01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Maslin, M. (2021). Climate Change: A Very Short Introduction (4th ed.). Oxford University Press. Very Short Introductions.
章の要約
第4版は全9章、本文約156ページで、そのあとに読書案内と索引が続く。著者はユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの気候学教授である。出版社によれば、この版は気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の2021年報告書と、学校ストライキやエクスティンクション・リベリオンから各国政府による「気候非常事態」宣言に至る、近年の社会的関心の高まりを踏まえている。章の流れは、気候変動とは何か、それがどのように発見されたか(第1〜2章)から、証拠とモデル(第3〜4章)、影響と起こりうる転換点(第5〜6章)を経て、政治、解決策、そして著者が必要だと論じるより広い変化(第7〜9章)へと進む。影響の章と解決策の章が最も長く、それぞれ約25ページある。
第1章:気候変動とは何か
冒頭の章は、気候変動を科学の枠をはるかに超え、経済学、社会学、地政学、法、健康にまで及ぶ問題として示す。過去の気候を調節してきた温室効果ガスの役割、その濃度がなぜ上昇し、いまや危険な汚染物質とみなされるのか、どの国が最も多く排出してきたか、それがどう変わりつつあるか、そしてIPCCがどのように証拠を集め評価するかを説明する。
第2章:気候変動の歴史
科学の歴史を、二酸化炭素の温室効果を示したユーニス・ニュートン・フットの1856年の実験から、1950年代後半には本質的に出そろっていた科学まで描く。脅威が科学の外で長く真剣に受け止められなかった理由を問い、当初は明確な温暖化が見られなかったことと環境への意識の低さを挙げ、環境運動の台頭と最近の抗議の波で締めくくる。
第3章:気候変動の証拠
人為的な気候変動がすでに進行しているという証拠を示す。世界の気温、降水量、海面水位の変化、そして熱波、干ばつ、洪水、暴風、山火事といった極端現象の変化を、IPCCの最新の要因特定(アトリビューション)の評価に基づいて述べる。最後に、気候変動否定論者の主張とそれが誤っている理由を検討する。
第4章:将来の気候のモデル化
気候モデルは、単純なボックスモデルから三次元の大気大循環モデルに至る階層として紹介され、その中心には炭素循環がある。最大の不確実性は将来の人間による排出であり、それは共通社会経済経路(SSP)と代表的濃度経路(RCP)を通じて検討される。本章は、異なる経路のもとでの気温、降水量、海面水位についてのIPCCの予測を示す。
第5章:気候変動の影響
影響は分野ごとに分けて示され、温暖化とともにそれらがどのように大きくなるかが説明される。極端な暑さと干ばつ、暴風と洪水、農業、海洋酸性化、生物多様性、人間の健康である。本章は、政策決定者が「危険な」気候変動とは何かを定義する必要があると論じ、社会の対処可能な範囲とその移り変わりを論じる。
第6章:気候のサプライズ
この章は閾値と転換点(ティッピング・ポイント)を扱う。線形だが遅れて現れる応答から、閾値を超えたときの急激な変化まで、気候システムに起こりうる四種類の応答を示し、グリーンランド氷床と西南極氷床の融解、北大西洋の深層海洋循環の弱化、ガスハイドレートからのメタンの大量放出、アマゾン熱帯雨林の枯死を論じる。
第7章:気候変動の政治
京都議定書、コペンハーゲン合意、そして温暖化を2℃を十分に下回る水準に抑え、1.5℃を目指すとしたパリ協定に至る国際交渉の歴史である。排出が増え続けていることを指摘し、国連の枠組みに潜在する欠陥、排出量取引、REDDとREDD+の制度を論じ、政治的に何が達成されなければならないかを問う。
第8章:解決策
三種類の対応が区別される。人々の生命と生計を守るための物理的・社会的な適応。再生可能エネルギー、電気自動車、スマートグリッド、化石燃料補助金の改革から、持続可能な農業、再植林、再野生化に至る緩和。そして二酸化炭素の除去や気候の直接的な改変によるジオエンジニアリングである。
第9章:私たちの未来を変える
結論の章は、気候変動をより広い政治的・経済的状況の中に位置づけ、気候、環境劣化、不平等、安全保障に同時に取り組む政策、政府が主導し新しい経済思想に支えられた「惑星スチュワードシップ」の新時代、政府・企業・市民社会のパートナーシップ、そして今世紀にふさわしい国際機関を求める。
主要概念
第1〜2章:基礎と歴史
- 温室効果:二酸化炭素やメタンなどのガスが大気中に熱をとどめることによって生じる温暖化。
- 人為的排出:人間活動によって放出される温室効果ガスと、その国家間の分布。
- IPCC:科学的証拠を定期的に評価する気候変動に関する政府間パネル。
第3〜4章:証拠とモデル
- 検出と要因特定:観測された変化を特定し、それを人間の影響と結びつけること。
