01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Hulme, M. (2009). Why We Disagree About Climate Change: Understanding Controversy, Inaction and Opportunity. Cambridge University Press.
章の要約
本書は、前書き(Foreword)、序文(Preface)、10の章(各章おおよそ30〜45ページ、合計約366ページ)、参考文献からなる。出版社の説明では、気候科学者が25年にわたる職業経験に基づいて書いた内部者の記録であり、気候変動がどのように現象として現れ、人々がそれをどのように異なる形で理解しているかを描く。『Times Higher Education』の書評は構成をこう要約している。「気候」という観念と、人間が特定の気候変化を引き起こすというより新しい考え方の文化的・歴史的背景を示す2つの章があり、続く各章が、人々が意見を異にするそれぞれ別の理由を取り上げる。
第1章:気候の社会的意味
第1章(1–34ページ)は、『Times Higher Education』の書評者が言う背景を示す2章の1つで、「気候」という観念そのものの文化的・歴史的背景を扱う。書評は、気候変動という考えは異なる文脈の異なる人々にとって異なることを意味する、というヒュームの見方を引用している。
第2章:気候変動の発見
第2章(35–71ページ)は2つの背景の章の2つ目である。書評者は、この2章が気候という観念と、人間が特定の気候変化を促すというより新しい考え方を扱うと述べている。
第3章:科学の遂行
科学の章(72–108ページ)は書評者が最も興味深いと評した章である。気候科学がどのように行われ、その言明が何を主張できるかを論じ、気候予測の客観性や、可能性についての判断の役割を、グリーンランド氷床を例に扱う。
第4章:価値の付与
章題は「価値」を指している。出版社が挙げる視点には経済学が含まれ、本章は、それぞれが意見の相違の理由を1つずつ示す各章の最初にあたる(109–141ページ)。
第5章:私たちが信じるもの
信念が意見の相違の源になることを扱う章(142–177ページ)。出版社は信仰を用いられる視点に挙げており、書評者は宗教的信念を著者に最も特徴的な話題の1つとしている。
第6章:私たちが恐れるもの
恐れについての章(178–210ページ)。書評者は、環境リスクがどう概念化されるかを本書の社会科学的な主題の1つに挙げており、出版社の挙げる視点には心理学も含まれる。
第7章:リスクのコミュニケーション
コミュニケーションについての章(211–247ページ)。書評者は、メディアが気候変動をどう報じるかが本書で扱われる話題の1つだと述べており、コミュニケーションは出版社が挙げる視点の1つでもある。
第8章:開発の課題
開発は出版社が挙げる視点の1つで、この章(248–283ページ)はそれを主題とする。
第9章:私たちの統治のしかた
統治についての章(284–321ページ)。政治は出版社が挙げる視点の1つである。
第10章:気候変動を超えて
最終章(322–366ページ)は、気候変動は解決策を待っている問題ではないという主張に立ち返る。書評によれば、ヒュームはそれを単一の解決策のない「やっかいな問題」(wicked problem)とみなし、気候変動という観念は、より広い社会的目標を考え直すために使われるべきだと論じている。
主要概念
第1–3章:意味、歴史、科学
- 文化的観念としての気候:気候と気候変動は、文脈や場所、ネットワークによって異なる意味を持つ。
- 科学的判断:気候予測は、単純な事実ではなく、可能性についての根拠ある判断の表明である。
第4–9章:意見の相違の理由
- 価値・信念・恐れ:第4–6章の題は、人々が何を重んじ、何を信じ、何を恐れるかの違いを指している。
- コミュニケーション・開発・統治:第7–9章の主題。
第10章:気候変動を超えて
- やっかいな問題:気候変動は、他の社会的目標から切り離して単独で「解決」することはできない。
- 触媒としての気候変動:世界における自分たちの位置の見方を変えうるという、出版社の表現。
批判的分析
長所
- 異なる問いを立てている。 本書は、科学が正しいかどうかではなく、なぜ人々は意見を異にするのかを問う。『Times Higher Education』の書評者は本書を独特で勇気あるものと評し、ヒュームが反対意見の人々を単に情報不足だとか商業的利益に左右されているとだけ見ていないことを指摘している。
- 分野の内側からの権威。 出版社は、気候科学者としての25年の職業経験を強調している。書評者は科学の章を最も権威あるものと見た。
- 学際的な幅。 出版社は、意見の相違を説明するために用いる視点として、科学、経済学、信仰、心理学、コミュニケーション、社会学、政治、開発を挙げている。
- 明確な構成。 目次は、2つの背景の章、続いてそれぞれ意見の相違の1つの理由を題とする一連の章、そして結論という構成を示している。
短所
- 権威のむら。 書評者は、著者の専門分野以外の章は、科学の章ほど権威があるようには読めないと見ている。
- 個人的な立場。 書評は、ヒュームのキリスト教信仰が彼の立場の中心にあると指摘する。したがって本書は概説であると同時に主張でもあり、批判的に読むべきである。
- 時期。 本書は2009年の刊行で、その後の気候政策や政治における多くの展開より前のものである。
- 分量。 各章30〜45ページほどの10章に16ページの序文が加わり、概要だけを知りたい学生には読みごたえのある本である。
コースにおける位置づけ
気候・環境の読書リストの中で、ヒュームの本は、物理科学ではなく、この主題の社会的・文化的な側面を扱う。マーク・マスリンの『Climate Change: A Very Short Introduction』は証拠、影響、緩和、適応を簡潔に概観しており、最初に読むのに適している。ヒュームは、同じ証拠がなぜ異なる対応につながるのかを問う。ポール・ロビンズの『Political Ecology: A Critical Introduction』は環境変化を権力、経済、社会的差異と切り離せないものとして扱い、環境問題を誰が定義するのかという関心をヒュームと共有している。
ウィリアム・マーシュとジョン・グロッサの『Environmental Geography』は人間と環境の相互作用や持続可能性を扱うより広い教科書で、ビル・マグワイアの『Global Catastrophes』は破滅的な自然災害への短い入門書である。論争そのものについて考えたい学生は、これらのあとにヒュームを読むとよい。
本書の使い方
本書は、地理学、環境研究、科学技術論、公共政策などを学ぶ上級の学部生や大学院生で、気候科学の基礎をすでに知っていて、それをめぐる論争を理解したい人に向いている。
実用的な読み方は次のとおり。
- 核心: 序文と第1–3章で本書の姿勢をつかみ、論証がまとめられる第10章へ進む。
- 関心に応じて: 第4–9章は独立した論考として読み、授業の主題に合うものを選ぶ。価値(第4章)、信念と恐れ(第5・6章)、リスクのコミュニケーション(第7章)、開発(第8章)、統治(第9章)。
- 能動的に読む: 第4–9章の各章について、その章が挙げる意見の相違の理由、それを例示する立場やニュース、そしてその理由を自分が受け入れるかどうかを書き留める。
意見の相違の議論が証拠に根ざすよう、短い科学的概説を併読するとよい。
