索引 / 001 JA
Advanced Engineering Mathematics(工学系のための応用数学) cover

工学

工学

Advanced Engineering Mathematics(工学系のための応用数学)

Erwin Kreyszig

英語原題: Advanced Engineering Mathematics

工学部の学生向けに、常微分方程式と偏微分方程式、線形代数とベクトル解析、フーリエ解析、複素解析、数値計算法、最適化、確率・統計までを一冊にまとめた参考書的な教科書。7つの部は大部分が互いに独立しており、多数の例題と演習問題が付く。

前提知識: 積分までの微分積分学。本書には任意で使える復習事項があり、線形代数と物理学の入門的な知識があると読みやすい。

難易度レベル
中級
学術レベル
学部
engineering mathematicsdifferential equationslinear algebrafourier analysisnumerical methods教科書

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Kreyszig, E. (2011). Advanced Engineering Mathematics (10th ed.). John Wiley & Sons.

章の要約

本書は全25章で、AからGまでの7つの部に分かれ、その後に5つの付録(参考文献、奇数番号問題の解答、補助資料、補足の証明、数表)が続く。各章の末尾には復習問題と練習問題、および章の要約が置かれている。各部と各章の冒頭には、その章に必要な予備知識と、短い講義では省いてよい節が示されている。たとえば第1章は予備知識として積分法を挙げ、1.6節と1.7節を省略可能としている。

A部:常微分方程式(第1〜6章)

A部は2つの目標を掲げて始まる。常微分方程式の主要な解法と、モデリング、すなわち物理的状況を数学モデルに置き換える実践である。第1章「1階常微分方程式」は、基本概念とモデリングに始まり、方向場とオイラー法、変数分離形と完全微分方程式、線形方程式とベルヌーイ方程式、直交曲線族(任意)を経て、解の存在と一意性に至る。第2章「2階線形常微分方程式」は、同次・非同次の方程式、ロンスキアン、定数変化法を扱い、自由振動・強制振動・共振・電気回路のモデリング節を伴う。第3章はこれらの結果を高階に広げる。第4章「常微分方程式系、位相平面、定性的方法」は、行列とベクトルの参照用の節から始まり、位相平面、臨界点、安定性へと進む。第5章「常微分方程式の級数解、特殊関数」は、べき級数法とフロベニウス法、ルジャンドル関数とベッセル関数を扱う。第6章「ラプラス変換」は、変換そのもの、移動定理、単位階段関数とディラックのデルタ関数、畳み込み、連立常微分方程式を扱い、ラプラス変換表を付す。

B部:線形代数、ベクトル解析(第7〜10章)

第7章「線形代数:行列、ベクトル、行列式、連立1次方程式」は、行列の演算、ガウスの消去法、階数、行列式、逆行列、そして任意の節として、ベクトル空間と線形変換を扱う。第8章は行列の固有値問題に充てられ、対称・歪対称・直交行列、対角化、2次形式を含む。第9章と第10章はベクトル微分法(勾配・発散・回転、曲線・弧長・曲率・捩率)とベクトル積分法(線積分・面積分、グリーンの定理、ガウスの発散定理、ストークスの定理)に移る。

C部:フーリエ解析、偏微分方程式(第11〜12章)

第11章は、フーリエ級数、強制振動、シュトゥルム=リウヴィル問題と直交級数、フーリエ積分、さらに余弦・正弦・フーリエ変換(離散フーリエ変換と高速フーリエ変換を含む)を展開する。第12章は、これらの道具を波動方程式、熱方程式、ラプラス方程式に適用し、変数分離法、ダランベールの解、長方形膜と円形膜、ラプラス変換による偏微分方程式の解法を扱う。

D部:複素解析(第13〜18章)

6つの章は、複素数と複素関数、複素微分(コーシー=リーマンの方程式、初等関数)、複素積分(コーシーの積分定理と積分公式)、べき級数とテイラー級数(一様収束は任意)、ローラン級数と留数積分、等角写像(リーマン面は任意)、そして静電場・熱問題・流体の流れにおけるポテンシャル論への複素解析の応用を扱う。

E部:数値解析(第19〜21章)

この部はソフトウェアに関する注意書きで始まる。第19章「数値計算一般」は、方程式の反復解法、補間、スプライン、数値積分と数値微分を扱う。第20章は数値線形代数で、ガウスの消去法、LU分解、反復法、悪条件とノルム、最小2乗法、固有値の計算法を扱う。第21章は常微分方程式と偏微分方程式の数値解法を扱う。A部の冒頭は、21.1〜21.3節(常微分方程式の数値解法)が第1章または第2章の直後に読めるように書かれていると指摘している。

F部:最適化、グラフ(第22〜23章)

第22章は、最急降下法による制約なし最適化、線形計画法、単体法とその困難を扱う。第23章は、グラフと有向グラフ、最短経路問題、ダイクストラ法、最小全域木、ネットワークフローとフォード=ファルカーソン法、2部グラフと割当て問題を扱う。

G部:確率、統計(第24〜25章)

第24章「データ解析、確率論」は、データの表現に始まり、確率、確率変数、2項分布・ポアソン分布・超幾何分布・正規分布を経て、複数の確率変数の分布に至る。第25章「数理統計」は、推定、信頼区間、仮説検定、品質管理と受入れ検査、カイ2乗適合度検定、ノンパラメトリック検定、回帰と相関を扱う。

主要概念

A部:常微分方程式

  • 数学的モデリング:物理的状況から方程式を立て、解き、結果を解釈すること。A部が目標の1つとして挙げている。
  • 方向場とオイラー法:y' = f(x, y) を解かずに、図式的・数値的に解を追う方法。
  • 位相平面と臨界点:常微分方程式系の定性的な見取り図で、安定性の判定基準を伴う。
  • ラプラス変換:常微分方程式や連立方程式を代数の問題に変える変換。階段関数とディラックのデルタ関数が不連続な入力を扱う。

