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連続時間における裁定取引理論 cover

経済学

経済学

連続時間における裁定取引理論

Tomas Björk

英語原題: Arbitrage Theory in Continuous Time

離散時間モデルと連続時間モデル、完全市場と不完全市場、デリバティブ価格設定、ポートフォリオ最適化、リスク管理における実用的応用にまたがる裁定取引理論に関する厳密な大学院レベルのガイド。

難易度レベル
上級
学術レベル
大学院
金融数学デリバティブ価格設定確率解析裁定理論

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Björk, T. (2019). Arbitrage Theory in Continuous Time (4th ed.). Oxford University Press. Oxford Finance Series.

章の要約

全38章は六つの部に分かれ、測度と積分、確率論、マルチンゲールと停止時間、凸双対性の付録が続く。出版社の紹介によれば、本書は裁定理論を古典的なデルタヘッジのアプローチと現代的なマルチンゲールのアプローチという二通りで十分に扱い、両者は互いに独立して学べる。第4版では不完全市場の章(第V部)と動的均衡理論の部(第VI部)が加わった。

第1章:序論

裁定理論の目的と金融派生商品の価格付けの問題を述べ、ヨーロピアン・コールオプションと通貨リスクの例でヘッジの動機を示す。

第I部、第2〜3章:離散時間モデル(二項モデル;より一般的な一期間モデル)

二項モデルは、一期間および複数期間での複製ポートフォリオと無裁定価格を導入する。第3章は一期間モデルを一般化し、マルチンゲール測度と完備性を取り入れる。

第II部、第4〜5章:確率解析(確率積分;確率微分方程式)

ウィーナー過程、確率積分、伊藤の公式、確率微分方程式と、確率微分方程式と偏微分方程式の関係を扱う。以降のすべての内容の数学的な道具である。

第III部、第6〜10章:ポートフォリオの動学からデルタヘッジまで

第6〜8章(ポートフォリオの動学;裁定価格付け;完備性とヘッジ)は、自己充足的ポートフォリオ、ブラック=ショールズの価格方程式、完備性の条件を展開する。第9章「不完全市場入門」は第V部で扱う問題を予告し、第10章「パリティ関係とデルタヘッジ」はパリティ関係とデルタヘッジを扱う。

第III部、第11〜15章:マルチンゲール・アプローチ

第11章と第12章(裁定理論へのマルチンゲール・アプローチ;マルチンゲール・アプローチの数学)は、価格付けをマルチンゲール測度の下での期待値として書き直し、ギルサノフの定理を含む必要な数学を与える。第13章はこの観点からブラック=ショールズ式を導き、第14章は多次元に拡張し、第15章は価値尺度(ニュメレール)の変更を導入する。

第III部、第16〜18章:配当;先渡と先物;通貨デリバティブ

マルチンゲールの手法を、配当を支払う株式、先渡と先物、外国為替オプションに応用する。

第III部、第19〜24章:金利

債券と金利(19)、短期金利モデル(20)、短期金利のマルチンゲール・モデル(21)、フォワードレート・モデル(22)、LIBOR 市場モデル(23)、ポテンシャルと正の金利(24)。期間構造のモデル化は短期金利からフォワードレート・モデルと市場モデルへと発展し、この部は正の金利に対するポテンシャル論的な手法で終わる。

第IV部、第25〜28章:最適制御と投資理論

確率最適制御(25)、最適消費と投資(26)、最適投資へのマルチンゲール・アプローチ(27)、最適停止理論とアメリカン・オプション(28)。動的計画法とマルチンゲール法がポートフォリオ選択に応用され、最適停止がアメリカン・オプションの価格付けを与える。

第V部、第29〜34章:不完全市場

不完全市場(29)、エッシャー変換と最小マルチンゲール測度(30)、f ダイバージェンスの最小化(31)、不完全市場でのポートフォリオ最適化(32)、効用無差別価格付けとその他の話題(33)、グッドディール境界(34)。完全なヘッジができないときは、特定のマルチンゲール測度か価格の範囲を選ばなければならない。

第VI部、第35〜38章:動的均衡理論

均衡理論:単純な生産モデル(35)、コックス=インガソル=ロス因子モデル(36)、コックス=インガソル=ロス金利モデル(37)、初期賦存の均衡:単位純供給(38)。価格と金利は、裁定だけでなく主体の最適化から導かれる。

主要概念

第I〜II部:離散モデルと確率解析

  • 複製ポートフォリオ:派生商品のペイオフを再現する取引戦略で、それによって無裁定価格が決まる。
  • 伊藤の公式:確率過程の関数に対する連鎖律で、価格方程式の導出に使う。

