01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Hull, J. C. (2021). Options, Futures, and Other Derivatives (11th ed.). Pearson.
章の要約
第11版(2021年2月刊行)は37章からなり、本書のBusiness Snapshots(ビジネス・スナップショット)とTechnical Notes(テクニカルノート)の一覧に加え、巻末には用語集、DerivaGemソフトウェアの説明、先物とオプションを取引する主要な取引所の一覧、累積正規分布の表がある。Pearsonは本書を、理論と実務の橋渡しをする本と説明している。読み終えるころには、オプション市場と先物市場がどう機能するか、デリバティブをどう価格付けしヘッジするか、トレーディングフロアやリスク管理で使われるモデルをどう適用するかが理解できるという。Global Editionの説明は、この分野を学ぶ多くの学生にとって数学が大きな壁であることを踏まえ、平易な言葉と明快な説明を用いていると付け加えている。この版では、表、図、例、データが現在の市場状況に合わせて改訂され、オーバーナイト・インデックス・スワップやコモディティ・デリバティブの評価など、最近の規制と動向が扱われている。
第1〜3章:Introduction(序論);Futures Markets and Central Counterparties(先物市場と中央清算機関);Hedging Strategies Using Futures(先物を用いたヘッジ戦略)
デリバティブ市場とその参加者への導入、清算における中央清算機関の役割を含む先物市場の仕組み、そしてヘッジのための先物の利用を扱う。
第4〜7章:Interest Rates(金利);Determination of Forward and Futures Prices(先渡価格と先物価格の決定);Interest Rate Futures(金利先物);Swaps(スワップ)
基本的な評価の道具である。金利の測定、先渡と先物の価格付け、金利先物、そしてスワップを扱う。
第8〜9章:Securitization and the Financial Crisis of 2007–8(証券化と2007〜08年の金融危機);XVAs(XVA)
制度的な背景を扱う2章である。証券化と2007〜08年の危機におけるその役割、そして店頭デリバティブに適用される信用・資金調達などのコストに関する評価調整であるXVAを扱う。
第10〜12章:Mechanics of Options Markets(オプション市場の仕組み);Properties of Stock Options(株式オプションの性質);Trading Strategies Involving Options(オプションを用いた取引戦略)
オプションは、オプション市場の仕組み、裁定がないという議論だけから導かれるオプション価格の性質、そしてオプションと原資産を組み合わせる取引戦略を通じて導入される。
第13〜15章:Binomial Trees(二項ツリー);Wiener Processes and Itô's Lemma(ウィーナー過程と伊藤の補題);The Black–Scholes–Merton Model(ブラック・ショールズ・マートン・モデル)
オプション価格付けの中核である。二項ツリーが最初の価格付けモデルを与え、ウィーナー過程と伊藤の補題が確率解析を提供し、その後にブラック・ショールズ・マートン・モデルが続く。
第16〜18章:Employee Stock Options(従業員ストック・オプション);Options on Stock Indices and Currencies(株価指数と通貨のオプション);Futures Options and Black's Model(先物オプションとブラック・モデル)
基本モデルの応用と拡張である。従業員ストック・オプション、株価指数と通貨のオプション、そしてブラック・モデルで価格付けされる先物オプションを扱う。
第19〜20章:The Greek Letters(グリークス);Volatility Smiles and Volatility Surfaces(ボラティリティ・スマイルとボラティリティ・サーフェス)
ヘッジとモデルの限界を扱う。オプションの入力値に対する感応度を測るグリークスと、市場価格に見られるボラティリティ・スマイルとサーフェスである。
第21〜23章:Basic Numerical Procedures(基本的な数値計算法);Value at Risk and Expected Shortfall(バリュー・アット・リスクと期待ショートフォール);Estimating Volatilities and Correlations(ボラティリティと相関の推定)
