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The Aztecs: A Very Short Introduction(アステカ文明入門) cover

歴史学

歴史学

The Aztecs: A Very Short Introduction(アステカ文明入門)

Davíd Carrasco

英語原題: The Aztecs: A Very Short Introduction

歴史、宗教、人類学を組み合わせてアステカ社会を紹介する小著です。テノチティトラン、メシカ帝国の拡大、人々の暮らしと信仰、スペイン人の侵攻、後世におけるアステカ文化の受容を考察します。メソアメリカ史・ラテンアメリカ史への入口に適しています。

前提知識: 不要。人名・地名・用語は本文中で説明される。

難易度レベル
初級
学術レベル
学部
Aztec historyMesoamericaLatin American historyreligionarchaeology

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Carrasco, D. (2012). The Aztecs: A Very Short Introduction. Oxford University Press. Very Short Introductions.

章の要約

本書は本文120ページに8章を収め、その後に参考文献、文献案内、索引が続く(全体でxiv+138ページ、図版入り)。出版社は本書を、歴史学、宗教学、人類学を用い、西洋の叙述の大半を形づくってきたスペイン側の記録の先を見て、起源の物語、首都、子育て、女性の働きについてアステカ自身の声に語らせるものと説明している。構成は厳密な年代順ではない。最盛期の首都から始まり、起源にさかのぼり、帝国の滅亡とその後の生を扱って終わる。

第1章:The City of Tenochtitlan: Center of the Aztec World(テノチティトラン――アステカ世界の中心)

本書は首都から始まる(1–15ページ)。出版社はアステカの人々が首都に与えた宇宙論的な意味を特に挙げており、この章は物語的な歴史が始まる前に、都市空間を通してアステカの宗教を紹介する。

第2章:Aztec Foundations: Aztlan, Cities, Peoples(アステカの基礎――アストラン、都市、人々)

第2章(16–37ページ)は起源に向かう。出版社によれば、カラスコは、故郷アストランに始まる都市の起源についてのアステカの神話的伝承を、メソアメリカの実際の都市生活について知られていることと対比させる。

第3章:Aztec Expansion through Conquest and Trade(征服と交易によるアステカの拡大)

最も長い章のひとつ(38–60ページ)で、章題のとおり戦争と商業の両面からアステカ帝国の台頭を概観する。

第4章:Cosmovision and Human Sacrifice(宇宙観と人身供犠)

61–77ページはアステカの宗教を扱う。出版社は、儀礼用の刃と戦争による宇宙の再生に深く身を捧げた人々と、戦争・供犠・帝国の拡大を正当化する根拠であると同時にその代わりとなる道も示した宗教を描いている。

第5章:Women and Children: Weavers of Life and Precious Necklaces(女性と子ども――生命の織り手と貴い首飾り)

78–91ページは子育ての方法と、女性が日常生活と帝国にもたらした貢献を扱う。出版社が、アステカ自身の声に語らせる主題として挙げるもののうちの二つである。

第6章:Wordplay, Philosophy, Sculpture(言葉遊び、哲学、彫刻)

アステカの詩、哲学、絵画を扱う短い章(92–101ページ)で、出版社の言葉では、とりわけ記念碑的な彫刻と建築に光を当てる。

第7章:The Fall of the Aztec Empire(アステカ帝国の滅亡)

102–111ページはスペイン人の到来と帝国の終焉を扱う。スペインによる征服は本書の後半に登場し、およそ10ページしか占めない。

第8章:The Return of the Aztecs(アステカの回帰)

最終章(112–120ページ)は、西洋の思想、美術、映画、文学、そしてラティーノの文化と芸術において、アステカがどのように描かれてきたかをたどる。

主要概念

第1–3章:都市、起源、帝国

  • テノチティトラン:アステカの首都。政治の中心であると同時に宇宙論的な意味をもつ都市として扱われる。
  • アストラン:アステカの起源伝承にある故郷。メソアメリカの都市の考古学的記録と対比される。
  • 征服と交易:第3章の章題に挙げられた、アステカの拡大の二つの手段。

