01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Norwich, B. (2024). Addressing Tensions and Dilemmas in Inclusive Education: Resolving Democratically (2nd ed.). Routledge.
章の要約
第2版は約258ページ、全10章で、部には分かれていない。出版社の紹介によれば、本書の中心的な主張は、インクルージョンを実践に移すには緊張とジレンマが伴い、それらは正面から取り上げて解決しなければならず、その解決はスローガンではなく民主的な熟議によって行うべきだというものである。章題は、定義と分類から出発し、カリキュラム、教授法、制度を経て、関係する人々、哲学的問題、研究の役割へと進んでいく。
第1章:議題の設定
冒頭の章は本書の枠組みを示す。インクルーシブ教育という分野を紹介し、この分野の対立は、唯一の正解がある問いというより、時間をかけて取り組むべきジレンマとして理解したほうがよい、という論点を提示する。
第2章:特別な教育的ニーズ、障壁、障害
この章は分野の用語を扱う。特別な教育的ニーズ、学習への障壁、障害がそれぞれどう理解されているか、また国内および国際的な捉え方がどう異なるかが論じられる。
第3章:教育における特別な教育的ニーズまたは障害の分類と識別
第3章は、出版社が中核的なテーマとして挙げる識別と分類を取り上げる。子どもの困難を識別し分類すること自体をするかどうかが問われており、本書の紹介文はこの選択を中心的なジレンマの一つとして示している。
第4章:インクルーシブなカリキュラムの問題
カリキュラムは、実際の教育の場面を扱う二つの章のうち最初のものである。学習上の困難や障害が広い範囲にわたる子どもたちを共通の場で教える際に生じるカリキュラム上の問題を扱う。
第5章:インクルーシブな教授法
教授法の章は、何を教えるかから、どう教えるかへと目を移し、出版社が挙げる中核的な話題のうち、教授法とカリキュラムの流れを完結させる。
第6章:インクルーシブな教育機関:学校と大学
この章は学校教育の組織を扱う。章題からわかるように、議論は学校にとどまらず大学にまで及ぶ。出版社の紹介は、これを専門的な提供と一般的な提供との関係に結びつけている。
第7章:親と子ども:参加、パートナーシップ、選好
第7章は、親と生徒の視点を取り上げる。家族や若者がどのように参加するのか、専門職とのパートナーシップがどう機能するのか、意思決定の中で選好がどう比べられるのかを検討する。
第8章:哲学的問題
ここで本書は一歩引いて、これまでの章の根底にある哲学的な問題を扱う。
第9章:インクルーシブ教育を研究する
研究の章は、インクルーシブ教育をどう研究できるか、研究が政策と実践にどう寄与するかを扱う。これは出版社の紹介が挙げる最後の柱である。
第10章:結論
最終章は議論をまとめ、緊張をどのように民主的に解決できるかという問いに戻る。
主要概念
第1–3章:議題、ニーズ、分類
- 緊張とジレンマ:本書を貫く考え方。インクルージョンを実践で実現するには、競合する考慮事項が伴い、それらは一度に決着をつけられないという見方。
- 特別な教育的ニーズ、障壁、障害:この分野が子どもの困難を記述するために用いる用語。第2章で検討される。
- 分類と識別:子どものニーズを分類し識別する実践。第3章はこれをジレンマの源として扱う。
第4–7章:カリキュラム、教授法、制度、家族
- インクルーシブなカリキュラムと教授法:学習者の差が大きいときに何をどう教えるかという問題。第4章と第5章。
- 専門的な提供と一般的な提供:特定の集団向けに設計された提供と、すべての子ども向けの提供との関係。第6章でインクルーシブな機関を論じる中で扱われる。
- 参加、パートナーシップ、選好:意思決定における親と子どもの役割。第7章。
第8–10章:哲学、研究、解決
- 民主的な熟議:本書がジレンマを解決する手段として提案するもの。副題に表れている。
- 研究と政策:研究が政策と実践に果たす貢献。第9章の主題。
批判的分析
長所
- 一貫して明快な議論。 書名、副題、出版社の紹介のすべてが一つの主張を指している。インクルージョンにはジレンマが伴い、それは民主的に解決すべきだというものである。読者は各章をこの主張に照らして検討できる。
- コンパクトな分量での幅広い範囲。 約258ページ、10章で、分類、カリキュラム、教授法、制度、家族、哲学、研究を扱う。そのため、この分野の主要な論争の概観としても、その中の一つの立場としても読める。
- 複数の水準への目配り。 紹介文には、国内外の捉え方、教室の問題、学校教育の組織、親と生徒の視点が挙げられており、政策論争と日々の実践を結びつけた議論になっている。
- 第2版での更新。 出版社によれば、新版は現代の研究、理論、政策を踏まえ、議論の含意を初版よりも明確に示している。
短所
- 教科書ではなく一つの立場である。 本書は対立の扱い方について特定の考え方を主張している。特別支援教育の類型、法制度、指導方法を中立的に概観したい読者は、一般的な教科書を併用する必要がある。
- 議論によって範囲が決まっている。 章題には、個別の障害の類型、特別支援教育の法律、具体的な指導技法を扱う節はなく、本書はこうした話題ではなくジレンマを軸に組み立てられている。
- 主として一つの国の文脈。 著者はエクセター大学の名誉教授であり、出版社の紹介も特別な教育的ニーズや国内外の捉え方を軸に議論を示している。他の制度で働く読者は、用語を自分の環境に置き換えて読む必要がある。
コースにおける位置づけ
特別支援・インクルーシブ教育のコースの中で、本書は入門教科書とは性格が異なる。Hallahan、Kauffman、Pullen の Exceptional Learners や Turnbull らの Exceptional Lives は、障害の類型とエビデンスに基づく実践を軸にした入門教科書であり、Friend と Bursuck の Including Students with Special Needs は、一般教育の教師がインクルーシブな教室に備えるための本である。Norwich の本は、基本的な用語や実践を既知のものとして、なぜそれらが争点になるのかを問うので、これらのいずれかを読んだ後に読むほうがよい。
Mitchell と Sutherland の What Really Works in Inclusive Education は、指導方法とその根拠をまとめた書物である。二つは補い合う。Mitchell と Sutherland が、どの方法が有効そうかに答えるのに対し、Norwich は、ラベルを付けるか付けないか、専門的な提供か共通の提供かといった競合する目標の間で、教育制度がどう決めるべきかを問う。
本書の使い方
出版社は本書を読みやすいものとして紹介し、インクルーシブ教育を学ぶ学生や研究者向けとしている。インクルーシブ教育の根底にある対立を検討したい大学院生、研究者、経験のある教師や学校管理職に向く。特別支援教育の入門的な授業を受けていると役に立つ。
読み進め方の例:まず第1章と第10章を読み、議論とその行き先を確認する。その後、自分の関心に近い章へ進む。識別とカリキュラムなら第3・4章、制度なら第6章、家族の参加なら第7章である。第8章は一歩引いて哲学的問題を扱うので、これらのいくつかを読んだ後が適している。第9章は、この分野で学位論文や評価を計画している人に役立つ。ゼミでは、各ジレンマを討論に変えるとよい。本書が解決の方法を述べる前に、双方の立場の根拠をグループに述べさせるのである。
