01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Bingham, N. H., & Kiesel, R. (2004). Risk-Neutral Valuation: Pricing and Hedging of Financial Derivatives (2nd ed.). Springer.
章の要約
第2版は9章と1つの付録から成り、付録と索引を含めて約440ページである。章題からは意図的な順序が読み取れる。まずデリバティブと確率の背景の章、次に離散時間の2章(確率過程、続いて数理ファイナンス)、それに対応する連続時間の2章、そして不完全市場、金利、信用リスクの3章が続く。出版社によれば、第1版の成功を受けて著者は全体を徹底的に改訂した。不完全市場と金利理論の章は更新・拡充され、信用リスクの章は新しく、またレヴィ・ファイナンスに関する新しい内容が加わっている。
第1章:デリバティブの背景
冒頭の章は、本書の残りのために金融上の用語と枠組みを提供する(1〜27ページ)。
第2章:確率の背景
この章は45ページで、準備的な内容の中では最も長く、後の章が必要とする確率論をまとめている。
第3章:離散時間の確率過程
短い章(75〜99ページ)で、離散時間の価格理論に必要な確率過程を展開する。
第4章:離散時間の数理ファイナンス
価格理論そのものの最初の章で、約50ページあり、それまでの内容を離散時間の金融モデルに応用する。
第5章:連続時間の確率過程
本書で最も長い章で、約75ページあり、第3章の連続時間版にあたる。
第6章:連続時間の数理ファイナンス
第4章の連続時間版(229〜288ページ)で、価格理論を連続時間モデルへと進める。
第7章:不完全市場
出版社によれば、この章は今回の版で更新・拡充されており、不完全市場におけるレヴィ過程に基づくモデルに関する新しい内容を含む。
第8章:金利理論
この章も今回の版で更新・拡充されており、前の章で築かれた枠組みの中で金利のモデル化を扱う。
第9章:信用リスク
第2版で新たに加わった章で、出版社が重要で成長しつつある分野と呼ぶ信用リスクを扱う。
付録A:ヒルベルト空間
参考用の付録(409ページから)が、索引の前で本書を締めくくる。
主要概念
第1〜2章
- リスク中立評価:書名にある原理で、出版社は1980年代初めからデリバティブの価格付けとヘッジの重要な道具となってきたと述べている。
- デリバティブ:本書が価格付けとヘッジを扱う対象の商品。
第3〜6章
- 離散時間と連続時間の確率過程:それぞれの設定で、金融理論を築く前に導入される確率論の道具。
- 数理ファイナンス:最初に離散時間で、次に連続時間で展開される価格理論。
第7〜9章
- 不完全市場:すべての請求権がヘッジできるわけではない市場と、そこで生じる価格付けの問題。
- 金利理論と信用リスク:最後の章群で展開される二つの応用。
- レヴィ過程:無限分解可能性とレヴィ過程に基づくモデルで、今回の版で新しい。
批判的分析
長所
- **段階的な構築。**連続時間の各章には離散時間の対応する章があり、読者は連続時間の技術的な道具に出会う前に、より単純な設定で主要な考え方を見ることができる。
- **数学的基礎を含む。**確率と確率過程のための章に加えてヒルベルト空間の付録があり、本書は議論に必要な多くを自ら提供している。
- **改訂された第2版。**この版は信用リスクとレヴィ過程の内容を加え、不完全市場と金利の扱いを拡充しているため、基本的な価格モデルを超えている。
- **教員向けの支援。**出版社は、演習問題、その解答、講義用スライドが教員向けにウェブで提供されると述べている。
短所
- **数学的な水準。**最初の6章のうち3章(確率、および離散時間と連続時間の確率過程)が準備的な数学であり、数学的な著作であることを示している。読者には確かな数学的素養が必要になる。
- **実務家向けの手引きではない。**書名も章の一覧も価格理論を軸にしており、実務でのヘッジ、取引、デリバティブ市場の制度は独立した章になっていない。
- **一部は古い。**2004年の刊行であり、その後のこの分野の発展を含まない。
- **後半の章は短い。**金利理論は約48ページ、信用リスクは約34ページなので、いずれも完全な論述ではなく入門にとどまる。
コースにおける位置づけ
このコースの図書のうち、Bodie、Kane、Marcus の『Investments』は、ポートフォリオ理論、均衡価格、債券、デリバティブを扱う大学院レベルの教科書であり、Hunt らの『Financial Derivatives in Theory and Practice』は、理論と価格付け・ヘッジを組み合わせた大学院レベルのデリバティブ研究である。Bingham と Kiesel の本はこれらの中で最も数学的に組み立てられている。章題からは、デリバティブの価格付けに必要な確率論と確率過程の理論が、まず離散時間で、次に連続時間で築かれることが分かる。
隣接する主題では、Duffie らの『Credit Risk: Pricing, Measurement, and Management』と、Tuckman ら、Veronesi、Sundaresan の債券の書物が、第8章と第9章で導入される内容を発展させる。Mishkin と Eakins の『Financial Markets and Institutions』と Jordan らの『Fundamentals of Investments』は、市場の仕組みを知るための、より穏やかな背景である。まず投資論の教科書を読み、その後でデリバティブ価格付けの数学的な核としてこの本を読むとよい。
本書の使い方
数理ファイナンス、金融工学、計量ファイナンスを専攻する大学院生、およびファイナンスに入ってくる数学者に向いている。
- **中核:**第1章から第6章を順に読む。確率と確率過程の素養がある読者は、第2、3、5章を流し読みして、金融の章である第4章と第6章を丁寧に読んでよい。
- **発展:**第7章から第9章は関心に応じて選ぶ。より一般的な理論なら不完全市場、期間構造のモデル化なら金利、デフォルトなら信用リスクである。
- **付録:**議論が必要とするときにヒルベルト空間の付録を参照する。
- **演習:**演習問題に取り組み、出版社が教員向けに提供している解答を担当教員が利用できるか確認する。