B部とC部:線形代数、ベクトル解析、フーリエ解析と偏微分方程式

  • 固有値問題:行列によって伸縮されるだけのベクトルを求める問題で、対角化と2次形式の基礎となる。
  • 発散定理とストークスの定理:第10章の積分定理で、面積分と体積分、あるいは境界の積分を結びつける。
  • フーリエ級数・積分・変換:周期関数と非周期関数の展開で、第12章の偏微分方程式を解くのに使う。
  • 変数分離法:波動方程式、熱方程式、ラプラス方程式を解く標準的な道筋。

D部からG部

  • 留数積分:関数の特異点から複素積分や実積分を計算する方法。
  • 等角写像:角度を保つ写像で、ポテンシャル問題に用いる。
  • 数値線形代数:LU分解、反復解法、ノルムと条件数、固有値の計算法。
  • 単体法:線形計画法の標準的なアルゴリズム。
  • 仮説検定と回帰:第25章の主要な推測の道具。

批判的分析

長所

  • 1冊で広い範囲を扱う。 目次は常微分方程式と線形代数から、偏微分方程式、複素解析、数値解析、最適化、統計にまで及ぶので、1冊で複数の工学数学の科目に対応できる。Wileyの紹介は、第10版でより詳しい例題とより応用的な練習問題が加わったとしている。
  • 選んで読めるように作られている。 章の冒頭に予備知識と省略可能な節が示され、任意または「参照用」と明記された節もある(行列とベクトルの4.0節、行列式の7.6節、微積分の復習である9.6節と10.3節)。常微分方程式の数値解法の節も早めに読めるように書かれている。教員も独習者も、自分に合った道筋を切り出せる。
  • モデリングが組み込まれている。 「モデリング:自由振動」「モデリング:強制振動、共振」「モデリング:電気回路」「モデリング:膜、2次元波動方程式」といった節題は、物理的設定を立てることが数学の一部として扱われていることを示す。
  • 練習と確認。 Wileyが見本として公開している第1章には、問題群、モデリング問題、オイラー法の問題、計算機代数システムのプロジェクトがあり、章末に復習問題と要約が置かれている。奇数番号問題の解答は付録2にある。

短所

  • 広さが深さに優先する。 7つの分野が印刷版で約1,260ページを分け合う。たとえば確率と統計は2章、数値解析は3章である。統計や数値解析など、ある分野を1科目として完全に学びたい読者は、専門の教科書も必要になるだろう。
  • 章同士の依存関係がある。 各部は完全に独立してはいない。第12章は第11章のフーリエ級数で偏微分方程式を解き、12.12節では第6章のラプラス変換も用いる。途中から読む学生は、各章の冒頭に示された予備知識を確認する必要がある。
  • 版と形態の違い。 第10版には複数の形態がある。Wileyインド版は1,148ページで、目次はF部までで終わる。一方、Google ブックスとWileyの電子教科書の掲載ページは、それぞれ1,264ページと1,280ページとしている。確率と統計が必要なら、手元の版にG部が含まれるか確認するとよい。

コースにおける位置づけ

このコースの書籍リストで、Kreyszigは幅の広い、2年次以上向けの参考書である。出発点からこの本への準備をしてくれる本が2冊ある。Stroudの Engineering Mathematics は、基礎的な代数からラプラス変換までを自分のペースで進めるプログラム学習形式の教科書で、Croft と Davisonの Mathematics for Engineers は、算術と代数から微積分、行列、複素数、微分方程式へと進む1年次向けの教科書である。微積分にまだ慣れていない学生は、まずどちらかを学ぶのがよい。

Kreyszigと並ぶのが、Jamesらの Advanced Modern Engineering Mathematics である。出版社の紹介によれば、1年次向けの姉妹書の上に成り立っており、12章で行列解析、常微分方程式の数値解法、ベクトル解析、複素関数1章、ラプラス変換とz変換、フーリエ法、偏微分方程式、最適化、確率統計を扱う。Kreyszigは複素解析に6章を充て、常微分方程式の解法を独立した部としている。Jamesにはz変換がある。両書の先では、Riley、Hobson、Benceの Mathematical Methods for Physics and Engineering がグリーン関数、変分法、テンソル、群論へと進み、BenderとOrszagの漸近的方法と摂動論の巻は、近似的な解析解を求めるための大学院向け教科書である。

本書の使い方

Wileyの紹介は、実際的な問題を通じて高度な数学に出会う技術者やコンピュータ科学者を対象としている。微積分の課程を終え、数学的モデリングの標準的な手法を必要とする学生に向いている。第1章が求めるのは積分法だけだが、それ以降の部、特にベクトル、フーリエ、複素解析の各章は、前の内容を前提とする。

最初から最後まで通読するのではなく、個々の科目に付き添う参考書として使うのが現実的である。

  • 多くの工学科目の核: 第1〜2章と第6章(常微分方程式とラプラス変換)、第7〜8章(行列と固有値)、第9〜10章(ベクトル解析)、第11〜12章(フーリエ法と偏微分方程式)。
  • 必要に応じて: 高階方程式、連立方程式、特殊関数は第3〜5章。複素解析の科目やポテンシャル論の応用は第13〜18章。数値解析は第19〜21章で、21.1〜21.3節は第1章または第2章の直後に使える。最適化と統計は第22〜23章と第24〜25章。
  • 初読では飛ばしてよい: 1.6、2.3、7.9、8.5、15.5、17.5など、任意と記された節。

まず例題に取り組む。計算機代数システムは手計算の検算にだけ使う(第1章自身がそう勧めている)。復習には章末の要約と復習問題を使う。