- 大気大循環モデル:気候システムの三次元コンピュータモデルで、モデルの階層の最上位にある。
- 炭素循環:大気、海洋、陸地、生物の間での炭素のやり取り。排出された炭素の行方を予測するうえで中心となる。
- SSPとRCP:世界経済、排出、温室効果ガス濃度の起こりうる将来を記述するシナリオの枠組み。
第5〜6章:影響と転換点
- 危険な気候変動:政策が回避を目指すべき変化の水準。政治的に定義されなければならない。
- 対処可能範囲:社会が吸収できる気候変動の幅。
- 転換点:それを超えると気候システムの一部が急激に、あるいは不可逆的に変化しうる閾値。
第7〜9章:政治と対応
- パリ協定:温暖化を2℃を十分に下回る水準に抑え、1.5℃を目指す2015年の協定。
- 排出量取引とREDD+:森林減少・劣化からの排出を含め、排出を削減するための市場メカニズム。
- 適応、緩和、ジオエンジニアリング:第8章が区別する三種類の解決策。
- 惑星スチュワードシップ:第9章が求める、地球システムへの人間の影響の協調的な管理。
批判的分析
長所
- 科学と政治を一冊の短い本で。 章の配列は、温室効果ガスの物理と科学の歴史から、影響、国際交渉、解決策へと読者を導く。政策の側面には十分な紙幅が割かれており、第7〜9章は106ページから156ページまで、本書のおよそ3分の1を占める。
- 刊行時点で最新。 第4版はIPCCの2021年報告書に基づき、SSPとRCPの枠組みを用いているため、その予測は学生が現在の文献で出会うものと一致する。
- 不確実性の明快な扱い。 第4章は将来の人間による排出を予測における最大の未知数として示し、第6章は気候システムが応答しうる仕方を分類している。これは、確立していることと不確かなことを読者が区別する助けになる。
- 否定論への応答。 第3章は気候変動否定論者の主張に正面から答えており、そうした主張に出会うことになる学生に役立つ。
短所
- 概説にとどまらない、主張をもった立場。 出版社は本書を新しい考え方を求める本として紹介しており、最終章は惑星スチュワードシップと新しい経済理論を求めている。読者は科学的な章と著者の政策上の見解を区別するべきである。
- 詳細に立ち入る余地は少ない。 約150ページの中で、モデル、影響、交渉はそれぞれ一章で扱われ、将来の気候のモデル化の章は約20ページである。気候システムの物理を深く学ぶ必要のある学生には教科書が必要になる。
- 社会的・文化的側面は簡潔。 第1章は気候変動が社会学、法、健康にまで及ぶと述べるが、章立てには、人々や社会がなぜこの問題について意見を異にするのかや、国別排出の議論を超えた気候正義についての独立した扱いはない。
- IPCCのサイクルによる古さ。 この版は2021年の報告書に結びついているため、より新しい排出データやその後の交渉を補う必要がある。
コースにおける位置づけ
気候と環境のリストの中で、本書は気候変動について最初に読むのに自然な一冊であり、科学、影響、政治、対応を簡潔に概観している。McGuireの Global Catastrophes: A Very Short Introduction は同じシリーズの本で、自然起源および人為起源の破局的な事象を扱っており、Maslinの第6章「気候のサプライズ」と並行して読むことができる。
Hulmeの Why We Disagree About Climate Change は自然な次の一歩である。Hulmeは、同じ物理科学を受け入れている人々がなぜなお意見を異にするのかを検討し、気候変動を多くの意味をもつ「考え」として扱う。これは、科学を軸とし結論がより規範的なMaslinの記述を補う。Robbinsの Political Ecology: A Critical Introduction は環境変化を権力関係と社会的差異の中に位置づけ、第7〜8章の政策的解決策に対する批判的な視点を与える。MarshとGrossaの Environmental Geography は人間と環境のシステムを扱うより幅広い教科書で、気候をより広範な環境問題の中に位置づける。
本書の使い方
予備的な履修は必要なく、高校程度の理科で十分である。地理学、環境学、公共政策の1年生や、長い文献に進む前に見取り図を得たい読者に適している。
読み方の提案:
- 科学の中核(第1〜4章): 順番に読む。後の文献が前提とする主要な用語(温室効果ガス、IPCC、要因特定、SSPとRCP)を書き出しておく。
- 影響とリスク(第5〜6章): 続けて読む。第6章はMcGuireの本とよく組み合わせられる。
- 政策と対応(第7〜9章): 批判的に読み、Maslinの提案をHulmeやRobbinsの視点と比べる。
数値の確認と更新にはIPCCの「政策決定者向け要約」を使い、現在の交渉については国連気候変動会議の報告で追うとよい。第5章から影響の分野を一つ選び、関心のある地域について最新のIPCC評価報告書がそれをどう記述しているかを調べるのは有益な練習になる。巻末の読書案内は、各テーマのより詳しい文献へと導いてくれる。