公式が使えないときの価格付けのための数値計算法に続いて、リスクの測定を扱う。バリュー・アット・リスクと期待ショートフォール、そしてそれらの尺度に必要なボラティリティと相関の推定である。
第24〜26章:Credit Risk(信用リスク);Credit Derivatives(クレジット・デリバティブ);Exotic Options(エキゾチック・オプション)
信用リスクと、それを取引しヘッジするためのデリバティブ、そして標準的なコールとプットを超える多様なエキゾチック・オプションを扱う。
第27〜28章:More on Models and Numerical Procedures(モデルと数値計算法の補足);Martingales and Measures(マルチンゲールと測度)
より高度なまとまりである。さらなるモデルと数値計算法、そしてリスク中立評価の基礎にあるマルチンゲールと測度変換の理論を扱う。
第29〜34章:Interest Rate Derivatives: The Standard Market Models(金利デリバティブ:市場標準モデル);Convexity, Timing, and Quanto Adjustments(コンベクシティ、タイミング、クオント調整);Equilibrium Models of the Short Rate(短期金利の均衡モデル);No-Arbitrage Models of the Short Rate(短期金利の無裁定モデル);Modeling Forward Rates(フォワード・レートのモデル化);Swaps Revisited(スワップ再論)
金利デリバティブに関する6章である。市場標準のモデル、ペイオフが標準的な形でないときに必要な調整、短期金利の均衡モデルと無裁定モデル、フォワード・レートのモデル、そしてより複雑な構造を持つスワップへの再訪である。
第35〜37章:Energy and Commodity Derivatives(エネルギーとコモディティのデリバティブ);Real Options(リアル・オプション);Derivatives Mishaps and What We Can Learn from Them(デリバティブの失敗事例とそこから学べること)
本書は、エネルギーとコモディティのデリバティブ、リアル・オプション(オプションの考え方を投資決定に応用すること)、そしてデリバティブによる損失から引き出される教訓で締めくくられる。
主要概念
第1〜9章:先渡、先物、スワップと背景
- 先渡価格と先物価格:無裁定の議論によって決まる将来受け渡しの価格。
- 中央清算機関:取引の当事者の間に立つ清算機関。
- スワップ:固定金利と変動金利の支払いの交換など、キャッシュフローを交換する契約。
- XVA:信用、資金調達などのコストに関するデリバティブの評価調整。
第10〜20章:オプション
- 二項ツリー:オプションの価格付けに用いられる、資産価格変動の離散モデル。
- 伊藤の補題:確率変数の関数が時間とともにどう変化するかを表す規則。
- ブラック・ショールズ・マートン・モデル:ヨーロピアン・オプションを価格付けする連続時間モデルとその公式。
- グリークス:ヘッジに用いられる、オプション価値の感応度(デルタ、ガンマなど)。
- ボラティリティ・スマイルとサーフェス:権利行使価格と満期にわたるインプライド・ボラティリティのパターン。
第21〜28章:数値計算法、リスク、高度なモデル
- バリュー・アット・リスクと期待ショートフォール:ポートフォリオの潜在的な損失の尺度。
- クレジット・デリバティブ:参照組織の信用力にペイオフが依存する契約。
- エキゾチック・オプション:標準的でないペイオフや特徴を持つオプション。
- マルチンゲールと測度:リスク中立評価の数学的基礎。
第29〜37章:金利、コモディティ、応用
- 短期金利モデル:短期金利がどう変化するかを表す均衡モデルと無裁定モデル。
- フォワード・レート・モデル:フォワード・レートの期間構造全体のモデル。
- リアル・オプション:オプション価格付けの道具を使って投資決定の柔軟性を評価すること。
批判的分析
長所
- 理論と実務をあわせて扱う。 Pearsonは、本書が市場の仕組みからトレーディングフロアやリスク管理で使われるモデルまで、理論と実務の橋渡しをすることを強調している。構成もそれを反映しており、制度的な章(中央清算機関、証券化、XVA、従業員ストック・オプション)が価格付けの理論と並んでいる。
