する別の信念との緊張関係。
- 日常生活:普通の人々の日々の習慣と技術を、過去への入口とする見方。
- グローバルな枠組み:政治の中心や単一の文明を軸にせず、世界の各地域に均衡をとるよう設計された概説。
批判的分析
長所
- 明確なテーマの軸。 二つのテーマにより、学生は章ごとに追うべき筋を得られる。地域や世紀が次々と変わる概説では有用である。
- 技術と環境への注目。 技術を重視するという著者の明言と、Headrick らの専門性により、政治や宗教に加えて物質的・生態的な説明を求める授業に向いている。
- 地域のバランス。 中東、中国、古代地中海、ラテンアメリカ、技術史にわたる執筆陣は、ヨーロッパ中心ではないグローバルな枠組みという目標を支えている。
- 人間の尺度に合った入口。 「Daily Life」は、なじみのない時代を具体的に感じさせることを意図している。
短所
- 概説としての深さ。 人類史全体を一巻で扱うため、各テーマに割ける紙幅は限られる。特定の地域・時代・方法を深く知りたい学生には、専門書が必要になる。
- 大部であること。 1,000ページを超え、一つの授業で全体を読むのは難しい。教員は通常、一部の章を指定する。出版社は分冊版やデジタル教材も提供している。
- 教科書としての枠組み。 「グローバル・ヒストリーとは何か」という議論や方法論の論争を求める読者には、専門の著作のほうが適している。
コースにおける位置づけ
世界史・グローバル・ヒストリーのコースでは、本書は大型の概説教科書の一つである。Strayer と Nelson の Ways of the World は、つながり・比較・変化を軸にした包括的な概説である。Bentley、Ziegler、Streets Salter の Traditions & Encounters は、異文化間の相互作用、交易網、交流を強調する。Tignor らの Worlds Together, Worlds Apart は、地域ごとの発展を比較しつつ、国境を越えた交流や制度をたどる。これらは扱う範囲が近いため、多くの読者は一冊を主教材に選び、他の本で特定の時代について別の見方を補う。
コースの他の本は別の役割を果たす。David Christian の Maps of Time は人類史を地球と宇宙の深い歴史の中に位置づけ、概説書の冒頭の章と併せて読むのに適している。Sebastian Conrad の What Is Global History? はこのアプローチ自体を説明するもので、教科書の前後に読む短い一冊として向いている。Osterhammel の The Transformation of the World と Abu-Lughod の Before European Hegemony は、それぞれ19世紀と13世紀の世界システムを論じる学術書であり、概説を読み終えてさらに深めたい読者に適する。Keen と Haynes のラテンアメリカ史や Gelvin の近現代中東史といった地域別の本は、概説が輪郭しか描けない地域の詳細を補う。
本書の使い方
本書は、世界史概説を受講する1、2年次の学部生と、人類の歴史を体系的に概観したい一般読者に向いている。入門的な概説書であり、この分野に初めて触れる読者を想定している。
実践的な進め方:
- テーマを読書の指針にする。 各章で、環境と技術の相互作用の例と、支配またはそれへの挑戦の例を一つずつ記録する。二つのリストを積み重ねれば、全体を比較可能にできる。
- 選んで読む。 分量が大きいため、授業が指定する章を読み、その他の章は冒頭と結びを読んで全体の流れを保つ。
- 「Daily Life」を議論の出発点にする。 異なる社会で普通の人々がどう暮らしたかを比べる題材に向いている。
- 方法や議論を扱う本と組み合わせる。 初めの数章と併せて Conrad の短い入門書や Christian の一章を読むと、概説に理論的な枠組みが加わる。
- 専門書へ進む。 関心を持った時代や地域があれば、教科書を広げるのではなく、コースの読書リストにある専門書や地域史へ進む。
