01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Hallahan, D. P., Kauffman, J. M., & Pullen, P. C. (2022). Exceptional Learners: An Introduction to Special Education (15th ed.). Pearson.
章の要約
第15版は2022年にピアソンから刊行され(著作権表示は2023年)、約480ページ、15章から成る。著者たちの序文は本書を、特別な(exceptional)学習者の特性とその教育についての総合的な入門書と位置づけている。ここで「exceptional」は、従来どおり障害のある人と才能のある(gifted)人の両方を指す。本書は教室での実践とともに、障害と才能の心理学的、社会学的、医学的な側面を重視している。ピアソンによれば、この版はエビデンスに基づく内容への重点を強め、400を超える新しい文献を加えている。また、判定と評価の扱いを拡充し、介入への反応(RTI)の役割と有効性や多層型支援システムについて詳しく論じ、さらに正義、公平、多様性、インクルージョンについて大幅に新しい内容を加えた。最初の4章が分野の全体像を示し、残りの11章はそれぞれ一つのカテゴリーを扱う。
ピアソンが公開している前の版(第14版)の序文には、著者たちが想定する読者が示されている。将来の特別支援教育の教師、障害のある生徒を自分の教室で教えることになる将来の通常教育の教師、そして言語聴覚士、各種セラピスト、カウンセラー、スクールサイコロジストなどの関連専門職である。序文はまた、その版で繰り返し登場する要素も説明している。各章冒頭の「神話と事実(Myths and Facts)」の囲み、障害のある人々を紹介する「Up Close With」と「Peer Connections」、働く特別支援教育の教師を描く「Success Stories」、そして節の見出しと結びついた学習目標と章末のまとめである。その版では、カテゴリー別の章は共通の問いに沿って構成されていた。用語と定義、出現率、原因、判定と評価、特性、教育上の配慮、早期介入と成人期への移行である。
第1〜2章:Exceptionality and Special Education; Current Practices for Meeting the Needs of Exceptional Learners(特別なニーズと特別支援教育/特別な学習者のニーズに応える現在の実践)
基礎の章である。第1章は特別なニーズ(exceptionality)と特別支援教育を定義する。前の版では、生徒の障害よりも能力をより重視していた。第2章は、特別な学習者のニーズに実際にどう応えるかを扱う。前の版では、コモン・コア・スタンダードの文脈の中に特別支援教育を位置づけていた。
第3章:Justice, Equity, Diversity, and Inclusion in Special Education(特別支援教育における正義、公平、多様性、インクルージョン)
章題が改められた章である。第14版では、この位置に「特別支援教育の多文化的・二言語的側面(Multicultural and Bilingual Aspects of Special Education)」があった。新しい章題は、ピアソンが説明する正義、公平、多様性、インクルージョンについての新しい内容に対応している。
第4章:Parents and Families(親と家族)
障害のある子どもの家族を扱う。前の版は家族のレジリエンスを強調していた。
第5〜9章:Intellectual and Developmental Disabilities; Learning Disabilities; Attention Deficit Hyperactivity Disorder; Emotional or Behavioral Disorders; Autism Spectrum Disorders(知的・発達障害/学習障害/注意欠如・多動症/情緒・行動障害/自閉スペクトラム症)
出現率の高いカテゴリーと発達に関わるカテゴリーである。前の版は、学習障害、ADHD、情緒・行動障害、自閉スペクトラム症の定義をDSM-5に合わせて更新した。また、知的障害のある生徒への系統的な指導、学習障害における読み書きの指導と判定、ADHDにおける実行機能と行動抑制を重視していた。
第10〜12章:Communication Disorders; Learners Who Are Deaf or Hard of Hearing; Blindness or Low Vision(コミュニケーション障害/ろう・難聴の学習者/盲・弱視)
話し言葉と言語の障害、そして感覚障害を扱う。前の版は手話を完全な自然言語として扱っていた。
第13〜14章:Low-Incidence, Multiple, and Severe Disabilities; Physical Disabilities and Other Health Impairments(低出現率・重複・重度の障害/肢体不自由とその他の健康障害)
より出現率が低く複雑な障害を扱い、(前の版では)外傷性脳損傷も含めている。さらに身体と健康の状態を扱う。