- 段階的な数学。 Global Editionの説明は、数学を難しく感じる学生のために平易な言葉を用いることを強調している。目次の順序もそれを裏づける。二項ツリー(第13章)がウィーナー過程と伊藤の補題(第14章)、ブラック・ショールズ・マートン・モデル(第15章)より前に置かれ、マルチンゲールと測度は第28章まで後回しにされている。
- 幅広さ。 37章で、先渡、先物、スワップ、オプション、信用、金利モデル、コモディティ、リアル・オプション、そしてバリュー・アット・リスクと期待ショートフォールを扱うので、本書はデリバティブの最初の授業にも、その後のトピックにも使える。
- 補助的な資料。 Business SnapshotsとTechnical Notesが前付けに一覧され、巻末には用語集、正規分布の表、本書に付属するDerivaGemソフトウェアの説明がある。
短所
- 非常に長い。 37章は一つの授業で扱える量をはるかに超えており、教員と読者は取捨選択しなければならない。
- 厳密さは目的ではない。 出版社は本書を経営学、経済学、金融工学の学生向けと位置づけ、数学を難しく感じる読者のための平易な言葉を強調している。確率解析とマルチンゲールによる価格付けの厳密な展開を必要とする読者は、数理ファイナンスの教科書に向かう必要がある。
- 市場の細部は古びる。 本書の価値の一部は現在の市場慣行に依存している。Pearsonは版ごとにデータと規制の扱いを改訂しているとしており、古い版は、とりわけ金利指標や規制に関して注意して使うべきである。
コースにおける位置づけ
Hullは、このコースにおいて、入門的なデリバティブの授業と大学院レベルの数理ファイナンスの本とを橋渡しする本である。Hull自身の Fundamentals of Futures and Options Markets は、同じ内容の多くを微積分を使わずにより平易な言葉で扱っており、最初の授業にはそちらがよい。そこから進む学生は、同じ著者のアプローチが確率解析、信用、金利モデルへと広げられているのを本書で見いだすだろう。
残りの本の多くは大学院レベルで、より専門的である。Björkの Arbitrage Theory in Continuous Time、LambertonとLapeyreの Introduction to Stochastic Calculus Applied to Finance、BinghamとKieselの Risk-Neutral Valuation、MusielaとRutkowskiの Martingale Methods in Financial Modelling は、第13〜15章と第28章の背後にある厳密な理論を与える。金利については、TuckmanとSerratの Fixed Income Securities、Veronesiの Fixed Income Securities、Sundaresanの Fixed Income Markets and Their Derivatives、そしてLIBORマーケット・モデルに関するRebonatoの本が、第4〜7章と第29〜34章を発展させる。DuffieとSingletonの Credit Risk は第24〜25章を、Glassermanの Monte Carlo Methods in Financial Engineering と、ジャンプを含む確率微分方程式の数値解法に関するPlatenとBruti-Liberatiの本は第21章と第27章を発展させる。
本書の使い方
出版社は、経営学、経済学、金融工学、数学を学ぶ学生を読者として挙げている。ファイナンスの入門授業を受け、確率・統計・微積分の基礎を知っている人に適している。
- 中核の流れ: 第1〜7章(先物、先渡、金利、スワップ)、続いて第10〜15章(オプションからブラック・ショールズ・マートンまで)、そして第19〜20章(グリークスとボラティリティ・スマイル)。これで最初の授業として十分な内容になる。
- リスク管理を重視する場合: 第21〜25章(数値計算法、バリュー・アット・リスク、ボラティリティの推定、信用)を加える。
- 背景: 証券化とXVAに関する第8〜9章、デリバティブの失敗事例に関する第37章は独立して読むことができ、討論形式の授業に向いている。
- 上級の授業: エキゾチック・オプション、マルチンゲール、金利モデルには第26〜34章、必要に応じてコモディティとリアル・オプションの第35〜36章。
DerivaGemソフトウェアを使って計算を確かめ、入力を変えたときに結果がどう変わるかを見るとよい。数値問題はまず手で解き、その後ソフトウェアで確認する。各トピックの実務的な背景を知るにはBusiness Snapshotsを読むとよい。