第4–6章:宗教、社会、思想

  • 宇宙観(コスモビジョン):アステカの宇宙理解。本書はこれを人身供犠と結びつける。
  • 宇宙の再生:出版社の紹介文が供犠と戦争の目的として挙げるもの。
  • 女性と子ども:女性の役割と子育て。独立した章が充てられている。

第7–8章:滅亡とその後

  • アステカ帝国の滅亡:第7章で扱われるスペイン人の到来と征服。
  • アステカの回帰:西洋とラティーノの文化におけるアステカ像の後世の再創造。

批判的分析

長所

  • アステカの視点を先に。 出版社は、本書が西洋の叙述を支配するスペイン側の記録の先を見ていることを強調しており、構成もその狙いに沿っている。都市、起源、宗教、家族生活、芸術が8章のうち6章を占め、そのあとでようやく征服が登場する。
  • 宗教学の視点。 カラスコはハーバード大学のニール・L・ルーデンスタイン記念ラテンアメリカ研究教授で、メソアメリカの宗教とメキシコ系アメリカ人の文化の研究によりメキシコのアステカ鷲勲章を受けている。宇宙観と供犠の扱いにはこの専門性が生かされており、供犠を切り離して示すのではなく宗教体系の中に位置づけている。
  • 社会と文化の幅。 女性と子ども、そして詩・哲学・彫刻にそれぞれ章を設けており、短い政治史がしばしば省く主題にも目を向けている。
  • 後世の受容も扱う。 西洋とラティーノの文化における表象を扱う最終章は主題を現在につなげ、記憶やグローバル・ヒストリーに関心のある授業に向いている。

短所

  • 征服の扱いはごく短い。 第7章は約10ページで、メキシコ征服を学ぶ読者にはより詳しい記述が必要になる。
  • 叙述的ではなく主題別。 最盛期の都市から始めて起源にさかのぼるため、アステカの支配者や遠征の素直な年代記を求める読者は自分で年表を組み立てる必要がある。
  • アステカのみ。 章題はすべてアステカの世界にかかわっており、メソアメリカやコロンブス以前のアメリカ全体への入門書ではない。

コースにおける位置づけ

Ways of the World、Traditions & Encounters、The Earth and Its Peoples、Worlds Together, Worlds Apart といった大部の世界史概説を軸とするコースの中で、本書はひとつの社会を扱う短い事例研究である。これらの概説書が扱えるよりはるかに詳しくメソアメリカを描き、史料と宗教思想を使って先住民の世界がどのように再構成されるかを示す。1500年以前のアメリカ大陸と大西洋での遭遇を扱う概説書の章と並行して読むとよい。

ベンジャミン・キーンとキース・ヘインズの A History of Latin America は、物語の続きを語る地域通史である。コロンブス以前の社会を扱う冒頭の章はカラスコと重なり、後半の章はカラスコの最終章がわずかに触れるにとどまる植民地期と近現代を扱う。セバスティアン・コンラートの What Is Global History? はひとつの社会ではなく方法論を扱う、性格の異なる読み物である。非ヨーロッパ社会の歴史をその社会自身の観点から書くにはどうすればよいかというコンラートの問いに対して、カラスコの本は有用な検討事例になる。

本書の使い方

本書はメソアメリカ史の予備知識をもたない一般読者や学生のために書かれており、本文120ページは2、3回で読み通せる。

  • 中心となる読書: 第1–4章(1–77ページ)が、都市、起源、帝国、宗教についての主要な議論を担う。供犠の議論が、それを支えた都市と帝国の後に来るよう、順番に読むこと。
  • 社会史・文化史: 第5章と第6章は、ジェンダー、家族、芸術をテーマとするゼミに課すことができる。
  • 征服と記憶: 第7章と第8章は、スペインによる征服や、現代のメキシコ人・ラティーノのアイデンティティについての文献と組み合わせるとよい。
  • 本書と並行して: 文献案内でさらに読み進め、第4章を読むときには出版社の示す枠組み――宗教は戦争と供犠を正当化する根拠であると同時にその代わりとなる道も与えた――を念頭に置く。討論のよいきっかけになる。