01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Snowling, M. J., Hulme, C., & Nation, K. (Eds.). (2022). The Science of Reading: A Handbook (2nd ed.). Wiley-Blackwell.
章の要約
第2版は六つの部に24章があり(出版社の表記で608ページ)、用語集と索引がつく。Wiley Blackwell Handbooks of Developmental Psychology シリーズの一冊である。各章は異なる専門家またはチームによるレビューで、第1章はCharles PerfettiとAnne Helderが執筆し、第I部の冒頭でこの分野の進展を概観する。出版社によれば、第2版は全面的に改訂され、共起(co-occurrence)と複雑性(complexity)に関する二つの完全な新章が加わった。
第I部、第1章:読みの科学の進展:単語識別、理解、普遍的な視点
PerfettiとHelderは、単語識別システム、理解システム、知識システムを結びつける「読みシステムの枠組み」(Reading Systems Framework)を軸にこの分野を整理する。語彙(レキシコン)がその中心に置かれる。章は三つの進展を取り上げる。熟達したアルファベット表記の読みにおける単語識別システム、読みながらの理解、そして文字体系を超えたより普遍的な読みの科学である。最後に読み指導について簡潔に触れる。
第I部、単語認識(第2〜5章)
第I部の残りは第1章に続く。第2章「単語読みのモデル:何がわかったか」(Seidenberg、Farry-Thorn、Zevin)は、単語がどのように読まれるかのモデルを検討する。第3〜5章は単語認識の三部構成の扱いで、「視覚的・書記素的処理」(Grainger)、「読みにおける音韻符号化」(Brysbaert)、「形態処理」(Rastle)である。
第II部、読みと綴りの学習(第6〜10章)
この部は熟達した読みから発達へと移る。「リテラシーの基礎」(HamiltonとHayiou-Thomas)、「単語の読みの学習」(CastlesとNation)、「単語の綴りの学習」(KempとTreiman)、「単語の読みの学習における個人差」(Comptonほか)、「子どもに読みを教える」(Savage)が含まれる。最後の章は、この部の中で最も直接に指導を扱う。
第III部、読解(第11〜14章)
読解を扱う四章である。「読解I:談話」(van den BroekとKendeou)、「読解II:文処理」(Liversedge、Zang、Liang)、「読解の発達のモデル化」(LervågとMelby-Lervåg)、「子どもの読解困難」(Cain)。
第IV部、さまざまな言語での読み(第15〜17章)
文字体系を扱う三章である。「アルファベット表記における読みと読みの障害」(Caravolas)、「中国語における読みと読みの障害」(McBrideほか)、「アクシャラ文字体系を読む」(Nag)。
第V部、読みの障害(第18〜21章)
この部には「後天性の読み書き障害」(Woollams、Lambon Ralph、Patterson)、「発達性ディスレクシア」(Wagner、Zirps、Wood)、「読みの障害の併存」(Moll)、「言語障害または聴覚障害のもとでの読みの学習」(Adlofほか)が含まれる。
第VI部、読みの生物学的・社会的関連要因(第22〜24章)
最後の部は原因と関連要因に向かう。「ディスレクシアの遺伝学:過去から学び未来をかたちづくる」(Paracchini)、「読みの学習への遺伝的・環境的影響」(LittleとHart)、「リテラシーの神経生物学」(Yeatman)。
主要概念
第1章と第I部:熟達した読みと単語認識
- 読みシステムの枠組み:第1章のモデルで、語彙を介して単語識別、理解、知識のシステムを結びつける。
- 書記素的処理と音韻的処理:単語認識への視覚的・音声的な経路。第3章と第4章で扱われる。
- 形態処理:読み手が語の構造をどう利用するか(第5章)。
第II・III部:読みの学習と理解
- 綴りの学習と個人差:単語レベルの技能の発達と変動。
