01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Sellars, M. (2017). Reflective Practice for Teachers (2nd ed.). SAGE Publications.
章の要約
第2版は約310ページで、2013年に初版が刊行された本の改訂版である。全12章はそれぞれ、教員志望者や新任教師が直面する重要な課題を一つ取り上げ、それを省察のきっかけとして用いる。出版社によれば、各章にはケーススタディと「これはあなたにとってどういう意味か」(What does this mean for you?)のコラムがあり、研究から得られた考えを取り上げて教室でどう生かせるかを示す。出版社は改訂点として、教室におけるメタ認知についての議論の拡充と、脳科学に基づく学習について実際に何がわかっているのかについての批判的な視点も挙げているが、それがどの章にあるかは示していない。著者はオーストラリアのニューカッスル大学に所属している。
第1〜2章:省察的実践;専門職としての教職(Reflective Practice; Teaching as Professional Practice)
冒頭の2章は、省察的実践とは何かを示し、教職を専門職として位置づける。本書の残りの部分は省察を個別の話題に当てはめていくので、この2章が出発点となる。出版社は、この版で省察的実践のモデルがより多く取り上げられていると述べている。
第3章:21世紀の教育(Education in the Twenty-First Century)
教えることを現代の文脈の中に位置づける。後の章で扱う課題はこの文脈の中で生じる。
第4〜5章:学習の過程;学習のための指導(The Learning Process; Teaching for Learning)
結びついた2章で、まず学習がどのように起こるかを、次にそれを生み出すための指導を扱う。
第6〜8章:知能の本質に関する理論;ポジティブ思考の重要性;自己主導的学習(Theories on the Nature of Intelligence; The Importance of Positive Thinking; Self-directed Learning)
学習者についての3章。知能がどのように理論化されてきたか、ポジティブ思考の役割、そして学習者が自分の学習を主導することを扱う。
第9〜10章:生徒の多様性を理解する;個に応じた指導のための技能と方略(Understanding Student Diversity; Skills and Strategies for Differentiation)
前者はクラスにいる生徒の多様性を検討し、後者はそれに合わせて指導を差異化するために教師が用いる技能と方略を扱う。
第11章:評価(Evaluation)
評価を扱う。出版社はこの版に評価(アセスメント)についての新しい章が加わったと説明しており、出版社が引用する書評者の一人は、これを最近の要件の変化と結びつけている。
第12章:教職生活を始める(Beginning Your Teaching Career)
本書は専門職への移行で締めくくられる。
主要概念
第1〜3章:省察と専門職
- 省察的実践:自分の信念と授業を改善するために体系的に見つめ直すこと。本書全体の方法である。
- 省察的実践のモデル:省察のための構造化された枠組み。この版でより詳しく扱われている。
第4〜8章:学習と学習者
- 知能の理論:知能とは何かをめぐる競合する説明。教師が学習者をどう見るかに影響する。
- 自己主導的学習:学習者が自分の学習を計画し管理する責任を担うこと。
第9〜12章:多様性、個に応じた指導、評価、キャリア
- 生徒の多様性:一つのクラスにいる学習者の背景やニーズの幅。
- 個に応じた指導(ディファレンシエーション):その幅に合わせて指導を調整すること。
- 評価:アセスメントを含め、学習と指導について判断すること。
第2版での追加
- メタ認知:自分の思考と学習を意識し制御すること。この版でより詳しく論じられる。
- 脳科学に基づく学習:神経科学から導かれたとされる指導についての主張。本書はこれを批判的に検討する。
批判的分析
長所
- 具体的な話題と結びついた省察。 省察を抽象的に扱うのではなく、各章が知能から個に応じた指導まで、教えることの実質的な課題に省察を当てはめる。ケーススタディと「これはあなたにとってどういう意味か」のコラムは、研究を自分の実践に当てはめるよう読者に促す。
- ゼミで使いやすい。 出版社が引用する Deakin 大学の Dianne Toe は、最終学年の教員志望者とのゼミで話し合いのきっかけになるものとして本書のシナリオを挙げ、新版でそれが増えたことを歓迎している。
- 初心者にわかりやすく、経験者にも有益。 出版社が引用する Chartered College of Teaching の Deborah Gonzalez は、本書のアプローチは予備知識をほとんど前提としないが、経験豊かな教育者にとっても有益で励みになると述べ、現在の研究と定評ある研究を用いている点で、省察的実践を支える学校のリーダーにも向いているとしている。
- 流行の主張に批判的。 出版社は脳科学に基づく学習への批判的な視点を強調しており、学校でそうした主張に出会う新任教師にとって有益な歯止めとなる。
短所
- 深さより幅。 知能の理論から教職への就職まで12の幅広い話題を約310ページで扱うため、それぞれは入門的な扱いにとどまる。一つの話題についてレポートを書く学生は専門的な文献が必要になる。
- 文脈。 著者はオーストラリアで仕事をしており、この版は2017年のものである。他の国の読者や後の時代の読者は、評価や職業上の要件についての記述を自国の現行の規則と照らし合わせるべきである。
コースにおける位置づけ
Sellars は省察の理論ではなく教室の話題を軸に構成されており、このコースでは教員志望者が最初に読むテキストとして自然である。もっとも近い組み合わせは Stephen Brookfield の Becoming a Critically Reflective Teacher である。同じく読みやすいが、学習や教室の権力関係についての前提を、生徒、同僚、研究、自分の経験から得た証拠と照らし合わせる習慣としての批判的省察に焦点を当てている。Sellars の後に Brookfield を読むと、Sellars が導入する省察により批判的な鋭さが加わる。
Donald Schön の The Reflective Practitioner は「行為の中の省察」「行為についての省察」という語彙を生んだ古典的研究であり、実践的な考え方に慣れた後で理論のために読む価値がある。Parker Palmer の The Courage to Teach は教師の内面を探究し、John Hattie の Visible Learning for Teachers は自分の影響を評価するための証拠重視の道筋を示して Sellars の学習と評価の章を補う。Cochran-Smith と Lytle の Inquiry as Stance は実践者研究をキャリア全体にわたる構えとして扱い、大学院での学習に向いている。
本書の使い方
本書は養成段階の教員志望者と、教室に立って最初の数年の教師に向けて書かれている。出版社が引用する書評者たちは、経験豊かな教師や、ゼミを運営する指導教員・教員養成担当者にも本書を勧めている。
推奨する進め方:
- 第1・2章から始める。 省察的実践そのものを導入する章である。
- 実習中は、 そのときの課題に合った章を読む。たとえば多様なクラスの計画を立てるときは第9・10章、評価を準備するときは第11章を読み、ケーススタディと「これはあなたにとってどういう意味か」のコラムに最近の授業を当てはめて取り組む。
- 就職活動の前に、 第12章を読む。
本書の章立てに沿って省察日誌をつけ、ケーススタディを指導教員や仲間との話し合いに使うとよい。ある話題がレポートで重要になったら、その章が引用する研究にあたり、省察そのものについてより深く知るために Brookfield や Schön と組み合わせて読むこと。