第III部:裁定理論

  • 自己充足的ポートフォリオと完備性:外部からのキャッシュフローを要しない戦略と、すべての請求権が複製できる市場。
  • マルチンゲール測度:割引価格がマルチンゲールとなる確率測度で、その下で派生商品の価格は期待値になる。
  • ニュメレールの変更:別の価格を計算単位に選んで評価を簡単にすること。
  • 期間構造モデル:短期金利モデル、フォワードレート・モデル、LIBOR 市場モデル。

第IV〜VI部:制御、不完全性、均衡

  • 確率最適制御と最適停止:消費・投資問題とアメリカン・オプションの道具。
  • 最小マルチンゲール測度とグッドディール境界:市場が不完全なときに価格を選ぶ方法。
  • 均衡モデル:需給と主体の最適化によって価格が決まるモデル。

批判的分析

長所

  • 理論への二つの並行する道。 出版社によれば、デルタヘッジとマルチンゲールの両アプローチが十分に扱われ、独立して学べる。数学が得意でない読者は前者を、より進んだ読者は後者を追える。
  • 数学と経済的な解釈の両立。 紹介文は、すべての概念に直観的な経済的議論があること、新しい手法ごとに解き終えた例があること、多数の演習と各章の文献案内があることを強調している。
  • 一冊で広い範囲。 オプション価格付け、金利モデル、アメリカン・オプション、最適投資、不完全市場、均衡に及び、必要な測度論、確率、マルチンゲール、凸双対性の背景を付録にまとめている。
  • 大幅に拡張された第4版。 エッシャー変換、f ダイバージェンス、グッドディール境界といった不完全市場の話題が新しい章として加わり、動的均衡を扱う部が新設された。

短所

  • 分量とレベル。 592ページで大学院生向けの本書は長い読み物であり、測度論、確率、凸双対性の付録は、後半の部がどれだけの数学に依存しているかを示している。
  • 数値的な実装の章がない。 章題から見て理論に重点があり、キャリブレーション、シミュレーション、数値解法は独立した主題ではないため、数値計算の教科書で補う必要がある。
  • 信用リスクを含まない。 目次にはデフォルトや信用デリバティブの章がなく、別の信用リスクの教科書で補う必要がある。
  • 非常に長い第III部。 第III部は第6章から第24章まで、全章の半分に及び、デルタヘッジの道、マルチンゲールの道、金利の章が混在するため、読者には取捨選択の計画が必要である。

コースにおける位置づけ

資産価格付けとデリバティブのコースの中で、Björk は大学院レベルの理論書であり、市場志向の入門書と技術的な専門書の中間にある。Hull の2冊は制度と応用に重点がある。Fundamentals of Futures and Options Markets は微積分を使わずに商品を紹介し、Options, Futures and Other Derivatives は平易な数学で標準的な市場と評価の説明を与える。価格付けの結果の導出が必要になったら、その後に Björk を読むとよい。

数学の面では、Lamberton と Lapeyre の確率解析の金融への応用入門が、同じ道具に至る金融志向の別のルートである。Musiela と Rutkowski の Martingale Methods in Financial Modelling や Bingham と Kiesel の Risk-Neutral Valuation は同程度の大学院レベルの解説である。専門書は個々の話題を深める。LIBOR 市場モデルについては Rebonato、モンテカルロ法については Glasserman、ジャンプ付き確率微分方程式の数値解法については Platen と Bruti-Liberati である。Tuckman、Veronesi、Sundaresan の固定利付証券の教科書は第19〜23章の市場側の副読本であり、Duffie と Singleton の本は Björk が扱わない信用リスクを補う。

本書の使い方

出版社によれば、本書は経済学と数学の大学院生、数理ファイナンスを学ぶ学部上級生や実務家を対象としている。実際に必要なのは学部上級レベルの微積分と確率で、測度論の背景は付録が補う。

最初の通読は次のようにするとよい。第1〜3章で離散時間の直観をつかみ、第4〜5章で確率解析を学び、第6〜10章でデルタヘッジの道を通ってブラック=ショールズに至る。現代的なアプローチを知りたい読者は第11〜15章に進み、その後は話題を選ぶ。配当・先物・通貨なら第16〜18章、金利なら第19〜24章である。第25〜28章は投資理論とアメリカン・オプションの授業に向き、第V部と第VI部は上級の読者向けである。

各手法に解き終えた例があり、演習がそれを延長するので、演習に取り組むこと。測度論の論点に出会ったら付録を参照する。