- 談話処理と文処理:第11章と第12章における理解の二つの見方。
- 読みのシンプル・ビュー(Simple View of Reading):単語の読みと言語理解が合わさって読解を支えるとする枠組み。第1章で論じられている。
第IV〜VI部:言語、障害、生物学
- 書記体系の違い:アルファベット、中国語、アクシャラの各体系にそれぞれ一章がある。
- 発達性ディスレクシアと併存:読みの困難と、それに併存する状態。
- 後天性の読みの障害:以前は熟達していた読み手が後から負う読み書きの困難。
- 遺伝的・環境的・神経生物学的な影響:最後の部。
批判的分析
長所
- 部ごとに整理された網羅性。 六つの部は、単語認識、読み書きの学習、理解、さまざまな言語での読み、障害、生物学的・社会的関連要因の順に進む。関心に合った部から入りつつ、全体とのつながりも見える。
- 言語をまたぐ視野。 第IV部はアルファベット表記、中国語、アクシャラに別々の章を充てている。第1章自体も、主に英語に基づく科学ではなく、より普遍的な読みの科学を求めている。
- 専門家による執筆。 各章はそのテーマの研究者が書いており、出版社は、単語認識の理論モデルと計算モデル、およびエビデンスに基づく読みの介入研究についての批判的評価を示すと述べている。
- 分野の更新。 出版社は第2版の追加として、共起と複雑性についての新章、また就学前の読みと言語の発達やディスレクシアの併存などについての更新を挙げている。
短所
- 研究ハンドブックであり、指導書ではない。 出版社によれば、想定読者は上級の学生、研究者、専門的な教育者である。「子どもに読みを教える」は24章のうちの一章にすぎず、授業の手順は示されていない。
- 前提知識が必要。 各章は基本用語をすでに知っている読者向けのレビューである。たとえば第1章は、最初の十数ページのうちに、眼球運動モデル、単語読みの相互活性化モデルと二重経路モデル、神経画像の知見を次々に扱う。
- 適用性にばらつきがある。 第V部と第VI部は障害、遺伝学、神経生物学を扱い、教室の教師の関心からは遠いかもしれない。
コースにおける位置づけ
本書は、リテラシーのリストの中で研究レベルの本にあたる。Kate Cainの Reading Development and Difficulties は読みの研究の背景知識がない学生向けの入門書であり、Morag StuartとRhona Stainthorpの Reading Development and Teaching は読みのシンプル・ビューを軸に組み立てられ、指導法と結びついた証拠に基づく入門書である。Gail Tompkinsの Literacy for the 21st Century は教室での実践についての教師教育の教科書、Mark Seidenbergの Language at the Speed of Sight は一般読者向けの読みの科学の解説、Jeanne Challの Learning to Read: The Great Debate は1967年の指導法の比較研究として画期的なものである。
妥当な順序は、まずCainまたはStuartとStainthorp、次に一般向けの全体像としてSeidenbergの本、そしてこれらの本の背後にある詳しい研究を知るために本書を読むことである。Challの研究はこうした論争の歴史的背景を示し、教室で何をすべきかが問いであればTompkinsに当たる。
本書の使い方
本書は、リテラシー教育、発達心理学、言語聴覚科学の大学院生、研究者、専門的な教師に向いている。音韻意識やデコーディングといった概念になじみがあることを前提とする。
実際的な進め方:
- 最初に: 第1章で、この分野とその枠組みの全体像をつかむ。
- 教育者にとっての中核: 第II部(読みと綴りの学習、子どもに読みを教えることを含む)、第III部の読解の章、そして発達性ディスレクシアと読解困難の章。
- 研究者にとっての中核: 単語認識を扱う第I部。言語間の研究には第IV部。
- 任意: 第VI部(遺伝学と神経生物学)と後天性障害の章。ただしそれらが自分のテーマなら別である。
- 用語集と参考文献を使う。 用語集は用語の理解に役立ち、各章の参考文献は原著研究へ導く。