第15章:Learners with Special Gifts and Talents(特別な才能のある学習者)
「exceptional」のもう一つの側面である才能を扱う。前の版は、多文化社会において才能を定義することの難しさを論じていた。
主要概念
第1〜4章
- 特別な学習者:障害のある生徒と、特別な才能のある生徒をまとめて指す。
- 特別支援教育:特別な学習者のために個別に計画された指導とサービス。
- 介入への反応と多層型支援システム:段階的な予防と判定。この版でより詳しく扱われる。
- 正義、公平、多様性、インクルージョン:学習者の集団間で、判定とサービスが公正であるかどうか。
- 家族との協働:子どもの教育の一部としての親と家族。
第5〜15章
- 特別なニーズのカテゴリー:知的障害から才能まで、本書を構成する分類。
- 高出現率と低出現率の障害:学習障害のような一般的なカテゴリーと、まれで重度、または重複した障害。
- エビデンスに基づく実践:研究に裏づけられた指導。ピアソンがこの版の重点として強調する。
- 移行:学校から成人期への移行に対する支援。
批判的分析
長所
- カテゴリーごとの深さ。 カテゴリーごとに一章を充てることで、各障害と才能について、定義、原因、判定、指導を腰を据えて扱っている。教師は特定の生徒に関わる章を参照できる。
- エビデンスに基づき、最新である。 ピアソンは、この版のエビデンスに基づく内容と400を超える新しい文献を強調している。著者たちは特別支援教育の第一線の研究者である。
- 通常教育と特別支援教育の両方の教師に向けて。 序文は両者と関連専門職に語りかけており、さまざまな学生が混在する入門の授業に向いている。
- 学習を支える工夫。 前の版では、神話と事実の導入、学習目標、まとめによって章が学びやすくなっており、障害のある人々や特別支援教育の教師の紹介が人間的な側面を見失わせなかった。
短所
- カテゴリー別の構成。 障害のカテゴリーごとに本を構成することは参照には便利だが、インクルージョンやカテゴリー横断的な指導が二次的なものに見えてしまうおそれがある。教室実践の視点を求める読者は、カテゴリー横断型の本と組み合わせるとよい。
- アメリカの法的・診断的枠組み。 連邦の法的義務、DSM-5の定義、RTIのようなアメリカの実践が内容の枠組みとなっている。他国の読者は自国の制度に置き換える必要がある。
- 分量とデジタル教材への依存。 約480ページ15章という分量は、一つの授業で詳しく扱える量を超えている。また、動画や確認小テストの多くはデジタル版とMyLabに属している。
- 版による違い。 第14版について述べた特徴や各章の重点は、第3章の章題を改めRTIの扱いを拡充した第15版で変わっている可能性がある。特定の節を課題にする場合は、現行版で確認すること。
コースにおける位置づけ
本書は、特別支援・インクルーシブ教育のコースにおける、カテゴリーごとの入門書である。ターンブルらの Exceptional Lives はもう一冊の入門教科書で、これも障害のカテゴリーを扱うが、各章を実際の生徒と家族を中心に組み立て、尊厳、インクルージョン、自己決定を強調している。授業ではふつうどちらか一冊を選ぶことになる。特性、原因、判定について深く知りたい読者にはハラハン、カウフマン、プーレンが向いている。フレンドとバーサックの Including Students with Special Needs は、通常教育の教師が行うことを軸に構成され、障害をカテゴリーごとではなく大まかにまとめて扱っており、実践的な併読書になる。
ミッチェルとサザーランドの What Really Works in Inclusive Education は個々の指導方略についての研究を総合したもので、カテゴリー別の章で紹介される実践の根拠を確かめるのに役立つ。ブラーム・ノーウィッチの Addressing Tensions and Dilemmas in Inclusive Education は、困難を判定してラベルを貼るか否かといったジレンマを学術的に分析した本で、カテゴリー別の教科書に対するよい対抗軸となる。本書の後に読むのがよい。
本書の使い方
本書は、通常教育と特別支援教育の両方を含む教員養成課程の学部生・大学院生や、関連専門職を目指す学生に向いている。教育心理学や子どもの発達の入門的知識があると役立つが、必須ではない。
- 中核: 第1〜4章を順に読む。全体を通じて使われる用語、実践、公平の問い、家族の視点がここで示される。
- カテゴリー: 通常教育の教師が最もよく出会うカテゴリーである第6〜8章(学習障害、ADHD、情緒・行動障害)をじっくり読む。その後は、自分が教える年齢や場に応じて選んで読み、残りは参照用に取っておく。
- 才能: 第15章は飛ばさないこと。本書による特別な学習者の定義を完成させる章である。
カテゴリー別の各章について、定義、出現率、原因、判定、特性、教育的アプローチという同じ見出しで一枚のまとめを作るとよい。まとめを比べると、カテゴリーが重なり合う部分が見えてくる。RTIと判定に関する内容は自国の教育制度の規則と照らし合わせて読み、コースの中のカテゴリー横断型または研究総合型の本を使って、インクルーシブな教室で実践がどう機能するかを確かめるとよい。
